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ツクモダン  作者: SF42
前編
1/18

ストレス発散

初投稿です。

【ツクモダン】





ガン…ガン…ガン…


雨が降る商店街の路地裏。


1人の女子中学生はゴミ箱に自らの頭を打ち付けていた。


「どいつもこいつも…うるさい…

みんないなくなれよ…さっさと消えろ。」


彼女の名は天野あまの 咲卦穂さかほ


現在色々あって自暴自棄になっている。



「おい!うるさいぞ!」


すぐそこの壁の窓からおじさんが顔を出して言う。


「…ぁせん…」


「ったく…迷惑とかそういうの考えらんないのかね。」


咲卦穂はとぼとぼ立ち去る。


頭に血が滲む。


もう夜も遅い。

しかも雨なので商店街でも誰も通りやしない。




「君、もう遅いよ。ダメじゃないかこんな時間に。」


なぜか警官はいる。


「…すいません…帰りますから…」


「いや、お母さんに迎えに来てもらうからさ…ちょっと来てもらわないと。」


警官は咲卦穂を署に連れて行こうとする。


「いやです。お母さんには言わないで…」


「そんなわけにもいかないからね…」


「いやだ。嫌だ。いやだいやだ!やだ!」


咲卦穂は走って警官から逃げた。


「ちょっ…待ちなさい!」








咲卦穂は商店街のアーケードのある通りにやってきた。

アーケードの通りでは何人かのホームレスが

眠っている。


治安維持のためか、警官が歩いている。


見つかりたくない咲卦穂は建物の室外機やパイプを足場に、アーケードの上によじ登る。


雨でとても滑りやすく、何度か落ちそうになった。


1番上に辿り着くと、咲卦穂は寝っ転がった。


空には当然分厚い雲がかかっているので、

星はおろか月すら見えない。


咲卦穂はいつのまにか眠ってしまった。















「おーい。起きなさーい。」


咲卦穂は何者かに声をかけられ、目が覚めた。


「…誰…」


「おー、よかった。死んでなくて。」


咲卦穂と同じ中学の制服を着た男子だ。


「…誰?」


「お前、おんなじ中学だよね。」


「だから、誰って聞いてんの。」


「俺、梶田。2の4。お前は?」


「天野。2の6。」


偶然同学年。

梶田は咲卦穂の制服を見て同じ中学だと気づいたのだろう。


「学校行かないの?こんなところで寝て、荷物も持ってないようだけど。」


「…行きたくない。」


咲卦穂は学校が大っ嫌い。


「んなこと言うなよ。行こうぜ。筆記用具と弁当やるから。」


「いやだ。」


「なんでだよ。ほら、行くぞ。」


梶田は咲卦穂に手を差し伸べる。


「行きたくないから。」


「でも勉強はしないと。」


「でも嫌だ。」


「でもにでもで返すなよ。ほら早く。」


「行きたくないんだってば。」


「…じゃあ、横に弁当と筆箱置いとくから…来いよ。俺は遅れちゃうからもう行くぜ。」


梶田は去っていった。


「絶対行かないから!」








少ししてから、咲卦穂はお腹が空いていることに気がついた。


横には梶田が置いていった弁当がある。


咲卦穂は周りに誰もいないことを確認してから食べ始めた。


唐揚げとトマトと梅干しご飯…




ちょうど食べ終わりそうな頃。


沢山のパトカーの音が聞こえて来た。


見つかったら酷く怒られる…


「あっ…学校行かないと。」












咲卦穂はとっくに遅刻しているが、学校へ向かった。


靴箱を開けると、上履きが大量の釘で串刺しにされていた。



咲卦穂は釘を抜いて手に持って教室に入る。


「おい、天野。どれだけの遅刻だと思ってる。もう五時限目だぞ。」


担任が言う。


「…すいません。」


「反省文書けよ。」


「…ぁい…」


「あ?ちゃんと返事しろ。」


「はい…」


「お前さ、いじめられてるからって俺にまで舐めた態度取るなよ。」


「はい…」


「…原稿用紙20枚。ちゃんと書け。」


「はい…」


「わかったらさっさと席に座れ。」


「はい…」



咲卦穂はいじめられている。


クラス替え初日にスクールカースト最上位勢のパシリになってしまったのが全ての始まりだ。


初めはパシリだという認識もなく、ただの善意で購買からパンや飲み物を買ってきた。


しかし、それから舐められ、毎日のようにパシられるようになった。


ある日、流石にやっていられないという旨を

パシっている者たちに伝えると、

「は?あんたは黙って私たちの言うことを聞いとけばいいの。」

などと言って咲卦穂をパシリ続けた。


痺れを切らした咲卦穂はついにスクールカースト最上位勢を無視するようになった。


そこからいじめが始まった。


落とした消しゴムを盗られたり、

提出しなくてはならない課題を盗られたり、

暴言や、ちょっとした暴力も振るわれるようになった。


どんどんエスカレートしていき、

教科書を濡らされたり、落ちていたガムを食べさせられたり、歩いていると水をかけられたり…


先生も“初めは”咲卦穂の味方をしてくれていた。


だが、咲卦穂の態度や性格が気に食わなかったようで、いじめを放置するどころか、半ば加担するようになった。





キーンコーンカーンコーン…



「今日はこれで終わり。

気をつけ、礼。おつかれ。」


先生の号令で解散した。


咲卦穂にとって放課後が最も憂鬱だ…



「ねーねー。もしかして私たちに会いたくなくて学校遅刻したとかじゃないよねぇ。」


スクールカースト最上位勢の三条と志野と

鹿草かそうだ。


「…」


「なんか言ったらどうなの?」


鹿草が咲卦穂の机を叩く。


「…話したくもない。」


咲卦穂は鹿草から顔を背ける。


「ちょっと私たちと遊んでよ。」


志野は咲卦穂の肩に手を回す。


「…やだ。」


「は?あんたに拒否権ないから。」


鹿草は咲卦穂の手を強引に引っ張る。


「離して!」


咲卦穂は鹿草の手を払い退ける。


「…ちょっと来てくれるだけでいいんだよ。

別に咲卦穂ちゃんを痛めつけたいわけじゃないからさ。」


三条が咲卦穂の両手を取って上目遣いに言う。


「…い、行かないって言ってるでしょ…

どうして私に構うの。私をいじめて何が楽しいの。特に三条が1番気に食わない!

私を蹴ったり殴ったりするくせに可愛子ぶっちゃって!」



パチッ!



咲卦穂は鹿草に頬を叩かれた。


「そんな言い方ないでしょ。

胡縁こよりちゃんはお友達が少なそうなあんたのことを思って私たちに咲卦穂ちゃんと一緒に遊ぼうって提案してくれたんだよ?恩を仇で返すつもり?」


胡縁というのは三条の下の名前。



咲卦穂の目からは涙が溢れてきた。


遊ぶといって結局は物陰で咲卦穂をいじめるだけなのだ。


表向きは遊んでいる、と言うことになっているから、傍観者のみんなからしたら咲卦穂が悪者なのだ。


咲卦穂にはこの現実は変えられないのだ。


いや、変えられないことはないが。













川にかかる橋の下で三条たちは咲卦穂を叩く、殴る、蹴る。


「…ハァ…ハァ…もう…やべて…」


「私、今日、イライラしててさ…

発散しないとみんなに迷惑かけちゃうから。」


三条はそう言ってさらに殴る。





橋を沢山のパトカーが走る。


「えっ?やだ。ここにいたら巻き込まれちゃう。逃げよう!」


「咲卦穂ちゃん、じゃあね。」



三条たちは去っていった。




「ハァ…ヴァァァァァァァァァァ!!!!」


咲卦穂は叫びながら壁を殴り始めた。


「アァァァァァ!ガァァァァァ!!」



数分間壁を殴り続けた。



「ハァ…ハァ…クソッ…」



先ほどのパトカーが向かった方向からはすごい煙と音がする。



「ストレス…発散しないと…」


咲卦穂の頭から大量の槍が生えた。


それはまるでウニのように。











[ツクモ…]


[それはここ10年の間に現れ始めた…]





「トラックのツクモだ!」


「もう3棟くらい崩れたぞ!」





[長く使われたり、愛着を持たれたりした

無機物が意志を持って、人や獣のような姿になる現象、あるいはその存在のことを指す。]





鉄で出来た巨人のようなものが団地を崩しながら暴れている。


「早く逃げろ!」


「まだ子供が!」






[ツクモは変異元となった物に応じて、

特殊な能力を持っている。]






ヴゥゥゥゥゥン!


鉄の巨人…トラックのツクモは高速移動をした。


その勢いで団地の建物を6棟ほど一気に崩した。


「ぐぁぁ!」





[そんなツクモを鎮める職業も誕生した。]





「トラックのツクモ…来い!」


トラックのツクモは1人の男に腕を振り下ろす。


「ハァァァ…」


仮陰剣かりのかげのつるぎ!』


男の背後から数本の黒い剣が出現し、

トラックのツクモを斬る。


ごごぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!


トラックのツクモは轟音をあげ、苦しむ。






[神鎮師かみしずめしと呼ばれる彼らは、特殊な技術で、ツクモのように特殊能力を使うことができる。]






トラックのツクモはすぐに姿勢を立て直し、

再び高速移動をした。


「何⁈」



どがぁぁぁぁぁぁぁん!!!!



神鎮師のいた場所が地面ごと抉られた。











「おいトラック。随分と暴れてるじゃないか。」


トラックのツクモの目の前にまるでウニのような頭をしたツクモが現れた。


「オマエ、オレニ、イドムカ。」


「そうさせてもらうよ。

ちょっと付き合え。私のストレス発散に!」



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