35◆◆◆場所:『某駅前の石像(釣り人)前で』……語り手:【Doing(オタクなDQN)】
◆◆◆場所:『某駅前の石像(釣り人)前で』……語り手:【Doing(オタクなDQN)】
「『究極の選択』ってやったことあるか? そうそう。『ウンコ味のカレー食べるか』、『カレー味のウンコ食べるか』ってやつ」
「……お前、『藪から棒』に何言ってんだ。というよりむしろ、この状況でそれはない」
【敗戦主義(黒眼鏡)】が『たこ焼き』持ちながらに、すっごく嫌そうに答えやがる。
普段、他人のことを『お前』って呼ばないコイツのことだから、かなりキテルな……。
オレはその隣で、奴が持つ『たこ焼き』を食べてるんだが。いやぁ、『たこ紅』の『たこマヨ』は『小麦』と『天かす』の比率が絶妙でだな。これはクセになっちまうぜ。ついでにこのカレー味は隠し味。
「――わりぃわりぃ。まぁ、よくある話じゃねぇか。どうしようもない状況で、どうしようもない答えを強いられることって。しかも、その答えがどっちを選んだとしても、『酷い結果』にしかならない。たとえ、『選んだ答えが正しくても』、もう一方の『選ばれなかった方』が『酷ぇ後味を残す』って場合とかよ」
《どうせ、君の事だ》、《まだ続きがあるんだろ?》と、【敗戦主義(黒眼鏡)】が、『分かったような眼』で視てきやがる。
「ハッ、相変わらず『鬱陶しい眼つき』だぜ。じゃあ、お言葉に甘えて続けさせてもらうが、『究極の選択』って言うのは、さっきの『冗談』ばっかじゃないだろ? 例えば、『やらないとやられる場合』、『大切な奴を守るためには自分が死ななきゃならない場合』、『やりたくない仕事をして生活を安定させるか、夢を追いかけて悲惨な人生を送るか』、『恋人を取るか、不注意で妊娠させた浮気相手を取るか』、『耐えられない悪を見過ごして、自分の出世を取るのか』。――まぁ、究極には『死と死のどちらを選ぶか』なんだがな」
《あぁ、よくある話だよ》、《で、僕にどう答えて欲しいんだ?》と、【敗戦主義(黒眼鏡)】が相変わらずの『まぁ、仕方ない』って態度で。
「てめぇの答えが聞きたい。それだけだぜ」
「何言ってるんだ。君は自分で答えられるだろう? 僕みたいな『フツー』のヤツにそんな『永遠の命題』の答えを求めなくても、よく知ってるだろ?」
「あぁ、知ってるさ。『細く長く生きる』ような『フツー』の連中の答えは知ってる。――だけどよ、てめぇみたいに『ぶっ飛んでる奴(イカレた奴)』の答えは知らないんだよ」
《君に比べたら『フツー』だよ》と、【敗戦主義(黒眼鏡)】が呆れ気味に『たこ焼』をほうばる。
「ハッ、そうだぜ。オレは、てめぇらが言うような【アレ】な奴なんだろうな、きっと。――だから、逆に聞きたいんだよ。『やって(Do)、やった(Did)、やりつくした(Done)』、何を『食う(やる)』のも『寝る(やる)』のも『殺る(やる)』のも『犯る(やる)』のも『遊ぶ(やる)』のも『盗る(やる)』のも『狩る(やる)』のも『走る(やる)』のも『呼吸』ぐらい『同レベル(一緒)』にしか感じられない『オレ(フツー)の答え』じゃなくって、『【アレ(てめぇ)】の答え』が聞きてぇんだよ」
《これだから、【Doing(ただやり続ける)】って呼ばれるんだ》と、【敗戦主義(黒眼鏡)】が、『わざとらしく(オーバー・リアクション)』で頭を振りながら溜息しやがる。
「てめぇだから聞きてぇんだよ。【知ってはいけない事件(あの都市伝説)】の当事者だからな」
「――お前は《『一人の犠牲で、他を救うか』、『一人を救うために、他を犠牲にしたか』どっちの選択したんだ?》と言うんだろ?」
ちっ、先読みしてきやがった。
もっと正確に言えば、『オレのセリフ』と『黒眼鏡の言葉』が『同時』に『ハモった』。
「――まったく嫌な奴だぜ」
……おいおい。
『また』ハモらせやがった。『アクセント』まで『同じ』だぜ。
相変わらず、コイツのやり口はうざってんぇ。
――こんなだから、『心が読める』って『都市伝説』が生まれちまうんだ。
「ハッ、さすが『暴君(敗線が視える)』ってヤツか? クソみたいに『猿真似』しやがって」
『また』真似してくる。
それも、今度はオレの『仕草』までも『真似』てくる。
「じゃあ、答えも簡単だよな? すぐに答えてくれるよな? オレの心が分かってるんだから、キレイに答えてくれよなぁ! いつもの【結果と方法は既に視えてる】ってヤツでよ!」
おいおい、まるっきり『同じタイミング』かよ。
まるっきり『鏡写し』に返してきやがる。
ちょっ、これ不味くねっ? なんか周りにギャラリー集まってきてんだが……。
「――たしかに『パントマイム(見世物)』の『大道芸』にしか、見えねぇよなッ!」
『また』ハモった。
まるで、自分が自分に言うように、鏡がそこにあるように、自分の『心を見透かす』ように。『同じタイミング』で答えが返ってくる。
「終わりにしよう」
そうだ、終わりにしようぜ。
「答えを聞かせてくれよ」
それでこの『茶番』は終わりだ。
「――そんなの答えるわけないだろ」
おいおい。
ここまでひっぱておいてソレかよ!
ちなみにオレは何も喋ってねぇ……。つまり、『奴のセリフ』ってことで。
「バカに付き合ってたら恥ずかしいな、たく。――それと、僕は君らになんて呼ばれてるっけ?」
「ハッ、そうだったな。忌々しい。てめぇは、ただの【失敗主義者】だぜ」
そう。
答えなんてそんなもんだ。――何をやっても、答えは失敗。
『勝負に勝って試合に負ける』、『勝ったとしても負けた相手から恨まれる』、『チームで勝っても、一部の仲間から妬まれる』、『何をやっても何かの失敗が付きまとう』、『――それをいかに最小限でカバーするかが重要』って戦略。
《……それに》と、【敗線主義(黒眼鏡)】が再び『たこ焼』を食べながら、呟く。
相変わらずの『分かったような眼』で『世界を視ながら』答えやがる。
「どんな答えを選んだとしても、『当事者が納得』すればそれがベストさ」
「……。ハッ、違いねぇ。たしかにそうだ。そうだとも。世の中なんて『自己中』な連中ばっかだ。――自分が好きで好きでたまらない『偽善者』ばっかだぜ」
オレは盛大に笑っとく。
獰猛に牙を剥いて笑い飛ばしとく。
「さて、ようやく『バカ』と『お姫様』のお出ましだ。今日も盛大に楽しもうぜ」
そう。
楽しんだもん勝ちだ。
どんな『糞味噌』みたいな状況になっても、ウジウジ悩んでても仕方ねぇ。
――『漢』なら責任持ってやってりゃ、何があっても後悔なんてねぇんだからよ。
《ごめんごめん、掃除当番が長引いちゃって》と、『ツインテール(バカ)』がバカっぽく。
《待たせてごめんね、手伝ってたら……》と、『セミショート(お姫様)』が心底、ごめん。
そんな答えも一つの答えだぜ。
――どんな答えも、答えには違いねぇんだからよ。




