第4部分、686字【新たな英雄の】
「はい、ご迷惑をお掛けしてすいませんでした。皆さんにも謝っときます」
言いながら、目の前の少女に頭を下げる。
業腹ではあるが、全てを導き、安寧を齎す為だ。
「そうだね。それじゃ自由にしていいよ」
偉ぶった少女はそれきり、俺に意識を向けることなく周囲を見回していた。
・・・・・・まあ、まずは自分の状態を確認するべきか。
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二〇二〇年、七月一八日。
北海道のコンテナターミナルで大きな戦闘があった。
二級の戦士七人で殺せず、殺されずの状況に、あの少女━━東堂 夏鈴━━が来て戦闘は終わった。
どうやら異世界の鬼は一級の妖魔に相当するらしい。
思ったよりも地球の戦士や妖魔は弱かった。
嬉しい誤算だな。
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二〇二〇年。七月二二日。
俺の家の近くに突如として竜が出現した。
時刻は深夜一時を回った頃。
竜は出現と同時に光の奔流を吐き出した。
その光はいくつかの山、多くの建造物、そして七〇万の人間を塵と化し、地平線の向こう側、宇宙空間へと消えていった。
破壊の音と、静寂。
その後訪れたのは阿鼻叫喚の地獄絵図。
竜が翼を広げ空を目指せば、ただそれだけで五〇〇万を超える死傷者が出た。
その長く鋭い尾は揺らめくだけで空気を裂き、家を裂き、命を裂く。
羽撃く翼は竜巻を生み、大地を飛び立つ跳躍は大きな地震を引き起こす。
誰もが恐怖し、誰もが救いを求めた。
そして、この俺が、俺こそが、たった一人でその竜を殺してみせた。
万人が必死の思いで天を仰ぎ、決死の覚悟で戦う俺を見ていた。
竜の首を飛ばした時の熱狂は凄まじかった。
これだけやれば掴みは十分だ。
後はいつも通り。
異世界もこの世界も変わらない。
もう一度覇者となり、世界を正しく導こう。