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お金が世界を救います! ~大切なモノって何ですか?  作者: ・w・(テン・ダブリュー・ドット)
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08◆◇◆場所:『薄暗く広い倉庫のような場所』……語り手:『若造』

 ◆◇◆場所:『薄暗く広い倉庫のような場所』……語り手:『若造』

「ここまでくれば、大丈夫です」

「……はぁ、はぁ、助かったぜ。キミが来なかったら、危なかった。つうか、捕まってたに違いねぇ! 今頃、『青春(純潔)』奪われてたぜ」

 と『冗談』交じりに、半ば『本気』で、礼を言っとく。

「いえいえ。そう言ってもらえると嬉しいです」

 あぁ、可愛いなコンチクショウ。

「あの、ちょっと、じっとしていてくださいね」

「お、おう?」

 何か『桃色』めいた状況になることを、少し期待。

 『メイド』さんによる『介抱』が始まった。

 ――けど、そんな『エロティック』な展開には全くならず、ちょっと、がっかり。

 どこに持っていたのか分からないが、『包帯』を取り出すと、『するする』と、オレの足に巻き始める。『保健の先生』以上の手際で、すっかり、かっちり、『ジャストフィット』。

「……これで良し、と。一応の『応急処置』です」

「おぅ、ありがてぇ! もう全然痛くないぜ」

 『病は気から』ってヤツか。『美人に看護』されるとホントに痛みが飛んじまうぜ。

 《褒めても何も出ませんよ》と笑う『メイド』さんの細い首筋がなんとも……、

「んっ、あれ、その『首輪』は?」

「『首輪』……? えっ、これのことですか?」

 『メイド』さんが、『銀細工』のような指で、首の『首輪』を指し示す。

 『高級なワイン』のような『真紅のベルト』に、『金鈴』をあしらったような『紋章(エンブレム)』から『富』とか『権力』と『異端』とかの【自己主張】を感じる。

「そう、それそれ。さっきの野郎もしてたけど、一体何なんだ?」

「何って? ……知らないんですか?」

「あぁ、全く、全然、わからん!」

「……」

 『朝が来たら、日が昇る』ぐらいの『常識も知らないんですか』とばかりに『マジ、信じられない』っていう怪訝(けげん)な表情をされた。

 ……おっと、いけない。このままじゃ、オレの株が下がっちまうぜ。

 何か答えとかないと。

「そうか、わかったぜ! 『流行』ってヤツだな。そうかそうか。だから、アイツらも、キミも付けてんだ。うぉー、オレって、いつの間にか時代に取り残されていたのか!」

 思えば、『夜勤』や『不定休』続きで、フツーの人と違う時間を生きてるもんな。

 なるほど、そうと考えれば、『ガッテン』がいくぜ。

「いや、そうじゃなくって。……本当に知らないんですか?」

 『ガッデム!』、違ったらしい。ここは『素直さアピール』で、好感度を上げるぜ。

「猫が喋って、火を吐くぐらいわかんねぇ」

「……」

 『メイド』さんの時が止まった。

 ついでに、オレの時も止まった。

 これが『フラグ崩壊(BAD END)』ってヤツか!

「……なるほど」

「ん……。どうかしたのか?」

 『メイド』さんは、一旦、視線を外し、何かを閃いたのか、改めてオレを見つめる。

 薄っすら『緋色の瞳』に吸い込まれそう。

「……コホンッ。わかりました。どうやら、あなたに話さないといけないことがあるようです」

「話さないといけないこと?」

「ええ」

 空気が少し重くなったような気がした。

 思わず、『ごくっ』と生唾を飲み込んでしまう。

「実は……」

「実は……?」

「――実は私。闘わなければならないんです」

「な、なんだって!」

 悲痛な面持ちで、『耐えられない』とばかりに、『メイド』さんが(うつむ)く。

「今、なんて言った? 戦う? キミみたいなコが、一体、誰と戦うんだよ!」

 思わず、激しく問い詰めてしまう。

 だけど、オレの『心中(しんちゅう)』も穏やかじゃない。

「……」

「……」

 沈黙。

 ――二人の間に重い沈黙が横たわる。

 『メイド』さんは、肩を抱いて、下を向く。

 オレは、拳を震わせ彼女を見つめる。

「えっと……」

 と彼女は口を開こうとする。

 だが、彼女に言わせていいのか?

 こんなに辛そうな、今にも泣きそうな、オレを助けてくれた彼女に言わせるのか?

 男だったらどうする?

 そりゃ、テメェで察して、代わりに言ってやるもんだぜ!

「まさか猫か。さっきのようなヤツらと戦うってのか!」

「……」

 沈黙。

 『無限』に感じられる『時間』を経て、彼女の答えを『待』つ。

「――えぇ、そうです。『猫』たちは『言葉を使い』、『強力な魔法』を使うのです」 

「なっ、魔法だって! 猫のクセに魔法を使う? ……いや、その前に、『喋る猫』ってどうよ? 『剣と魔法のファンタジー』じゃあるまいし、そっちのほうからツッコむべきだろ!」

 自分の疑問を彼女にぶつける。

 語気が荒くなって悪い気がした。

 けど、オレの心は、猫に対する怒りが爆発しそうだ。

「……でも、アナタも実際に見たと思いますが?」

 断言された。

 否定を言わせない重みをカンジ、『実物提示教育』の実用性にあるような、『実際に見た』という信憑性。

 それは疑いようがなく、信じるしかない。

「……じゃあ、さっきの猫が『火を吹いた』ってのも『魔法』なのかよ?」

「えぇ、『魔法』です。炎を操ったことから、その猫は『火の血統(けっとう)』だと思います」

「『血統』? なんだ、『血統』って。……『血筋(ちすじ)』のことか?」

「はい、よく似たものと思ってくれればいいです。猫たちには【血統】というものが存在します」

 『メイド』さんは続ける。

 早過ぎず、遅過ぎず、オレの理解力に合わせた説明センスは、教師に向いてるかもしれない。

「血統は『地水火風』に分類され、持って生まれた【言璧(ことだま)】によって、使える魔法が変わります。『火の血統』なら、炎を操り、モノを燃やす。『水ならば水』を操り、『風は風』を起こし、『地は地』を割る」

「『血筋』が使える『魔法に影響する』って、まるで、『血液型』だな。『A型は融通が利かず』、『B型は変人』、『O型は大雑把』で、『AB型は二重人格』」

「……なんかかなり偏った認識ですね」

 ツッコまれた。

「それに、『時間』と『生活環境』と『人種』の概念が入ってないので、『心理学的』には正しくありません」

 『ダメ押し』された。

 なんか『専門的に否定』された。

「しかし、『猫の血統』には、『地水火風』の概念が当てはまるんです。血統によっては、二属性の魔法を使うことも出来ます。これは生まれる際に、『両親の血統』が混じったためです」

「二種類の魔法が使えるって、なんかズリぃな」

「いえ、そうでもないです。二つの血統を持つということは、その分、『血が薄い』ということ。――つまり、一つ一つの魔力は弱くなりますから」

「器用貧乏ってヤツだな。『ドラクエ』の『勇者』っぽいな」

「……」

 沈黙された。

 オレ、何か悪いこと言った?

「……『話が脱線気味』なので、話を戻します」


 【この世界は『猫』に支配されています】


 決定的な一言。

 うっすらそうとは思ってたけど、なんとなくそうと思ってたけど。

 やっぱり、『十進法わかったぜ(とぉーなんかー)』ってカンジだぜ、チクショウ!

「じゃあ、この『首輪』もそういったモノなのか?」

「えぇ、『首輪』は『服従の証』です。『猫』は狩りと称し、『人』を捕まえ、『首輪』をつけるんです。捕まった『人』は奴隷にされて、『猫』たちの労働力として『こき使われる』んです」

 なんか、『こき使われる』ってところを強調された!

 『狩り』とか『奴隷』とか、なんて関係ないぐらいに強調したよな!

「えぇ、そりゃあもう。『こき使ってくれます』から」

 うん。間違いない。

 なんか、『ものすごく大変』って、『ひしひし』とした『プレッシャー』を感じたぜ。

「あぁ。……(つら)さは大体わかった。じゃあ、それも?」

 オレは、『メイド』さんの『首輪』を指さす。

 《えっ、何、私の顔になんかついてます?》みたいに『小動物』みたいに首をかしげて、

「いえ、これは違います。……この首輪は、自分でつけたものです」

「……自分でつけた?」

「はい、そうです。『首輪をつけてさえ』いれば、いずれかの『猫の所有物』ということで、襲われません」

 《このほうが、何かと都合がいいですから》と、(つぶや)くと、彼女は再び視線を外す。

「……」

 またも沈黙。

 こういった空気は、苦手なんで、『紳士的』にフォローしとこう。

「キミは戦うって言ったけど、アイツらに勝てるのかよ?」

「……たぶん、『死ぬ』かもしれません」

「死ぬってわかって、戦うのかよ!」

「だって、他にどうしようもないじゃないですか! 強引に闘いを挑まれた以上、受けて立つしか……! たとえ、たとえ、死ぬかもしれなくても、闘うしかないんです……」

 『悲痛』な叫びだった。

 『眼が潤む』ってレベルじゃなく、『目じりから光るもの』が零れ落ちているほどに。 

 ……『地雷』を踏んじまった。

 『あと、一ヶ月の命です』って医者に言われた患者に、『来年の誕生日が楽しみ』って言ったぐらいの『致命傷』を与えた気がする。

 くそっ、『フォロー』だ。

 フォローするんだ、彼女をフォローするんだよ!

 ――つうか、悪いのは全部、『猫野郎』だ。

「クソっ、そんなのふざけすぎだろ……。好き勝手なことしやがって、アイツら……!」

 口に出た。頭にきた。

 たぶん、今日、一番頭にきた。

 さっきのクソ猫のことを考えて、『頭にきた』ってレベルじゃねぇ。オレを助けてくれた『大切な人』を『泣かせた』ってことが、『トサカにきたぜ』、許せねぇ。

 オレの『貞操(命)の恩人』が、困ってるのに知らん顔できるか? できるわけねぇよな。そりゃ、よくできたヤツは、我慢できるかもしれねぇ。

 ――けどよ、オレには、そんなことできねぇよ!

 だから、言おうじゃねぇか。

「――なぁ、アンタ。『オレに何かできること』はないか? 何でも力になるぜ! 『助けられた恩』を返さないってのは、(おとこ)じゃねぇ!」

「えぐっ……、本当ですか?」

 か細い声。

 『涙』と『嗚咽』に()れた弱々しい声。

 『皮肉』だが、それがより一層、オレを奮い立たせる。

「……ああ。このまま黙ってるなんて『漢』じゃねぇ!」

「――」

 再びの沈黙。

 いや、正確には、『大切な人(彼女)』がすすり泣いている。

「オレじゃ、ダメかよ?」

「――ッ」

 沈黙に次ぐ、沈黙。

「……ぐす、ひぐっ」

 『沈黙』の中、彼女の嗚咽が『増』す。

 ――オレじゃダメか。『力不足』か。頼りないってのかよ。

 困ってる『大切な人』一人守れないのかよ!

「ごめんなさい」

 『否定』の言葉。

 『断言』する、『決定』の言葉で――。

「……ぐすっ、いえ、なんか、『嬉』しくて。どう言ったらいいか、わからなくって……」

 彼女が泣きじゃくる。『笑顔』で泣きじゃくる。

 溢れる涙を、手で拭いながらに泣きじゃくる。

 ――そんな彼女にオレは、答える。

 あぁ、答えてやるさ。

 さっき、キミに言われたことを、伝えるさ。

「はんっ、こんなときはだな、『ありがとう』って言えばイイんだよ!」

 そう力強く答えてやるぜ。

「……ありがとうございます」

 きょとんとした、瞬間、彼女は泣きながら、そう答えてくれた。

 オレの胸の奥が『きゅぅぅぅぅ』と締め付けられるような感覚。

「いやいや。その何だ。だから、もう泣くなって。……正直、『女の泣き顔』って苦手なんだよ」

「……はい」

 彼女は、どこからか『細やかな刺繍』の入った『ハンカチ』を取り出すと、『涙』を拭った。

「もう、大丈夫です」

 さっきまでの弱さがウソのように、凛とした『一本筋が通った』かのような【自己主張】。

「あぁ、やっぱ笑ってる顔のほうが良いぜ。よっしゃ、仕切り直しだ! オレは何をやればいい? アイツらを、ぶっ倒しに行けばいいのか?」

「いえ、その前に、これをつけてください。

 意気込むオレを、彼女が制す。

 例の如く、彼女が服をごそごそすると、一つの『首輪』が出てきた。

 その『デザイン』は、彼女がつけているものと『同タイプ』。

「……これをどうしろと?」

「はめてください。そうしている限り、いきなり『狩られることはない』ですから」

 用心のためってか。『備えあれば憂いなし』ってヤツだな。

 首輪は『彼女のと同サイズ』な気がしたが、オレの首にも『丁度ぴったし(ジャスト・フィット)』。

「どうですか……。苦しくないですか?」

「いやっ、大丈夫だ。結構ゆったりしてるから、全然平気だぜ」

「それは良かったです。とても似合ってますよ」

 心底嬉しそうに微笑まれた。

 『太陽のような笑顔』ってのはこういうのを言うんだな。

 『首輪が似合う』ってのは、何か嫌だが、彼女に言われるんならまんざらでもないぜ。

「では、闘う前に『仲間』を紹介します」

「おっ、『仲間』がいるのか。そりゃ頼もしいぜ」

「えぇ、きっと、『彼女』も喜んでくれますよ。ホント、『人手不足』で困ってましたから」

「……『彼女』って、オレ以外に『男』はいないのか?」

「えぇ、『理由(ワケ)』あって今は……」

 しまった。

 この手の『人材が足りてる』、『足りない』って話は『禁句(タブー)』だったぜ。

 彼女たちは、とてもツラい境遇の中、『革命』を起こそうと戦ってるんだ。

 オレが、傷つけてどうするよ。

「そうか、わりぃ……。変なこと聞いちまった」

「いえ、別に気にしてません。それよりも、そろそろ時間がマズいです」

 『一分一秒』が勿体無いとばかりに、()かされる。

 いや、別に『急げ』って命令されてないけど、彼女の『早歩き』っぷりが、その『時間の無さ』をアピールしてくる。

 もう、めっちゃ速い。これなんて『爆速競歩(ハンター試験)』って速さかもしれない。

 ――油断すると置いてかれそう。

「あぁ、分かった。行こうぜ。俺たちの反撃開始だ!」

 オレが『この人』を、猫の魔の手から助けてやる。

 絶対、守ってやる。

 『大切な人を守る』、それが『生きる』ってことだ。

 ――お前らも、そう思うだろ?



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