44◆◇◆場所:『自傷(自殺)と自嘲(自殺)と自害(自殺)の刹那』……語り手:『猫嬢』
◆◇◆場所:『自傷(自殺)と自嘲(自殺)と自害(自殺)の刹那』……語り手:『猫嬢』
「――もう死んだほうがいいんだ」
私は言った。
『自分の口』で言った。『主張』した。
この『悲しみ』が終わればいい。
この『苦しさ』が消えればいい。
――『全て』終わってしまえばいい。
こう考えてることさえ、さっさと無くなればいい。
「――ッ」
だけど、何も始まらない。
周りでは【陣】が展開されて、『稲光』を出しながらの『稲妻』が『轟音』を轟かせているのに、続きが起きない。
――自殺できない。
なんで?
いつも私が壊してるように、『対象』を『自分』に変えるだけなのに。
――『魔法』が『自分を犯さない』ことがないわけない。
自分の過ぎた『魔法の不注意』で『死んだ猫』の数は『枚挙』が無い。
それと同じように、『私を中心に吹き飛ばす』ように設置した。
――なのに、全く続きが起きない。
『自殺』への『期待』が、『安楽』への『期待』が、私を楽にさせてくれるはずなのに。
――今あるのは『なぜ死ねないかわからない疑問』と、その『疑問から来る恐怖』で。
「――なんで、死ねないのよッ!」
聞いた。
誰に? 誰が? ――どうでもいい。
納得行かないから、死ねないから。まだこの苦しみが続くのが嫌だから。
――だから、私は聞いた。言った。悲鳴を上げた。
『若造』の『胸』に『顔を埋めたまま』、『死ねないこと』に抗議する。
「――なんで、死ねないのよッ!」
同じことをまた言った。
バカの一つ覚えで、また聞いた。
だけど、誰も答えてくれないに決まってるのに――。
「ひっッ」
――突然、『何か』が触れた。
『何か』が腰に触れた。
――気のせいだ。
きっと、『精神』が『錯乱』してて、『幻覚』を感じてるんだ。
――そのはずなのに、『その触れるもの』は止まらず、触れる。
そっと、やさしく『熱』を帯びて触れてきた。
「――ッ」
恐かった。
そんなことがあるわけないと思う。
この『腰の感触』は。『肌の感触』は――。
……だけど、『ソレ』を確認するのが恐かった。
どうせ、『幻覚』や都合の良い『妄想』なんだから。だから、確認なんてしたくない。
――でも、私の顔は『真実』を確認しようと、動いてしまって。
「――ぐむっ」
思いっきり『私の頭』が押し付けられる。
力強く、力強く。
ただ力強く。抱きしめられて。
「――むっ」
叫んだ。
《こんなの嘘よ!》って、否定しようとした。
だけど、力いっぱい抱きしめられて、私は『厚い胸元』に埋もれてしまう。
次から次に出てくる『涙』が、『若造』の『服を濡らして』しまう。
それでも私は『抵抗』した。
――今、起こってることが信じられないから。
何が起こってるかわからないから。
そして、さっきまで何度も口にした言葉を言った。
生まれてからずっと悩み続けたことを聞いた。
「――もう死んでもいいよね? こんなツライことはたくさんなんだよ……!」
答えは返らない。
私は力強く抱かれて、泣くだけで。
ただただ、答えを待つだけで。
昔から誰からに『言われたかった答え』を、ただ言われたいだけで。
『否定される』のが『怖い』。――それは『死ね』と言われることで。
『肯定される』のも『怖い』。――それはもっと『苦しめ』と言われることで。
『ひぐっ』、『ひぎっ』って『すすり泣く声』を耳で聞きながら答えを待った。
だけど、答えは返らない。
「――やっぱり、死んだほうがいいんだよね」
私が答えを急かす。
たまらず聞いてしまう。
……より一層、抱かれる力が増した。
そして、『ソイツ』は言葉を紡ぐ。
「――あぁ、死ねばいい」
それは肯定の言葉。
聞きたかった半面、聞きたくなかった言葉。
――『電撃』のような『絶望』が私を襲う。
一度、死のうとしたのに、死ねなかった分、余計に辛くておかしくなりそうで。
そんな私にコイツは続ける。
聞きたくない言葉を続けてくる。
「――死ねばいい。死んでしまえばいい。つうか、さっさと死ね。どうしようもない意地汚いクソ猫は死ねばいいんだよ! 何やるのも『金』、『金』、『金』で人のせい! すぐに『人を騙して』、自分は『知らん顔』で自分は正しいってバカでクソで『頭悪い』クソ猫は死ねばいい。今すぐ、この場で『腹掻っ捌いて死ね』! 死んで生まれ変わっても、また死ね! ドンドン死ね! 死んで死んで死にまくって死にまくっても死に続けろ!」
死の宣告。
むしろ、『最後通告』で『完全』なる『拒絶』。
『絶望』から助けられて『救われて』『藁にすがった』と思ったらこの仕打ち。
『溺れかけて』、『息継ぎしよう』としたら、また『水中に引き込まれた』ように。
『生き残った』と思ったら『売女』にされて『陵辱』の限りを尽くされ『四肢』を切り落とされて『肉便器』にされ『達磨』のように飾れるこの心境。
――耐えられない。耐えられるはずがない……。
身体を震わせながら、涙を流しながら、この『クソ野郎』の腕を振りほどきながらに、睨みつけながら、言わないと気がすまない!
コイツの言葉を否定しないと気がすまない!
「――私は死にたくなんかない!」
言った。
言ってやった。
潤んだ視界で、『バカみたい』に『自慢げ』で『堂々』としてる『眼』を見ながら言ってやった。
だけど、その眼は揺るがない……。
「――そうだ、『お前』は死ななくていい。今、泣いている、お前は死ぬな! 『クソ猫みたいなバカ』は死ねばいい。――けど、『お前』は死ぬんじゃねぇ!」
意味が分からない。
「――自分がやったことに反省して反省して、謝って謝って悔やんで悔やんで、頭を抱えて泣いてるようなどうしようもない『大バカ野郎』は死ぬな!」
バカにバカなこと言われた……。
「――つうか生きろ! それがお前の『本心』なんだろ! だったら、生きろよ『バカヤロウ』ッ!」
……もうバカバカしくて、バカバカしくて。
今まで考えてた自分が本当にバカバカしくて。
恥ずかしくて、涙が出て、涙が出て、嬉しくて、嬉しくて――。
「――ッ」
声を上げて泣いた。
バカの首に手を回して。
バカのように、バカみたいにバカなぐらい泣き続けた。
「――ッ」
バカはそんな私をやさしく抱き返す。
『ぎゅっ』、『ぎゅぅぅ』と、抱きしめながらにバカの『鼓動』を聞きながら。……バカの『暖かさ』を感じながら。
バカが私の髪を撫でるのを感じながらに、私はただ泣いた。
『今まで我慢』してた分を全て、吐き出すように泣き続けた。
――気が付けば、『主張』を感じなくなっていた。
『自殺』の【主張】は消えていた。
その代わり、別の【主張】が満ちていた。
『生きたい』という【主張】が辺りを覆いつくしていて。
そんな【主張】の合唱を感じながら、抱きしめられながらに、バカが呟く。
「なぁ、ちょっと聞いていいか?」
「――何よ?」
恥ずかしい泣き声。
だけど、『コイツになら聞かれてもいい』、とさえ思ってしまうこの感情。
「あぁ、すっごく大事なことなんだ……」
「――えぇ、良いわ。言って……」
この『状況』で。
この『状況』で。
――出てくる言葉と言ったら。
私は、心にもなく想ってしまう。
――でも、それは決してあってはならない『種族を超えた』『禁断』のモノで――。
だけど、私の心はそれを望んでいるようで。
『若造』の言葉を待つ。
そして、彼はこう言った。
「……つうか、お前誰だよ! 何で『素っ裸』でッ! しかも『オレ』と『抱き合ってる』んだ? 『猫耳』生えてんじゃねぇかッ!」
《わかりません》、《わからない》、《説明希望》って『三段変化』で、この『若造』はステキに驚いてくれました。
すっごく『真顔』です。
――あぁ、そうだった。
そういえば、そうだった。
さっき【命歌】を【完全詠唱】したから『人型』になってたのね。
……『可愛さ』のかけらもない醜く忌々(いまいま)しい『人型』になってたなんて、私としたことがすっかり忘れていたわ。
「――ちょっ、お、オレはそんな趣味ねぇからなッ! オレは至って『フツー』で、そんな『猫耳』つけた『今が旬』みたいな『年頃』で、『さらさら』の腰まで長い『黒い髪』を靡かせながらに、『甘い桃』の『いいニオイ』を出してるような、『胸も良いカンジ』に膨らんでるけど、『ちょっと小さめ』で形の良さを【自己主張】しながら、『きゅっ』と締まった『太もも』と『形の良い桃尻』で、瑞々しい『自己規制』がやや『エロく』って、『ぶっちゃげ』スッゴく『可愛いコ』に抱きつかれて、ちょっと『電波』で『ヤンデレ』なことを『ツンデレ』気味に言われながらに『泣きつかれ』『言い寄られ』『押し倒され』『いいカンジ』になって『欲情する(萌える)』ような『幼女嗜好』でも『少女趣味』でも『ツンデレ萌え(マゾフィスト)』でも『ヤンデレ萌え(白痴萌え)』でも『猫耳愛好』でもねぇ! ――オレは『フツー』の『健全』な『一般男子』だッ!」
【キレました】
――『意味の顕現』。
「誰が『幼女』で、『胸ペッタン』で、『猫耳少女』で誰が『ツンデレ』で『ヤンデレ』で『自主規制』『自主規制』『自主規制』『自主規制』『自主規制』『自主規制』『自主規制』『自主規制』『自主規制』『自主規制』『自主規制』『自主規制』『自主規制』『自主規制』『自主規制』『自主規制』『自主規制』『自主規制』『自主規制』『自主規制』『自主規制』『自主規制』『自主規制』だってのよ!」
【世の中、金よ!(World is Gold !!)】
「――私はれっきとした『十八歳(結婚適齢期)』だ、この大バカ野郎!」
忘れろクソ。
消えろクソ。
心を一瞬でも許してしまった『記憶(過ち)』と共に消え失せるがいい!
――あぁ、今日はいろんな意味で『厄日』だわ。