39◆◆◆場所:『夜食は鉄板焼きで熱く熱く』……語り手: 【殺人容認主義者(白眼鏡)】
◆◆◆場所:『夜食は鉄板焼きで熱く熱く』……語り手: 【殺人容認主義者(白眼鏡)】
「『大切なモノ』を傷つけたことってないかしら? 『恋人』かもしれないし、『友人』かもしれないし、『親兄弟』や『姉妹』かもしれない。――もちろん、『人』だけじゃないわ。『ペット』や愛着がある『居場所』なんてのもあるかもしれない。程度にもよるけど、『悪口』から始まって、『暴力』に続いて、『壊』されたり、『殺』されたりするような『経験』って無いかしら?」
《あるわよね?》、《【殺人容認主義者(白眼鏡)】教授にも》と、『ロングヘア』が『人を食ったような表情』で尋ねてくる。
私は視界にそれを入れながらに、『鉄板焼き』を焼いているのだが。――いかんな、ここの火力は無駄に強かったり、部分的に弱かったりとやりにくい。
これでは、満遍なく火が通らず、『最高の焼き加減』を出すのは容易ではないな。
「私と食事をしたいなどと、珍しいことを言うと思ったらそんなことか。普段なら気乗りしない話題だが、今日はお前の奢りということなので、答えねばなるまいな」
《えぇ、お願いします》、《教授の立場でなく、『先生自身』の言葉でお願いします》と、『ロングヘア』が『焼き茄子の突き出し』に『左手』の箸をつける。
「あるか無いかと言えば、当然ある。あるに決まっている。生きている以上、外敵に悩まされるのは必然だ。――逆に、内面にも敵がいる。ゆえに、必ず傷つけて、傷つけられて、傷ついてるものだ」
《内面の敵って何ですか?》と、『ロングヘア』が、私の仕草を真似しながら尋ねてくる。
――ほう、『誘導尋問(同調催眠)』で私の深層を覗こうというのか? ……面白い。
「内面とは『自分自身』だよ。例えばだ、お前が人に対して嫉妬する。いや、もっと正確に直接的に比喩を使わず具体例で話そう。――お前は、お前の大切だと思ってる人物に対して、『嫉妬』や『敵愾心』を持ったことはないか?」
「ありえないわ。大切な人がいれば、丸々全て私は愛するわ」
「ほう。ならばいいが。本当にそうか? 例えば、お前の『双子の妹』に対して、全くの『優位』も『劣位』も感じなかったのか? 一瞬でも『自分が優れている』と思った分野はなかったのか? 逆に少しでも、『自分が劣っている』といった部分はなかったのか?」
「何が言いたいのかしら? もっとはっきり言ってくれていいんですよ?」
「簡単なことだ。優位に思った時点で、相手を傷つけ。劣等と思った時点で自分を傷つけている。――どちらの場合でも大切なモノを傷つけている『矛盾倒錯』だ」
「だから、何だというの?」
「一切合財を全部が全部をどうにかしてやりたくなるのさ。現状を認めたくない。『助』けたい。『壊』したい。『殺』したい。『消』したい。今まで押さえていた本性をさらけ出して、自分がどうなっても『適』えたい。――『本能』のままに『理性』を『殺』して、『欲望』のままに『赴くまま』に『力』を『解放』するのさ。たとえ、『望まない力』だったとしてもな」
《そして、決着をつける》と、『ロングヘア』が、的を得たりと言葉を返す。
「そういうことだ。だから、かの『都市伝説(噂)』の『ヒロイン』は行動したんだろう?」
《えぇ、そうね》、《恋は盲目》、《それに気づかず想いを遂げる》と、『ロングヘア』が、『鉄板焼き』の焼き加減を確認する。
――ちなみに、まだ、火は通ってないんだがな。
「いい勉強になりましたわ。本当にいい勉強になりましたよ」
《先生は昔、何を『やった』んですか?》と、『ロングヘア』が相変わらず『人を食ったような』セリフで。
「――さぁな。お前のような【偏食家】ではないから、大したことなどしておらん。至極真っ当な生き方さ」
《ここは禁煙ですよ?》と、『ロングヘア』が煙草を取り出す私を止める。
「じゃあ、何が原因でそんな『重度の喫煙依存症』になったのかしら?」
《知りたいものだわ》と、『ロングヘア』が、自分で焼いていた肉を食べる。
「大したことじゃない。――ただ、『隠し弾』は取っておくタイプなだけさ」
そう。
物語の終盤を決めるのは、『最終兵器(乙女の秘密)』。
――『全ての伏線』を回収するためには使って当然。
『大切なモノ』を守るためには使うのが必然。
どこかの『魔術師』が言ってたな。
――《偶然なんてこの世にあるわけがない》。
その通りだ。
あるのは『理論付けられた(こじつけられた)科学』と『まだそうでない非科学』のみ。
――いずれ『全ての謎は解明される』ものだ。