37◆◆◆場所:『夕食でもやもやを聞いてみる』……語り手: 【解体死体(セミロング)】
◆◆◆場所:『夕食でもやもやを聞いてみる』……語り手: 【解体死体】
「ねぇ、『やさ男(お兄ちゃん)』は死にそうな人を助けてくれたことある? ぅーん、回りくどいかな。直球投げちゃうけど、『なんで』私を助けてくれたの?」
《ぶはっ》、《い、いきなりなんだよ!》と、盛大に『やさ男(お兄ちゃん)』が驚いてます。私が頑張って作った『特売で固めたぶた汁』を思いっきり、吹いてます。
……あぁ、せっかく『なけなし』の『家計を削ったお肉』だったのに。
「なんだよ、突然。オレの『ぶた汁』返せ! 何で助けたかって、前言ったじゃねぇかよ?」
《もぅ、『思春期』のコは『お義父さん』わからん!》って、『やさ男(お兄ちゃん)』がむくれてます。
うん。たしかに聞いた。
でも、納得できないこともあるもんだょ。
「――うん。そうだけど、たしかに言ってくれたことは今でも覚えてるょ。だけど、なんでなの?」
傷だらけになってまで助けてくれたんだろう。
――『右手をメスで』貫かれて。
――『左手をナイフで』斬り抉られて。
――『お腹もメスで』引き裂かれてまで。
なんで、私なんかを助けてくれたんだろう。……ううん。私『なんか』って言ったら、また『やさ男(お兄ちゃん)』に怒られちゃうかもしれないけど。
だけど――。
「わっ、わっ、あわわわわわわわ」
盛大に頭を撫でられた。
髪の毛を『がしがし』ってやられた。
「ほら、『子供』が難しいこと考えんじゃねぇよ。もう過ぎたことだろ。イチイチ悩むほどのことじゃねぇよ。」
《もう、最近のコは!》と『やさ男(お兄ちゃん)』が『ぷりぷり』照れくさそうに。
「それに簡単なことだぜ」
視られた。
私のことを視られた。
眼と眼があった。ちょっと恥ずかしいょ。
けど、『やさ男(お兄ちゃん)』の眼で視てくる。
――あの夜にも視た【殺人視考】で私を視ながら答えてくる。
「知り合いが傷つくのって視たくねぇだろ?」
《そんな答えじゃ『女子高生(家出少女)』は許してくれないか?》と『やさ男(お兄ちゃん)』が皮肉っぽく。
「ううん。十分だよ。十分納得したょ。きっと、そうだと思ぅ」
たぶん、そうだ。
だから、物語の男の人は助けたのかもしれない。
それに、【解体死体(かいたい/シタイ)】も助けたのかもしれない。
――ホント、助けるのは難しいもんだょ。
『××』は簡単なのに――。