小学6年生より賢くなくて恥ずかしくないの!?
「小三からやり直せタァァァァコ!!!!」
華奢なオッドアイ少女──千鶴ちゃんが、過積載ランドセルの肩ベルトを持って二度、円を描いた。
首に直撃したダイナミック重量ランドセルは、良い感じに俺の第二頸椎に会心の一撃を与えた!
『千鶴ちゃんどうして三角形の面積って最後2で割るの!?』って聞いただけなのに! だけなのに!
「しむぅ……!!」
「死ね! 死せ! そして……死ね!」
二回も『死ね』って言われた!
「で、何で2で割るの?」
有名私立中学を受験する千鶴ちゃんは、何でも知っている。クラスで一番頭の良い子だ。
「ほんとアホよね、アナタって」
肺の空気が無くなるほどに、千鶴ちゃんは大きなため息をついた。
「いい? あれはね……雰囲気よ!」
「雰囲気!?」
「そう、なーんか2で割った方が雰囲気が出て良い感じなのよ」
知った顔した千鶴ちゃんが、ドヤッとした幼フェイスを俺に向けた。
「流石千鶴ちゃん! 有名私立中学を六回も受験しただけはあるね!」
「言うなカスゥゥゥゥ!!!!」
「しむぅ!!」
過積載ランドセルが俺の第三頸椎を的確に捉えた!
「ごめんごめん……千鶴ちゃんが6年生をこっそり何回もやってるのは内緒だったよね」
「だから言うなボケェェェェ!!!!」
「しむぅ!!」
だるま落としのように、頸椎が上から順にダメージを受けてゆく。
「ゴホッ! ゴホッ! ごめん何か飲ませて……!」
「ったく発言には気を付けなさい!」
千鶴ちゃんは小学6年生なのに高校生並みの頭脳とボディを持ち合わせている18歳なのだ!
「誰に説明してんだタコォォォォ!!!!」
「しむぅ!!」
頸椎って何番まであるんだろ……!?
教育委員会の劣情を誘うスタイルを誇る千鶴ちゃんは、クラスでも大人気だ。こないだも先生が千鶴ちゃんを焼き肉デートに誘っていた。
「千鶴ちゃんはクラスでも人気だし、何だか嫉妬しちゃうな」
「ふん! アンタみたいなお子様はお断りよ!」
「あ、俺こっちだから」
「そう? じゃあね」
「今年こそ受かろうね。ファイト!」
そう言って千鶴ちゃんと別れた。
駐めてあったポルシェのキーをポケットから取り出し、エンジンをふかして走らせた。
「たまには葉月でも誘ってデートするか」
──ドゴンッッ!!
「おあ?」
ポルシェのエンジンが止まった。
パンクしたかのように車が沈む。
車から降りると、後ろで千鶴ちゃんがランドセルを振り回していた。ポルシェは見事に凹んでいる。
「──千鶴ちゃん!?」
「クソボケ裏切ったな!? 一足先に有名私立中学をに合格しやがって!!!!」
「あ、千鶴ちゃん落ちた?」
「落ちたわアホォォォォ!!!!」
「しむぅ!!」
怒りのランドセルが頸椎を捉えた!
「テメェ何浪だ!!」
「え? えー……八? 九? 大丈夫。千鶴ちゃんはまだ六浪だから」
──ドフッ!!
「しむぅ!!」
──ドフッ!!
「しむぅ!!」
──ドフッ!!
「アホ! ドクサレ! タコス! オタンコピー!」
「オタンコピー?」
もう無い頸椎を、更に入念に破壊するスタイルを見せる千鶴ちゃん。
「──それと!!」
「それと?」
「葉月ちゃんはリアル小6だかんね!!!! 犯罪やわ!!!!」
「あ、やっぱり?」
「死ねーーーー!!!!」
過積載ランドセルが脳天めがけて振り下ろされた。
俺は死んだ。