どもどもどーも
いたいっ!
「ごめんなさいっ」
咄嗟にそう言って顔を上げる。
そこにいたのは………。
「って母様?」
母様だった。
え?なんで母様がいるん?
母様は挨拶せずに、後ろに後退りした。
目が泳いでいる。よし、問い詰めてみよう。
長期戦になりそうな予感がしたが、母様は意外にはやく降参してくれた。
「もうこれ以上隠しても仕方がないわ。話しましょう。」
母様が話し始めたのは、私が生まれる前のことだった。
▽▽▽
少し前のこと。
大きな国の、木の下で
「精霊様が、目覚めたわ!」
とても無邪気で愚かな人間がいた。
おっとりしていて、何も能力は持っていないのに、魔力量だけ高い木偶の坊。
だが、それ故に、精霊が見えた。
精霊は昔からとても信仰されていて、精霊が見えたものは、聖王や聖女と呼ばれた。
その聖王や聖女はとんでもない魔力量を持つと言われる。
木偶の坊が精霊を見たことに、木偶の坊の親は嬉しがった。
これで、金には困らない。と。
そして、聖殿に連れて行き、聖女認定を貰おうとした
しかし、予想外のことが起きた。木偶の坊だけでなく、その国の王女も、精霊が見えたのだ。
その国は激しい戦いに包まれた。聖女は一人しか存在してはいけない。
どちらが聖女だなどと騒ぎ立てる大人たちに、木偶の坊…改め一人の少女と国の王女は心底呆れた。
そして、その二人は、国外に逃げることにした。
聖女は、精霊に愛されていなければならない。
二人の聖女が国を出るのだ。精霊たちはついてゆく。
守りの精霊達が居なくなった国は、瞬く間に滅んでいった。
逃げ切った二人は、他の国で、殿方と結ばれ、幸せに暮らしましたとさ。
なんて物語を知られたら、この国は、聖女争いで滅ぶ。
木偶の坊の母様は、それを知られたくなくて、情報を消しにきたのだとか。
成る程。だから母様はなんでもできるチーターなのか。
ちなみに母様の勘が鋭い理由は、その魔力量のおかげらしい。
ふーん。あれ、そういえば、王女様は?
不思議に思って聞くと、今度は顔を背けられた。
どうやらこれは言いたくないらしい。
無理に聞かなかったことを、後で後悔するのだった。
お〜おきなくりのぉ〜きのしたで〜。