第1部分、390字【悲劇の主人公】
拙作を覗いて下さりありがとうございます。
少しずつではありますが、これから一つの作品を完成させたく思っております。
どうぞよろしくお願い致します。
二〇二〇年、五月五日。
いや不幸。
残念ながらリョウシンが死んだ。
今、同じ時、別々の場所で、父と母が同時に死んだ。
実に不幸だ。
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あれから━━両親が死んでから━━俺は高校を辞め、中学生の妹と二人で暮らしている。
親戚は優しく、俺たちを引き取ろうとした。
しかし、急な海外赴任などで俺たちの引き取り手は居なくなり、田舎の祖父が後見人となった。
そして俺たちは友人や、思い出深い家から離れる事を拒み、後見人の祖父とは別々に暮らしている。
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「雪音、メシ置いとくぞ」
相変わらず返事がない。ただの しかばね のようだ。
雪音は両親が死んでから人前で喋らなくなった。
葬式には参列したが、誰が何を言ってもピクリとも反応しない。
どうにも、両親を同時に亡くしたショックが大き過ぎたようで完全に心を閉ざしてしまった様子。
今じゃ立派な引きこもりで、同じ家に住んでるのに滅多に顔を見なくなった。
ああ可哀想に。とんだ悲劇だ。