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プロローグ

 手に持っていた紙がぐしゃりと音を立ててくしゃくしゃになる。

 その紙は僕をこの屋上に誘う内容だったのだが、そんなことは関係ない。その屋上の柵に乗っかっている少女がいたからだ。それも、かなりの美少女が。


 僕は反射的に「やめるんだ!」と叫び、少女に近づく。少女は退屈そうな目で僕をちらりと見て、すぐまた空のほうを向いた。

 いいから降りるんだ。そう言った僕の焦る様子とは裏腹に、少女は涼やかな様子できちんとした床のある場所へ降り立つ。

 安心していると、少し遠くのほうから声が降ってきた。


「私、1カ月後に死ぬの。だから、慈善活動だと思って私と付き合ってくれないかしら?」


 僕を見据え、冷静な表情で告げるのは、美少女だとここ、市間いちま高校で有名な灰崎彩世はいざきあやせだった。さっきまではほとんど僕のほうを向いて貰えなかったので分からなかったのだ。

 学年や年齢は僕、守真海もりまうみと同じく1年で、16歳だったと記憶している。たしか、この前誕生日プレゼントを大量にもらっていたはずだ。


 しかし、どこか近寄りがたい雰囲気を発しているため、未だ誰一人親密になれなかったというのに、なぜ僕にそのようなことを言うのだろう。

 さらに問えるのならば、1カ月後に死ぬというのはどういう意味なのか。

 黒色の長い艶やかな髪を屋上に吹いた風になびかせる彩世。その黒曜石のごとき瞳が、返答に詰まる僕の目を貫いた。彼女が口を開く。


「返答はなるべく早くしてくれるかしら。私、そこまで暇じゃないの」

「じゃあなぜ付き合えと言うんですか」

「引き受けてくれたら話すわ。もっとも、あなたに私の告白を受けないという選択肢はないけれど」

「僕にだってそのくらいの自由はあるんですけどね……」


 どう頑張っても、これが愛の告白をしたあとの態度だとは思えない。ならば、愛の告白ではないと考えるのが妥当だ。

 イタズラという線もあるが、クールと噂の彩世がクラスの空気と化している僕にそのようなことをするのだろうか?


 色々考える手見るが、せいぜい1カ月だ。たとえドッキリか何かでも、僕には友達もいないのでダメージも少ない。もう一生このような美少女の告白を受けることもないだろうし、ここは受けてもいいだろう。

 おおよそ告白を受けたとは考えづらい思考を経たのち、癪ではあったが僕は「はい」と言い、頷いた。

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