38◆◇◆場所:『登りきった(ゴールの)後の達成感』……語り手:『若造』
◆◇◆場所:『登りきった(ゴールの)後の達成感』……語り手:『若造』
「よっしゃ、登りきったぜ! さすが、オレ! 『岩壁登り(ロック・クライミング)』の才能もあったんだな。『波紋の壁(過酷な修行)』とか『ビル登り(スパイダーマン)』も目じゃねぇぜ!」
《ガハハハ》と、オレは盛大に、『勝利の美酒』を浴びるように笑ってみる。
《……》、《……》、《……》と、『猫嬢』が『RPG』で『沈黙』にかかったようにだんまり顔。
「何、ふてくされた顔してんだよ」
「……別にそんなんじゃないわよ」
『猫嬢』が相変わらず『むすっ』としてる。
なんか機嫌が悪いっていうか、眼が合うと視線を外される感じ。
……なんか変なモンでも食ったのか?
まぁ、考えたところで、『クソ猫』の気持ちはオレにはわからん。
「ほら、早く行かねぇと、『メイド』が心配するぜ? 先に出口についちまって、探し回ってるかもしれねぇし」
《さっさと脱出だぜ》と、オレは、『大脱出ゲーム』とか『迷宮探索』を終えた気分で、景気良く言ってみる。
「――なんでよ。どうしてよ? 何で、アンタはそんな『楽観的』なのよ……」
聞かれた。
苦虫を噛み潰すようなニュアンスで、皮肉を込めて、吐き出すように。
「何が言いてぇんだ? 別に、お気楽ってわけじゃ――」
「うっさいわよ! こっちの気も知らないで。……勝手なことばかり言って。――アンタといると、調子が狂う!」
また猫がダダこねだした。
こいつは『迷惑かける』、『すぐ怒る』ってのが『デフォ』なのかもしれない。
「あぁ、もぅ、ホント、クソネコだな。テメェが考えすぎなだけだ。悪いように、『マイナス』にってな。もう少し、『プラス』に考えたらどうよ? ――そのほうが楽だぜ」
もう『和解』したいもんだぜ。
いい加減疲れた。
……もうケンカするのも飽き飽きだぜ。
ぶっちゃげ、ケンカしてて良かった試しはねぇし。もっと大人の対応で行こうじゃないか。それが紳士の嗜みで、『メイド』の頼みでもあってだな。
「……うっさい! アンタみたいに何も考えてないバカとは違うのよ!」
広い心を持つんだオレ。
『明鏡止水』の境地で、寛大に受け入れてやるのだ。それが『武士道』を受け継ぐオレの心の広さだと嗜めながらに。
「片意地張ってるヤツのほうがバカじゃねぇのか。もっと自分に素直にだな」
そう、偉いぞオレ。
文面は直球ど真ん中の抗議だけど、語意はやさしい、非常に『デリケート(繊細)』な『オブラート(oblaat)』に包みまくりの美声で。
そうだぜ。
キレイにまとめて、このトンデモ祭りを終わろうじゃないか。
――ぶっちゃげ、オレ今日一日で何回死にかけたかわかんねぇぜ。
まるで、『同人ゲーム(Kanoso)』の『50(フィフティ・):50(フィフティ)』の『死亡率』を掻い潜ったような錯覚がががが。
もう、一生分、死にかけるぐらいの『超展開』だったんだぜ? もうそろそろ終わってもいいはずだろ。
……一作品の『第一話』でここまで何度も死にかける『主人公』って普通はいねぇぜ?
ぶっちゃげ、『元の世界への戻り方』ってのは、後でじっくりなんとかすればいい。
だから、終わろうぜ、きっちり、キレイに『脱出成功』で区切りをつけてだな……。
「って、クソッ!」
何かが光った。
そう思った瞬間には動いてた。
つうか、さっきまでの早く終わりたいって気持ちは、動いた後の『走馬灯』だったのかもしれない。
『レィザー』がオレの胸に吸い込まれながらに、オレが突き飛ばしてた『猫嬢』がこっちに気づきながらに、オレの服にこんがりと穴が開きながらに……。
ちょっ、ナニコレ。
『地球人最強』とか『エリート王子』が『極悪宇宙人』の『怪光線』に『串刺し』にされたような光景で。
えっ、ちょっ、オレって死ぬの? 『第一話』でいきなりこれって何?
『精一杯の否定』を込めて、オレは叫んでやる!
「うぐぉ……」
――声出てないし。
意識ははっきりしてるけど、もうヤバイと思う。
身体が崩れて、倒れながらに、床にドサって――。
「た~げっとニ命中」
機械音声。
どうやらあの『殺人ロボ』らしい。
「何やってんのよ! 血っ? 血が出てるじゃないッ!」
「……ぐっ、はっ、はぁ……」
おいおい。
そんな顔するんじゃねぇぜ、ハニー。
「ごばっ、ごほっ。ぶ、ぶじ……だった……」
マジに声が出ねぇんだけど。
胸からは血が出てません。――だけど、口の吐血が止まらねぇ。
「……アンタ、私を庇って……」
おいおい。
そんな顔するなよ。
クソ猫は、バカみたいに『キンキン』声出してりゃいいのに。
「た~げっとAハ、虫ノ息。た~げっとAハ、虫ノ息」
「A3383ーTKカラ、全機ヘ。A3383ーTKカラ、全機ヘ」
「タダチニ、ココヘ、集結セヨ」
「ヤルベシ、ヤルベシ、ヤルベシ」
アホな機械がカタコトで何言ってやがるんだ。
機械が人に迷惑かけちゃいけないんだぜ。
『ドラえもんの大長編』見て出直してきやがれってんだ。
「ごぼっ、早く.……に、に」
『ニニンがシノブ』です!
なんて『ギャグ』も言えねぇぜ。
ダメだ、意識がなくなって……。
「イヤよっ! アンタをほっといてなんていけない!」
『猫嬢』が叫んでる。
なんか胸元で叫んでやがる。
ついでに、胸元を踏みつけてくれる。
……だけど、オレの耳、なんか……聞き、取、りづらいんだぜ?
――不甲斐ねぇ。不甲斐なさ過ぎだぜ。……オレを頼ってくれた『メイド』の頼みも、今俺を頼ってくれてる『猫嬢』の頼みも……聞けないなんてよ。
――最期に一言だけ、言わせてくれ。どうせ、死ぬんだ、ちょっと言わせてくれよな。
「うっせぇ! てめぇも、巻き添えになっちまうだろうが……っ! さっさと、行けよ! ――ぐあっ、早く行けって言ってるだろうが!」
……もう無理。
なんで小説って『三点リーダ』を二個繋げなきゃならないかってぐらい無理。
死にそうなんだから、『三点リーダ』一個だけで、表現させて欲しいもんだぜ、『漫画』とか『ノベルゲーム』ってそれが普通じゃないかって『哲学』しちまうぐらいにもぅ……。
「ヤルベシ、ヤルベシ、ヤルベシ」
《我ラノパゥワ~ヲ見セツケテ殺ルノダ》、《我ラノパゥワ~ヲ見セツケテ殺ルノダ》、《我ラノパゥワ~ヲ見セツケテ殺ルノダ》、《我ラノパゥワ~ヲ見セツケテ殺ルノダ》、《我ラノパゥワ~ヲ見セツケテ殺ルノダ》、《我ラノパゥワ~ヲ見セツケテ殺ルノダ》、《我ラノパゥワ~ヲ見セツケテ殺ルノダ》、《我ラノパゥワ~ヲ見セツケテ殺ルノダ》、《我ラノパゥワ~ヲ見セツケテ殺ルノダ》って、声が聞こえたような気がした。
耳がよく聞こえない。
なんかすごい振動がしている気がする。
きっと、また『ゴキブリ』のように湧いてきているのかもしれない。
「――ッ」
声が出なかった。
《早く、行け! クソネコ》って言ったはずなのに。
――オレの声は出なかった。
そう感じたのを最期に、意識も途切れ――。




