03◆◆◆場所:『CDや本が雑多に詰まれた情報部』……語り手:【歩く騒怨(ヘッドホン)】
◆◆◆場所:『CDや本が雑多に詰まれた情報部』……語り手:【歩く騒怨】
『ぴっ』という電子音。
「『ぴっ』、いやいや、私は言ってやったんですよね。聞いて――」
「『ぴっ』、『地球は滅びる』んですよ! このまま罪を重ねると――」
「『ぴっ』、『三分間クッキングーーーッ!』、今日は、卵を使った簡単料理を――』
『ぴっ』という『電子音』がする度に目まぐるしく番組が変わる。
――どれも大したことない『お茶の間番組』。
『身内ネタ』で、『芸人いじり』で、『マンネリ』な『バラエティ』や、『医食同源』の『健康談義』に花を咲かせてたり。
時間帯からいえば、『ランチを準備』している主婦層を狙っているのか。
「――コレといって、『面白そうな番組』やってないか。まっ、やってたとしてもどうせ、『演出された』ものなんだろうけど」
ケータイから伸びた右耳のイヤホンは『ユーロビート』、別の機種のケータイから伸びた左耳のイヤホンは『世界のニュース』を多言語で、首にかけた『DJ顔負け』のゴツいヘッドホンは、ありとあらゆる『不思議な電波』を受信中。
いつもの、いつもの如くの情報部の風景。
【知ってはいけない事件(あの都市伝説)】以来、これといった『異常事態(シリ/めつれつ)』は起こらない。
『世間的』にいえば、平和な毎日。
――まぁ、『気づいた見方』だと、毎日が矛盾に満ち満ちているのは『言うだけ無駄(IWANU・GA・HANA)』なおかしな状況だけど。
「――どれもランクが低いね。『グリードアイランド』でいえば、『Dランク』、『町内会の福引』でいえば『ティッシュ箱』ぐらい。『普通の殺人』なんかじゃなくって、『新伝綺』な展開を希望するんだけど。――『吸血鬼騒ぎ』や『食人騒ぎ』、『死ねない少女』や『国家転覆』なんてのも捨てがたい。プラスな話題だと『火星人がいた』とか、『タイムマシン』や『どこでもドア』完成とかあれば、少しは面白くなるかもしれないけど」
こうなったら、『暴君』でも、からかいに行こうか。それとも、『法治(放置)主義(オタクなDQN)』と『萌え』について語り合おうか。いや、『電波な管理者』に【アレ】な昔話を聞くのも悪くないけど……。
「『ぴっ』、はい、今日も愉快にコンニチわ~。トンでもない事件が起こりましたよ!」
いつも『主婦に大人気な司会者』が、何やら意味深にジェスチャー交えて話す話す。
「……へぇ、こりゃ面白い記事になるかもね」
直感がした。
他のメンツに会うのは止めよう。この『ニュース(ゴシップ)』をネタにしよう。
陽気なスタジオから司会者がこっちの意図なんてお構いなしに、『印象操作』を大々披露。
「甲斐性なしのダンナを愛想笑いで見送って、ほっと一息なお嬢さん方に送る、癒しのオアシス。他人の不幸は蜜の味」
「ちょっと聞いてよ、ご近所で『話題の都市伝説』」
「今日も取っておきのネタを、お届けしまーす」
「お嬢さま方……。最近、あった季節はずれの台風のことはご存知ですか?」
「そうそう……あの『大惨事』を起こした、そうアレですよ。『新聞』や『テレビ』でよくやってたでしょ?」
「今も他局じゃ、よくやってるあの『ニュース』ですよ」
「よくやってるって、そりゃあ昨日の今日だから当たり前。今や誰もが知ってるあの『災害』」
「ちょっと、聞いてくださいよ……。なんと、そんな『HOTでBAD』な災害に『都市伝説』が舞い込んだ」
「まさか……って思うでしょ? おっと、あんまり夢中になりすぎて、テレビに噛り付いたらダメですよ? どうせ、『家のローン』も終わってないんだろうからさ。これ以上増やしちゃダメ。おっと、これ以上焦らすなって、『監督』が腕をぐるぐるしてる」
「では、お待ちかねの『都市伝説』をお届けします」
「ミステリー特番! 『台風の中に巨大な眼を見た!』」
場面が変わり、倒壊した建物や鉄骨が剥き出しになった瓦礫の山が広がった。
「はぁ~い、現場の『丸々丸』です。見てください、まるで『絨毯爆撃っぽい』空襲にあったかのような光景が広がっています。建物は全て倒れ、多くの住民が今なお下敷きになっているとのことです」
「ちょっと、住民の人に聞いてみましょう」
仕事の疲れを『化粧でごまかしてそう』な『取材記者』が、近くの中年に声をかけた。
「えぇ……、そりゃあもう、突然のことでしたわ。耳鳴りがしたかと思うと、突然空が黒くなって……。気づいたら街がこんな風になって、えらい驚きましたわ」
「実にひどい状況だったんですね……」
『取材記者』が『社交辞令』たっぷりの『お悔やみ』をかける。
「――なんだ、いつもの『災害レポート』ってカンジか。見て損したかも」
と、『四つの音源』に耳を傾けながら、部室の情報に聞き耳を立てながら、会議に使う資料をまとめつつ、一人ごちたそのとき、被災現場に異変が起きた。
「きゃっ! い、いきなりなんですか!」
画面を見れば、かなり歳のいった老人が『マイク』にしがみついている。――その顔は鬼気迫るもので。
「わ、ワシは見たんじゃ……。真っ黒な雲の間から、でっかく、『おそろしい眼』が、こっちをギョロっと睨みつけて……」
「ほ、ほら、今、担架が来ますから!」
『アシスタント』の『バイトくん』が、マイクから老人を引き離し、駆けつけた『救急隊員』に引き渡す。
「乗ってください!」
「ええぃ、離さんか! ワシは至って、正常じゃあああーー! ワシが見たのは本当なんじゃあーーーっ!」
老人は暴れるのを止めない。周りの静止を振り切り、カメラへがぶりより、必死に訴えかける。
「あぁ、ワシをそんな眼で見るんじゃない……。や、やめてくれ。……お願いだから止めてくれーーーっ!」
奇声と慟哭をあげる老人が、とてつもなく屈強な『熊のよう』な隊員に縛られ、運び去られていった。
辺りに残るのは、どんより不穏な空気。
「ちょっ、アンタいつまで撮ってるの! カットよ、カット。早くカメラ止めなさいッ! こんなモン、『生で流せる』と思ってるの! 『このアマチュアがぁあ!』」
叫ぶ(がなる)『取材記者』が、手で『カメラ』を遮ると共に、映像が途切れた。
数秒の間、『ただいま電波の調整中』という『虹色の画面』の後、陽気なスタジオが映る。
「――はい、以上、都市伝説でしたー。今のは『偶然』、我が番組が、『某国営テレビ』から入手した『VTR』です」
『偶然』と『国営』ってところが、やたらとアクセント強いな。何かの宣伝?
「住民の血走った眼、見ましたか? よっぽど怖い思いをしたのでしょうねぇ~。黒雲の中の『謎の眼』が恐かったのか? それとも、誰からも信じてもらえないことが怖かったのか? さぁ、どっちなんでしょうかね? 青筋立った『取材記者』のお姉さんも、かなり恐かったです。あぁ、コワい……」
『自演乙』、『アンタのその演技力と印象操作のほうが恐い』って、『Web 2.0(ニコニコ動画)』ならツッコミ入るな、きっと。
「さて、今の話ですが、他にも『眼を見た』という被災者が大勢いるようですが。――えぇ、専門家の『三角三角』さん、どういったご意見をお持ちでしょうか?」
司会者が、悲痛な面持ちで『見識者』に目配せ。
それを合図に渋い顔をした『中年』が、画面に映し出された。
「はい、あれは……。『集団パニック』の一種ですね。突然の災害を受けて、心身が衰弱しているところへ、誰かがそれらしいことを言うと、本当だと受け取ってしまう。一人が言い出すと、我も我もと、口をそろえだす。よくあることです。そもそも、この時期は大気の状態が不安定で、今回のような突風が起きる可能性は極めて高い」
「……なるほど。たしかに、そう考えるのが『自然』ですね。『自然災害』なだけに」
一瞬、スタジオが凍りついたような気がするけど、『スルー推奨』ってことで。
「しかし、ありきたり過ぎて、実にオモシロく無い。もっと『超能力者』だの、『宇宙人』だの、『未確認生命体』だの、『閉鎖空間』だの、『奇妙キテレツ摩訶不思議』なことを『KYでツンデレ』気味に言ってくれないと数字出ませんよ! ほら、『監督』も『×(カエレ)』ってしてる」
「なっ、なんだとっ! 私は科学的にだな。『常識』と『見識』に基づいて……」
「――『科学』なんて、『民主主義っぽい多数決で決めた仮説』みたいなもんでしょ? それじゃ、メジャーな話過ぎて、『意外性が無い』じゃない。はいはい、それでは、毎回恒例、『視聴者アンケート』ッ! 今回、『クビを切られる出演者は誰?』」
怒り心頭の『見識者』をガン無視しながら、番組は進み、でかでかとテロップが『1、司会。2、記者。3、見識者。4、監督』と告知し、『視聴者アンケートの結果は、CMの後スグ』と変わって、CMになった。
また昼間っからトンでもないニュースやってるもんだね。よく出来た『編集(演出)』だ。こうやって『ご近所おばさんネットワーク』で、ウワサは拡大してくんだね。
――まさに、『.hack(感染拡大)』。
『マイナスイオン身体に良い』、『スカラー波スゴい』、『ゲルマニウムすげぇ』なんて『信憑性』だけで『根拠のない疑似科学』の発生源なんて大体そんなもんだし。
「――それにしても、『おそろしい眼』か」
『左右のイヤホン』や首の『ヘッドホン(トレードマーク)』からも、他局や世界の電波からも似たようなことが流れてる。
この国じゃ、あの街だけみたいだけど、世界でも、似たような災害が起こったみたい。
「『巨大な眼』、『空に浮かぶ眼』、『壊れてしまえという主張』に『獰猛な咆哮』か。――集団ヒステリーって線もあるけど、【ウワサがうわさを呼び、噂を元に都市伝説を紡ぐ】って状況」
【知ってはいけない事件(あの都市伝説)】と似たような兆候だね。
噂になりつつある? いや、もう既に『都市伝説(噂)』になっているか。
「どっかで【都市伝説好きのコ(ショートヘア)】が話してそうだね」
――たしか、【解体死体】が言ってたっけ。
【都市伝説が現実に起こるんじゃないょ。『現実が劣化』して、『尾ひれがついて』、『都市伝説』になるんだょ】
――まぁ、今回は『私たち』は部外者っぽいけど。
「話のネタぐらいには、なりそうかな」
それが『結論で終わり』とばかりに、『キンコンカンコン』とチャイムが鳴る。
それは『昼休み終了』を告げ、午後の『授業を開始』する合図。