51◆◆◆場所:『某ファミレスでの後日談』……語り手: 【都市伝説好き(ショートヘア)】
◆◆◆場所:『某ファミレスでの後日談』……語り手: 【都市伝説好き(ショートヘア)】
「――とまぁ、そんなカンジのウワサ話。その後、『若造』や『猫嬢』や『メイド』がどうなったかってのはわからない。それぞれの『夢(野望)』を叶えたかもしれないし、途中で『打ち切られた(野垂れ死んだ)』かもしれない。もしかしたら、『ファンタジーのお約束』で『世界を救うような英雄になった』のかもしれない。――だけど、私が知ってる【都市伝説】はここまでなんだよね」
《どうだった?》と、【都市伝説好き(ショートヘア)】の女のコが呟いた。
と言っても、それは『夜の電飾』に照らされた店の窓に映る私なんだけど。
「さぁ、どうなんでしょうね……」
と、猫耳をつけた白衣の人が、やけに『ノリノリ』で『猫耳』を『メトロノーム』のように『ハイテンショントランス(リズミカル)』に揺らしながらに、『ボールペン(青色)』を『ノート』に走らせてる。
……なんかものスゴイ速さで、『青色インク』の箇所が増えてるんだけど。……汚すぎて読めない。
――つうか、人の話を聞け!
「痛たたたた、痛いですって! ちょっ、『猫耳』引っ張っちゃダメッ!」
痛がられた。
めっちゃ、痛がられた。――えっ、この猫耳生えてるの?
なんか、《マジ勘弁してくださいよ》って、【転載する天災(猫耳白衣)】が涙目で抗議してくるけど……。
――いや、これは『飾り(フェイク)』だよね。
きっと、『コスプレイヤー』として、『キャラを作ってる』んだよ。――ソウニチガイナイ。
「でも、人の話は聞いてくれないと悲しいね。――せっかく、こうやって自慢の『都市伝説』話したんだからさ。やっぱ聞いて欲しいし、感想聞かせて欲しいってもんだよ」
「いやいや、すみませんわ。気に障ったら申し訳ないですががが。私は『物忘れが激しい』もので、そのときに感じた『感動』ってのをすぐに『転載しない』と忘れちまうんです」
あぁ、そうだった。
この人はそんな人だった。
自分の感動を転載しないと気がすまない【転載主義者】な人だったんだよね。
……かなり『ヘンな人』過ぎて、そんな『設定(性格)』なんてすっかり忘れてた。
「ごめんごめん。そういやそうだったね。――で、感想をまとめたところで聞かせてくれない?」
「うーん、そうですね。気になるところはたくさんありますし、ツッコミどころは満載ですし……。まぁ、強いてあげるならアレです」
盛大に溜めてきやがった。
きっかり『一分ジャスト』の空白入れてきやがった。
コイツ、さすが【転載する天災】ってかい。私のスキルをしっかり転載しきちゃってる!
「え、何々? そんなもったいぶらないで教えてよ」
焦らされた。
めっちゃ焦らされたんで、すっごく気になったんで急かしてみた。
そしたら、真剣な表情で【転載する天災(猫耳白衣)】が答えてくれた。
【猫耳は文化です】
――『意味の顕現』。
『萌えです』、『萌えるんです』、『けもの耳はそれだけで可愛さ200%アップ!』、『耳のたれ具合と表情でシンクロ率500%の萌えなんです』って【自己主張】。
……えっ、ここっていつの間にか『猫世界』だったの! 嗚呼、そういえば『オタク(職人)』たちの『脳内妄想』は、常に『電波(Intel)入ってる』の『固有結界』でしたね。――わかります。
……って、うわっ、『電脳ハック(ジャミング)』受けたせいで、店の人全員が『猫耳』に見えてきた。ちょっ、これは強烈な『潜脳工作』だだだ。――ま、まさか、『フツー』な私が『猫耳世界』に巻き込まれてたって『オチ』だったのか!
ってカンジに『一般人』な私の『思考回路(デリケートな部分)』に『齟齬』が発生しました。
「――いや、マジメに答えてください」
「私はマジメです。『伊達や酔狂』で猫耳つけてると思ったんですか!」
《クワッ!》って、【転載する天災(猫耳白衣)】が目を見開きながら『真剣な返事』してきやがった。
うん、『伊達や酔狂』であって欲しかった。
――そんな『真剣さ(命をかけて)』は勘弁してください。
「まぁ、それもあると思うけど、『大切なモノ』の観点で答えてくれるとありがたいかも……」
最初からそう言っとけばよかったぜ。
ここは、【殺人容認主義者(白眼鏡)】の『誘導尋問』を借りときます。
「『大切なモノ』ですか……」
《それは困りますな》と、『ふにゅふにゅ』って『猫耳』を揺らしながらに考え中。
「――ぶっちゃげ、答えが多すぎて、今回の話で『大切なモノ』ってよくわかりませんわ。なんというか人それぞれ過ぎて、甲乙つけれませんぜ。『若造(?)』に絞ったとしたって、『元の世界に戻りたい』ってのか、『人を犠牲にしたくない』ってのか、『自分の分身だっていうパソコン』なのか、はたまた『自分の生き様ってのを曲げないこと』なのか、『誰かを守りたいことなのか』……。『猫嬢』や『メイド』や『他の猫達』や『登場人物』も『自分の大切なモノ』のために生きてるんでしょうし。いろんな『大切』ってのが交差しまくってて、さっぱりですわ」
《それこそ『世界が連鎖する』ように》と、【転載する天災(猫耳白衣)】がちょっぴりマジメに意味深なことを。
……まぁ、たしかに人それぞれで大切ってもんは違うけどね。
「じゃあ、ちょっと質問変えるけど、【転載する天災(猫耳白衣)】にとっては、何が大切だと思えた?」
このウワサを聞いて何が大切だと感じたか。
『都市伝説の感想』を聞くのが、『噂話をする醍醐味』ってやつで。
「なるなる。『私の答え』ですか……。まぁ、『大切なモノ』ってのは人それぞれだから断定はできませんががが」
《私の場合はアレですな》、《きっと》と猫耳が黒い眼で私を見てくる。
どんな色でも飲み込み、どんな色にも変わる瞳で視てくる。
そして、『転載主義者』が答えを述べる。
「――それは、【自分のために生きる】ってことですわ」
ん、どういうことだ?
「……それって、『自分中心』に考えて生きるってこと? ぶっちゃげて言うなら、『自己中』ってヤツ?」
《ちょっち、ニュアンスがちゃいますな》と、【転載する天災(猫耳白衣)】が胸に手を当てながら、続きを紡ぐ。
「自分のために生きるってのは、『他人のために生きない』ことです。誰かのために、自分を犠牲にしない。他人の言動や行動を気にせず束縛されずに『自己責任』で生きるってことですわ」
……ん、ちょっと、難しい意味合いな気がする。
「もうちょっと、噛み砕いて、具体例付きで話してくれると、ありがたいかも」
「なるなる。具体例ですか。そうですね……。じゃあ、こんなのはどうですかな? 例えば、今回のウワサだと、『助けてくれって言われたから助けた』けど、そのせいで、『自分は元の世界に戻る手がかりを失ってしまった』ってのがありましたよね?」
うん、たしかにあった。
「……ウワサ話の『若造』が『猫嬢』か『本(元の世界に戻る手がかり)』を選ぶ場面のことだよね?」
「ですです。今、私が、言ったようなニュアンスだと、『他人のために生きてる』んですよね。『メイド』に『猫嬢』を助けるように頼まれて、『猫嬢』を助けたおかげで、自分は『帰る手がかりの本を失ってしまった』。――つまるところは、『従わなければ何とかなったかもしれない』って『責任転嫁』や『責任転換』です」
――なるほど。
たしかに、後ろ向きで嫌な考え方だね。
日常の現実社会でも、しょっちゅう、やってる思考法かも。
「じゃあ、自分のためってのはどんな言い回しになるの?」
「それはアレですな。『自分が助けたいから助けた』ってことですよ。『助けたら見返りがあるかもしれないから助けた』、『助けなかったら寝覚めが悪いから助けた』、『自分が得するように助けた』、『自分のために助けたんだ』ってニュアンスですな」
……おいおい。
それって、本当に自分のことしか考えてないな……。
「でも、それってどうなの? 考え方としては間違ってないかもしれないけど、なんで『大切』なの?」
猫耳が溜める。
私に考える時間を与えるように溜める。
私は相手の出方を考えながらに待つ。
そして、なんとなく意味を考え終わったときに、続きが紡がれる。
「――簡単なことですわ。全部、『自分のせいだって割り切れるから』です。『失敗したのは自分の力不足』で『騙されたのも自分の思慮不足』。逆に、上手く行けば、『オレ最高!』って思考法ですわ」
《まぁ、『世間的』には流行りませんが》と、【転載する天災(猫耳白衣)】がノートに青インクを走らせる。
――なるほど。
好き勝手に生きるんじゃなくって、『自分の行動に責任を持って生きる』っていう思考法か……。
「たしかに、そう考えてれば、他人のせいにして気が滅入ることはないかもね」
『全部が全部自分のせい』になっちゃうのは、ちょっとツライかもしれない。
だけど、人のせいだって、言い訳がましく未練たらしく、逃げ回ってるよりはマシかもしれない。
――ぶっちゃげ、『他人のせい』にしてたらキリがない。
「もしかしたら、ウワサの三人は、それに気づいてたのかもしれないんじゃないかな?」
自分を磨いてさえいれば、結果的に相手を助けることができるって気づいてたのかもしれない。
「ちょっと、不器用で『シリ/めつ』な考え方かもしれないけど」
「――世の中、そんなモンばっかですわ。まぁ、【敗線の暴君(黒眼鏡)】の言葉を転載すれば、《気づいた時には終わってる》、《で、どうする?》って具合に、考え行動することが『大切なコト』なんでしょうな」
「――あぁ。たしかにそうかもね。【殺人容認主義者(白眼鏡)】の言葉じゃアレだしね。《答えはいくらでも教えることができる。しかし、人は自分で見つけた答えにしか納得しない》ってヤツだね」
そう。
人ってのは、自分が大切だと思ったこと以外には決して納得しない生き物なのさ。
いくら答えがあろうと、誰かが親切に教えてくれたって『テキトー』に聞いてるだけ。
自分で直面して、自分で考えて、『自分で出した答え』と『結果』だけが『初めて納得』できるもんで。痛い目に遭ってみないと、わからない悲しい生き物なのさ。
「――とまぁ、そんなところで【都市伝説】に幕を下ろそう。これにてお開きってことで」
《えっ?》、《これで終わるんですか?》と、【転載する天災(猫耳白衣)】が『疑問符』を飛ばしてくる。
「いや、そんなこと言われても私はウワサの続き知らないし……」
うん。
知らない。マジで知らない。
ぶっちゃげ、あの三人がどうなったか知りたかったりするけど、誰もウワサしてないし。
「……そうですか。じゃっ、コレでも読んどきますかい?」
『ドサッ』って音がした。
それは、机の上に『印刷用紙』を『一セット(五〇〇枚)』使いそうなぐらいに『分厚いプリントの束』が置かれた音で。
「ん、これってまさか……」
イヤな予感がした。
だから、『バッ』と手にとって、『パラパラ』って中身を斜め読み。
そして、その『文章の洪水』から分かったことは――。
「――これ思いっきり今、話してた『ウワサ(内容)』ジャン!」
なんてこった。
ガッデム! どっかで知った内容だとは思ってたけど……。
「いやはや、広まってくれてよかったですわ」
《良い『転載物』だったでしょう?》と、『猫耳』を『ふにっ!』って力強く立てながらに嬉しそうに。
「クソッ、やられた。まさかテメェの『作品』だったとは……」
なんという『同人クオリティ(なんでもアリ)』。
えぇ、そういえば『Blog(雑記)』で読んだ気がしますよ。似たの読んだ気がしますよ……。
――そうか、どっかの『信者』がどっかのサイトに転載して、それを見た人がまた別の場所に転載して、クチコミで拡がりまくって、真似した『二次制作』がどんどん増えて、もう誰が『本家』で誰が『二次制作』かわからなくなったっていう『転載のエンドレス』。
――つまり、『オタク(職人)文化』。
ぶっちゃげ、『ネタ系ニュースサイト』とか『新聞記事』じゃ、『全く同じ記事』がめぐりめぐってのパクリ合いで『誰が起源か(誰だか)』って具合の【転載のエンドレス(アレ)】な同じ状況で……。
――ゆえに起こるのは『出所不明』な【都市伝説(シリ/めつれつ)】ってワケで。
「『最高のネタ』だと思って話してたら、『本家登場(降臨)』って『最低』じゃん……」
《楽しめたんなら最高でしょう?》と、【転載する天災】が、ちょっと意地悪そうに胸に手を当て、笑ってる。
《最初から最後まで『神(作者)』の手のひらの上だったなんてマジ勘弁!》と、窓に映る【都市伝説好き(ショートヘア)】が『西遊記の孫悟空』みたいに悔しがってます。
――とまぁ、そんなカンジの『ファミレス』風景。
夕食時はとっくに過ぎて、日が変わりそうなぐらいの真夜中のお食事処。
だけども、そこは、昼間以上に盛り上がってる『バッカーノ(バカ騒ぎ)』が『基本』の『学生の街』の風景で。
そんな所で、『エンドロール』が流れて、『スタッフロール』も流れて終わる。
『次回予告』も『CM提供』も終わってしまう。
――画面暗転、『BGM』も『効果音』も途切れてしまう。
だけど、ちょっと、私は疑問に思ってしまったんだ。
――すっごく、引っかかったことがあるんだ。
だから、ちょっと呟いてみる。
【――そういえば、『転載主義者』の『転載の元ネタ』ってどこから来たんだろう?】
しかし、それに答えるモノはいないんだよね――。
【お金が世界を救います ~大切なモノって何ですか?】(了)