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お金が世界を救います! ~大切なモノって何ですか?  作者: ・w・(テン・ダブリュー・ドット)
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05◆◇◆場所:『草木にあふれる巨大な箱庭』……語り手:『若造』

 ◆◇◆場所:『草木にあふれる巨大な箱庭』……語り手:『若造』

「……ん、もう食べられないぜ」

 陽光を感じながらに、うたたね気味に、寝返りを打ちつつ、寝言を。

「あと、五分……」

 『ぴー、ぴー』って『小鳥のさえずり』を聴きながらの夢見心地。

「んー、今日って休みだろ? もう少し寝かせてくれよ」

 夢の中で夢を見てるカンジがしながら、さらに夢を見ようと夢に集中。

「おぉ、『美女と肉と酒』で、色んな意味で『酒池肉林』!」

 そんなオレの願い(夢)を知ってか知らずか、相変わらず、小鳥はうるさいもんで。

「だあああああああああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ! うるせぇえええええ! オレの頭をツっつくんじゃねぇえええええええええええーーーーーーッ!」

 と、自分に自分で、爽やかな『モーニングコール』をやってみる。

 それに驚いた『小鳥』が空へと、逃げ去った。

「くそっ、……なんだってんだ! 鳥の分際で、オレのことをバカにしやがって。『ハゲ』ちまったらどうしてくれんだよっ!」

 頭をさすりながら、髪の毛が無事なことを確認できて、ほっと一息。

「ん、鳥……?」

 なんか『無性に(ピンポイントで)』引っかかた。

 なんで、ここに鳥がいるんだ?

「あれ……? オレは、なんでこんなところに寝てんだ……」

 周りには『部屋』も『ベッド』も見当たらない。

 というか、思いっきり『青天井』で、『周りが森』っぽいんだが。

「ちょっ、『ノーパソ』! 『ノーパソ』はどこだ! あれが無くなったら、仕事(何も)できねぇ!」

 《ノーパソ、ノーパソ》と呟きながらに辺りを散策。なんだか見たことあるモノが瓦礫になって、ちらほら散らばってる。

「ん、あれは……。あった! オレの『商売道具(パソコン)』! あぁ、よかった。会いたかったぜ、愛しの『愛機(マイパソコン)』……」

 あまりの感動に、『目から汗』が。

 うわっ、な、何も見えない!

 腕で『ゴシゴシ』拭うと、ふと気づく。

「で、ここはどこなんだ……? 草が『ボーボー』に生えて、壁に囲まれて……」

 まるで、どこかの庭。それも並の庭じゃなくって、お屋敷にありそうな『大庭園』。下手すると、『文化遺産』になってそうな荘厳な【自己主張】を壁から感じるんだが。

「や、やべぇ。もし、そうなら早く出ねぇと、『不法侵入』で訴えられちまう!」

 出口を探して、ひた走る。もちろん、出口がどこかなんて、分からない。

「そうだ、こんなときは太陽の位置で、方角を調べてだな……」

 あれ……。いつの間に、あんなに日が昇ってんだ。

 おかしくないか? オレは仕事帰りで、家に向かう途中で。通勤してる『サラリーマン(オヤジさん)』や、『女子高生(コギャル)』が『きゃぴきゃぴ』騒いでて……。

「よ~く思い出せ、オレ! 何か忘れてるような気がするんだ」

 ――街中を歩いてた。そしたら、空が急に黒くなって。

「うぐっあっ……」

 ――頭痛。

 こめかみを『アイスピック』で、ぐりぐり突き刺すような痛み。

「何か、今、見えたような……」

 ――深く思い出そうとする度、痛みが増す。

 これは『思い出すな』って『拒否反応』か?

「……くっ、だからって、それじゃ話が進まないってんだよっ!」

 『鈍痛鈍痛鈍痛鈍痛鈍痛』の『ループ・ザ・ループ』。

 後頭部を『スレッジハンマー』で、『多段コンボ』がキマったような衝撃に目が眩む。

 ――それでも、オレは諦めない。

 『絶対に忘れちゃいけない』何かがあったはずだ。

「ぐぁっ、あ……頭がいてぇ……。眼? ぎらついた眼か……。ッ……こっちを見てやがる」

 ――奥歯が痛む。

 あぁ、無理に思い出そうとする『拒絶反応(トラウマ)』の痛みなんかじゃねぇ。

 オレが、オレ自身の意志で、『内臓(はらわた)煮え返ってる』『憤怒』で噛み締めて、口が切れた痛みだ。

「――見下してんじゃねぇよ!」

 『はぁはぁ』という荒い息を吐きながらも、思い出した。

「そ、そうだな。オレはたしか突風に巻き込まれたんだったな。……建物や他人と一緒に。はは、それにしちゃよくもまぁ、無事だったもんだな」

 軽口を叩いてみたものの、全然笑ってねぇじゃねぇか、オレ。

「はっ! いかんいかん。『アツくなったらダメ』だぜ。『じっちゃんがよく言ってた』な。冷静にならねぇと。『戦場では焦ったヤツから死んでいく』。落ち着いて考えろ。深呼吸。深呼吸」

 自分の身体を見回しながらに、『ラジオ体操』しながらに、健康チェック。

「よし、どこも悪くねぇ! あんなのに巻き込まれたのに全くの無傷が信じられねぇや! オレのように日ごろの行いが良いと違うな、やっぱ。さすが、オレ!」

 とりあえず、自分を()(たた)えて、笑っておくか。

「ふはははは、今日もオレが一番(サイコー)だぜッ!」

 その瞬間、突然の『がさがさ』音。

「な、なんだ? 何かいるのか……」

 音がするのは、背後の茂み。

「もしかして、『番犬』……?」

 やべぇ、やべぇ、やべぇぞ。

 どうする? 見つかっちまったら間違って入ったのに、『家宅侵入罪』とかの『冤罪』で、『一生臭い飯』かもしれん。いや、そんなことないと思うけど、『陰謀』ってのはどこにでも渦巻いてるモンでっ!

「全然、考えがまとまらねぇええええ!」

 とか、叫んでたら、茂みから一匹の『茶色』で『丸め』の『猫(ダイリュート?)』が現れた。

「うぉっ、脅かしやがる! ただの猫じゃねぇか。驚いて損したぜ……。ほら、こっちこい」

 『にゃぁにゃぁ声』で、呼んでみる。

 興味を持ったのか、(おび)えてるのか、特に動かないんで、捕まえて、抱きしめて。

「猫は首をいじってやると、喜ぶんだよな~」

 嗚呼、『猫の可愛さ』は異常だぜ。

 変な展開になってても癒される。『犬』もイイけど、抱いて遊ぶのはやっぱり『猫』のほうだよなあ。

「なんだコイツは。……()()れしい」

 ――いきなりの声。

 しかも、『ドス』を効かせた『スゴみ』のある、渋い声。

 『仁義なき戦い』や『極道の女』なんかの『仁侠映画(龍が如く)』とかに出てきそうなイイ声がした。

「そんなワケねぇよな。こんなところで、そんな『声優(役者)』じみたヤツなんていねぇし」

「……お前、()めているのか?」

「うぉっ、また聞こえた……!」

 『キョロキョロ』と周りを見ましたけど、それっぽい人はいない。

 ――いるのは『オレと猫』ぐらい。

「……あれ、おかしいな。嵐に巻き込まれて、頭でも打ったか……」

「うざってぇ言っとるのが、わからんのか!」

「…………」

 猫が喋った。

 思いっきり喋った。

 腕の中にいた、ちょっと『太めなシャム猫』がスゴんできた。

 ――『オレの眼』と、『ソイツの眼』が合った。

 めっちゃ『ガン』を飛ばしてるぜ、コイツ。

「うぉおぅっわ! なんだこりゃっ! ね、猫が喋ってやがる!」

 理解と行動は一瞬。

 あまりの驚きっぷりに思いっきり、『猫を地面に』たたきつけちまった

 マズい、こんなところ見られたら、『動物愛護協会(いちゃもん集団)』が黙ってない!

「ふんっ、いきなり手を放しやがって。俺の毛が汚れたらどうしてくれる? あっ?」

 スゴまれた。

 めっちゃスゴまれた。

 『なめ猫』が『なめんなよ』ってするカンジで、ちょっと可愛いんだけど!

 よかった、とりあえず受身とったみたいで、大丈夫そうだ。結果、オーライ。

「すげぇな。猫が喋ってるぜ。どうなってるんだ?」

 猫の『不意打ち(?)』が終わって、安心したら、興味が出てきたんで、また捕まえてみた。

「おい、こら! 掴むんじゃない、放せ!」

 手の中で、猫が『ジタバタ』もがいて、野太く怒鳴る。

 『放送禁止ワード』で散々罵倒された。

 ――でも、可愛いんで許す!

「どこかに、『マイク』でもついてるのか?」

「ばっ、馬鹿もん! そんなところを触るな……! クク、くすぐったっ、クハハ。ヒャハハ、くすぐったいって……」

 『喋る猫』のあちこちを調べてみた。

 やたら豪華な首輪(『ごっつい宝石』や『キンキラな修飾』)が生意気だが、これといった『マイク』めいた機能はなさそうだ。

 それ以外は、フツーの猫。

 口の動きと連動して、言葉を話すタダの猫。

「これって、スゴくね? 『ツチノコ』なんて『キモカワ』よりも、『チョイワル』なコイツのほうが絶対ウケる! 『テレビ局(見世物小屋)』に持ってったら、『一躍スター』になること間違いなしだぜ!」

「えぇい、鬱陶しいわ!」

 猫が叫ぶ。

 さっきから叫んでるけど、『もうやってらんね』と【自己主張】。

 さらにその主張は、強さと濃さを増した瞬間、


 【非と煙は共にある(Fire with Smoke Every time!!)】


 声がした。

 いや、正確には、意味の顕現。

 『発火』・『炎上』・『焼尽』・『灼熱』・『焦熱』・『爆炎(爆煙)』・『飛散(悲惨)』・『轟沈』のetc。

 ありとあらゆる『燃える』に連なる概念が収束し、周囲を吹っ飛ばすべく、巨大な火球が現れた。

 って、『対象(ターゲット)』は、オレかよ!

「ぐあっ……、いてぇ……何だ、今の……」

 世界を『スローモーション』で感じながら、空中に舞いながらに、落ちながらに呻いてみる。

 『どさっ』と地面にダウンしながら、痛み以上に驚いた。

「うわっ、火! ふ、服が燃えてる!」

 そりゃ、『火球』をぶつけられたら燃えるよな。

 いや、そんなこと冷静に分析してる場合じゃない! やべぇ、消さないと、ヤケドしちまう! 

「うぉっ、アツッ、あっちぃ、うぉっ、消えろ消えろ。くそっ!」

 『ゴロゴロ』と『芋虫のように』転がりまわって、『七転八倒』したぐらいでようやく火が消えた。

「ふん、『ヒト』風情が俺に無礼だろうが。そうやって地べたで転がってるのが、『ヒト(ゴミ)』にはお似合いだ、クハハッ」

「はぁ……はぁ、くそっ、いきなりなんだってんだ?」

「……なんだ、その眼は? ほぅ、やろうってのか? この俺に? クハハッ、『ヒト(ゴミ)』風情がか?」

「さっきから、人、人、うるせぇ! 『猫』の分際で、もぅ許さねぇぞ!」

 『上目遣い』で、スゴむ猫と、俺との距離は三メートル。飛び込むには一瞬の間合い。

 もちろん、小細工なんて関係ねぇ。

 ただ、突っ込んで殴るだけだ。 

 一発、あのむかつく顔に、一撃決めて、『千鳥足』になった『猫の狭い額』を踏み砕くだけ。

「だけど、全然近づけねぇえええ!」

 ものごっつい『弾幕キツイ』んですけど!

 びゅんびゅん、火の玉が飛んでくるんですけど!

 『Graze(点数稼ぎ)』も『Buzz(経験値稼ぎ)』も狙ってないんですけど! 『現実世界(リアル)』に『スコアアタック(マゾプレイ)』も『機体の進化(レベルアップ)』も『1UP(エクステンド)』も無いんですが!

「クハッ、威勢がいいのは口だけか」

「うるせぇ、どこの世界に『火を吐く猫』がいるんだよ! 『見世物(サーカス)』でも、『幻想世界(ファンタジーファンタジー)』なゲームでも見たことないぞ、たぶん! 『カードゲーム(MTG)』の『無茶設定(アングル―ド)』にはいたかもしれないけど。『世界の常識』守りやがれ。って、うおっ!」

 思いっきり、火球が顔を掠めた。

 ぎりぎり外れたソイツは、近場の木を美味そうに『こんがりグリル』。

 ――冗談じゃねぇ。

 何、この『(トンデモ)展開』! 読者もオレもついてけねぇYO!

 あぁ、誰か夢だといってくれ。『夢の中でも痛い時は痛い』んだ。

 ――頼むから醒めてくれ。

「おい、何だ今の音は?」

 突然の声。

 『猫』でも『オレ』でもない、『第三者』。

「こっちのほうから、しなかったか?」

 さらにもう一声の『追加入ります』で、『第四者』。

 がさがさと、またもや茂みが鳴って、二人の男が現れた。

 黒いネクタイに黒いサングラスが、いかにも『893(×印)』な雰囲気だけど、気にしたら負け。

 つうか、今はそんな場合じゃない。

「はぁ、はぁ……助かった、人が来たぜ。観念すんだな、化け猫野郎!」

 男たちは、ささっと『火吹き猫』を取り囲み、問いかける。 

「なんだ、コイツは?」

「はぁ、はぁ……。ソイツが。その猫が突然、火を吐きやがったんだ!」

「『猫』が火を吹いた……? コイツ何のことを言ってるんだ?」

「はぁ、……くっ、ウソじゃねぇ! オレはこの眼で見たんだ!」

「『小僧(ゴミ)』が、往生際が悪いぞ」

「ほらっ、今喋ったろ。その猫喋っただろうが! ソイツがオレを襲ってきたんだ。すぐに捕まえてくれ! 『保健所』に電話しようぜ! なっ、そうだろ?」 

 オレの必死の訴え。

 猫の『傲慢不遜』な態度。

 《まぁまぁ、落ち着け。お前の言っていることは、よくわからん》と困惑する一人の男。

 《ボス一体どういうことなんですか? 何やら凄い音がして来たんですが》と、もう一人。

 《クハハッ、なぁに、イキがった『若造』をちょっとからかってやっただけだ》と、喋る猫。

 『なんだ、こいつ。『ボス』に手を出したのか? こりゃおかしい』と男。

 『ハハ、フハハハ』、『クハハハッ』、『ハハッハハ』と二人と一匹が大声で笑う。

「おい、『ボス』って誰だよ? その猫喋ってんだぞ……。そっちのほうがおかしいんじゃないのかっ!」

 ……笑いが止まらない。

 まるで、『笑いダケ』でも食べたかのような異様な笑い。

 だけど、一人取り残されたオレは気が気じゃない。

「なぁ、おい! 聞いてんのかよ!」

 バカにされっぱなしなのは真っ平ゴメンだ。

 オレは、たまらず突っかかる。

「うるせぇ!」

 しかし、男の一人にすぐに振り払われ、殴り飛ばされた。

「ピーチク、パァーチク、『女の腐った(アバズレ)』みたいなこと言いやがって!」

「ッ……、クソ、いきなり何しやがんだ! 『オヤジには、ぶたれたこと』あるけど!」

「そりゃ、こっちのセリフだ。どこの『馬の骨(雑種)』か知らないが、『ウチのボス』に手を出して、タダで済むと思ってるのか? あぁっ!」

 イマイチ『要領』を得ない。

 ――つうか、『意味不明(イミフ)』です。

 だから、その『疑問』を口にする

「さっきから、『ボス』、『ボス』って言ってるけどよ。一体どいつのこと言ってんだ。それらしいヤツなんていねぇだろうがよ!」

 男たちは答えない。

 ――その代わりに『猫』が答えやがった。

「クハハッ、クハハッ、クハハハハハハハハハハハーーーーーーッ!」

 めっちゃバカにしながら、威張り腐って、笑いやがった。

「ハハ、ハハッ、コイツ。何言ってんだ、マジで、腹いてぇ……」

「ちゃんと、そこにいるじゃねぇかよ?」

 男二人も一緒になって笑う。

 はっきり言わなくても、マジうぜぇぞ、こいつら。

 ……ん、そこ?

 ボスがそこにいる?

 つうことは、ココにいるのか。どいつだ? 誰だ? どれだ?

 周りを見渡しながら、笑いに耐えながらに、オレの『灰色の脳細胞』が答えを告げた。

「まっ、まさか。『オレ』のことか! そうか……。そうだったんだな! ついにオレにも手下がついたんだな。知らなかったぜ、さすがオレ! ってうぉっ!」

 また火を吹きやがった。

「クヒッ、笑えねぇぞ、『小僧(ゴミ)』。俺のことに決まってるだろうが!」

 猫が地面を踏みしめる。

 まるで、『歌舞伎の見得を切る』ように。

 ――そして、告げてきた。

「『俺がボス』だ!」

 『猫好き』が見たら、きっと『失神』しそうなぐらいの『レア』な光景。

 可愛いんだ。めっちゃ可愛いんだ。

 ――だけど、コイツは、うざってぇ!

「やっぱ、そうだよな。そうに決まってるよな。冗談ぐらい笑って聞けよ。ぐぁっあ……」

 愛嬌込めて冗談交じりで皮肉ったら、締め上げられました。

「馬鹿にするのも、大概にしとけよ、小僧」

 この男の人、かなり『マッチョな肉体(ボディ)』をお持ちのようで。

 ――かなり痛いんですが。

「おらっ、返事はどうした?」

「はい……」

 あぁ、力無きオレ。

 無抵抗なオレ。

 黙って従うだけのオレは返事をしました。

「そうですかって、言えるかよッ!」

「ふぐぉっ!」

 えぇ、激しく力いっぱい返事をしました。

 『ヤツの股間(急所)』に『良い肉です(ジャストミート)』。顔が見る見る青ざめて、ぷるぷる震えながらに男は倒れ伏しました。

 ――そうだ、愚民よ。(あお)げ、(たた)え、祭るのだ。

「『猫をボス』って言ってる、『アホな脳ミソ』でも、『急所は同じ』なんだな」

「……クハッ、あくまで逆らう気か、小僧!」

「当たり前だろうが! 猫に従う人間様が何処にいるんだ! そこにいる? はっん、そんなことは知ったこっちゃないぜ。オレ様は従わねぇっ! てめぇらが、オレに従え!」

「ボス! ちょっと見てください」

 オレの剣幕に、やや気おされた男が、(うやうや)しく猫にモノ申す。

「コイツ、『首輪(わっか)』してませんぜ」

「何……?」

 猫は、オレを一瞬で『分析(スキャン)』。

 ちっ、まるで、『動物園のライオン』になった気分だぜ。

「クハハ、本当だ。この小僧、『野良(のら)ヒト』か。こりゃいい」

「『首輪』? 一体何のことだ……?」

 身構えたまま敵を見る。猫に『首輪』。男にも『首輪』……。

 ――男に『首輪』?

 黒皮で出来た、ごっつい質のよさそうな首輪を巻いてやがる。

 それは何故だ。

 ……あぁ、そうか。納得のいく答えが出たぜ。それに違いない。あぁ、違いない。

 こんな頭が沸いたクソ野郎共は、きっと、【異常者(アレ)】に違いないぜ。

「お前ら、『変態(そっち)系』だったのか!」

 返事の代わりに『火球』が飛んできた。

 冷静に『アクション映画(マトリックス)』ばりの『ストップモーション』で-避けた火球は、地面に触れるなり『月よりでかいクレーター』を穿(うが)ちやがる。

「図星だからって、『熱烈アピール』すぎだろ!」

「お前ら、『小僧』を捕まえろ!」

 猫が怒声を上げると、男たちが襲い掛かってくる。

 どうやら、ブチきれたらしい。

「オラァッ、逃げんなっ!」

 あぁ、もちろん戦いません。――だって、明らかに多勢に無勢過ぎだもん。

 それに見ただろ。火に当たった瞬間、蒸発したぜ? 地面が蒸発って『溶鉱炉』並みに熱いんじゃね? ……えぇ、『シュワちゃん(ターミネーター)』でも無理です。

「待ちやがれーーーーーっ!」

「身包み剥いで、痛い目に合わせて、売っ払ってやる!」

「誰が待つかよ! 痛い目に合うのも、エグいことされるのも真っ平だ!」

 『心まで筋肉(ハートフルマッチョ)』の『熱烈求愛(スキンシップ)』。

 身の毛もよだつ『アメフトタックル』をかましてくる中、逃げろ、オレ。

 なぜ逃げるかって? 『三十六計逃げるにしかず』だぜ。

 『敵前逃亡は死刑』だって? いや、戦うべきときは、『守りたいもの』があるときだ。

 そう。オレには守りたいモノがある。

 ――それは、『自分の貞操(バージン)』!

 それに、オレは『フツー』だぜ。アイツらとは違うんだ。

 ――絶対違うんだ!

 『女子高生』に『キンモ☆』って言われたって、『オレはフツー』に健全な『天才ハッカー』だぜ?

 そう信じてる。

 世界の誰も認めなくても、オレだけは信じてる!

 だから。

 ――だからこそ。

 全力で逃げながら、半ば『ヤケクソ』で『涙目』になりながら、叫んどいた。

「オレには、そんな『趣味(性癖)』はねぇえええええええーーーーーッ!」

 たぶん、オレの人生の中で、『トップ3』に入るぐらいの絶叫だったに違いない。

 


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