23◆◇◆場所:『某猫嬢邸前』……語り手:『若造』
◆◇◆場所:『某猫嬢邸前』……語り手:『若造』
「うわっ、ちょっ、 たんまたんまたんま! 『緑色の悪魔』みたいな『見た目と違って、実は辛い』ヤツがオレを、オレを、オレーーーーーーーッ! ふぐぅぉぅっ!」
思いっきり、地面に『タッチダウン(投げ降ろ)』された。
嗚呼、『こんなに乱暴』にされるなんて。
――『ラグビーボール』は偉大です。
《野郎共、点呼!》と、オレを『タッチダウン』した作業着の男が号令。
《番号!》、《一》、《二!》、《三ッ!》、《四、五、六、七……》、《……四十七、四十八、四十九!》と男たちは、『四列縦隊』で、まるで『軍隊』みたい。
「よし、全員いるな。各班、状況を報告!」
「A班、一階の全物品の点検及び、差し押さえを完了」
「B班、二階の全物品の点検及び、差し押さえを完了」
「C班、別館および『書庫』の全物品の点検及び、差し押さえを完了」
「D班、全館の稀少品の査定完了」
「E班、全敷地の測量及び、査定完了」
「G班、屋敷自体の点検及び、査定完了」
「F班、A班よりG班のサポート完了」
「以上、報告は完了であります」
「よし、『親仁』、作業完了いたしやした」
と、最後の男から最初の男へと『たすき』が繋がれた。
《親仁って誰よ?》って、ツッコミがぎりぎり追いついたが、場の空気は、全然オレのツッコミを超える速度で進むもので、
「……作業時間、『二十二分二十二秒二二』。うーん、『よくできました(ビューチフォー)』」
『太い猫(バーマン?)』がそこにいた。
『白い毛並み』に、『顔と足と尻尾』が『黒い』、ふさふさの猫が『越後屋』とか『任侠』とか『信頼こそ正義』って、【自己主張】を放っている。
「『時間通り』とは、すばらしいにゃ。――『時は金なり(タイム・イズ・ミャネー)』。『時間を守る』ことは『至宝の宝石(当然の報酬)』にゃ。――いやいや、『時間を守る』ことも、大事だけど、それ以上に、『約束を守ること』こそ、すばらしいにゃ。――この世知辛い世の中、『信頼こそが全て』」
【清く、正しき信頼を築くことこそ、『仁の道(人の道)』】
「約束破って、『人様の信頼を無くす(踏み倒す)』など、『愚の骨頂!』。――それは、『仁道(人道)』に反することにゃ。相手に『付け入るヒマ』を与えないように、『徹底的に説明の義務』を果たして納得させるニャ! 『自分(手前)の非を無くす』ように、徹底的に! ――『義務を果たした』ら、どうするかわかってるにゃ?」
《イエス、マイ親仁!》と『一丸』の調教(訓練)された男たち。
――『でっかいスゴい』です。
「そぅ! 『権利を主張するにゃ』! 『説明の義務』は、既に果たしてある。儂らには、『何の非も落ち度も』にゃい。――どんな『酷い手段』になろうと、儂らが『戸惑う』ことも、『心を痛める』ことも無いにゃ。――なぜなら、既に、『十分、説明はしてある』にゃ。『義務を怠る』と、どうなるかは『既に相手も知っている』にゃ。そうと分かってるのに、『信頼を裏切る』、『奴が悪い』! そんな外道には、何の『同情』もする必要ニャい。――法による人権は、『弱き誠意ある人(正しき人)』のため!」
【信頼を裏切る『腐れ外道』は『悪・即・斬(対・象・外!)』】
「御前達、『外道』に徹底的に『返済の義務』を果たさせるにゃ!」
「イエス、マイ親仁!」
「御前達、『仁道(娑婆)』を行く限り、『自分の生き方』に胸を張るにゃ! 『説明義務を果たして』、『返済義務を果たさせろ』!」
「イエス、マイ親仁!」
圧倒的な、【自己主張】。
――圧倒的な『正義』・『仁義』・『信頼』・『努力』・『勝利』・『共感』が、そこに収束。
【仁義を持って、取立てよ(Collect by Justice!!)】
――『意味の顕現』。
太い猫が唸る度に《イエス、マイ親仁!》で加熱する、異様な男たちの雰囲気。
《な、なんだ、コイツら……》、《新手の新興宗教か?》と、オレの『ツッコミ回路』が動き出す。
『フル回転』しまくっての、『危険信号』。
――これはヤバイです。
ヤバイです。ヤバイです。ヤバイです。……何回も言えそう。
「……ぺっぺっ、もぅ、いきなり何なのよッ! 土に埋まって、私の『自慢の毛並み』が汚れたじゃないのよ!」
と『猫嬢』が、『たけのこ』みたいに地面から顔を出す。
って、『タッチダウン』で埋まってたのかよ!
なんて、『貫通力』。
《イタタ……》、《私も、突然落とされて、お尻が痛いです》と、『メイド』が、『お尻を撫でる』のが、『ややエロい』ぜ、なんか。
《これは、失敬、失敬》と『太い猫』が《説明ですか? 喜んで!》と、『にんまり』顔。
……顔の肉のせいか、目がめっちゃ『細く見える』のはキノセイ?
「突然の断りも無く、申し訳ないにゃ。まぁ、こっちも『仕事柄』仕方ないことにゃんで、勘弁してやって欲しいにゃ」
「勘弁も何も、いきなり、こんなことしてタダで済むと思ってるの? 場合によっては、覚悟はできてるんでしょうね!」
「いやはや、覚悟はどうのって言われてもにゃ~。それは、こっちのセリフだがにゃ? ――オーケー、ミス『猫嬢』?」
珍しく、『猫嬢』の『本当の名前』。
……あれ、『猫嬢(通称)』じゃなくって、『真名』のほう?
――もしかして、この世界って、『フルネーム(ちゃんとした名前)』で呼ばれるのって、『特別』なことか?
「だから、それが『何のことだかわからない』から聞いてんのよッ! 『疑問文を疑問文で返すな』って、習わなかったの? これだから『教養の無いヤツ』はダメね」
《あぁ~……》と、太い猫が、『長い声の猫』のように鳴いて、『がっくり』と毛が、しぼんで、『スリム』に見えるほど肩を落とす。
「こちらとしては、『穏便』に済ませようと思ってたんだにゃ。……どうやらよく状況が分かってないらしいにゃ。困ったにゃ、【仁道(正義)】を通さにゃならんからにゃぁ~。――おい、アレを」
《へいっ、親仁。こちらに》と、『最初の男(作業員リーダー?)』が、『頑丈』、『大事です』って【自己主張】をする『トランクケース』から『羊皮紙』を手渡した。
《オッフォンッ》と、太い猫は『咳払い』しながらに、『大げさ』に『羊皮紙』を拡げた。
「ミス『猫嬢』。――そして、その僕の『飼い人』よ。よく見るにゃ」
「……ん、何だこりゃ?」
《うーん、何かの契約書みたいですね》と、一緒に覗き込んでた『メイド』が答える。
あぁ、たしかにそんな気がする。
『この世界の文字』か? ――さっぱり読めない。
……だけど、『取立て』、『契約』、『約束』、『守ってよね?』、『守らないとヒドイよ?』って【自己主張】を感じる。
もしかして、『鉤カッコ文字』が多いのって、【自己主張】が際立ってるせいってヤツか?
「えっと、何々……」
【私こと、『猫嬢』は、『借金取り(トサン・ハサン・ニガサン)』から、『金佰萬(ひゃくまん(1メガ))Cat』をお借りします。――『金利は複利』で、『十日ごとに三割』。返済日は、『毎月の頭に徴収』。一度でも遅れると、『全額の一括返済』及び、『全財産の差し押さえを認める』
by 『貴方の暮らし』と『信用』を支える『仁道金融』】
『……』、『……』、『……』と、オレは一人で、『沈黙アピール』狙ってる。
いや、『絶句』のほうか。
――またもや『超展開』の予感。
《……何よ、これ?》、《全然まったく知らないんだけど》と、『猫嬢』が不機嫌です。
「儂がその、『借金取り(トサン・ハサン・ニガサン)』だにゃ」
「……はぁ? そうじゃなくって! 私は、こんなのにサインしたことないって言ってるのよ!」
「『ノンノン』、言いがりは、困るにゃ。現にこうして。『借用書』があるにゃ。従ってもらわないと困るんだがにゃ~」
「私は、知らないって言ってるでしょうが! 『知らないものは知らない!』、こんなワケわからない『紙切れ』で、見ず知らずのアンタに、『お金なんて払えるわけない』でしょうがッ!」
「……『ノン』。ミス『猫嬢』が知らないってのは困ったにゃ~。本人が知らないってことはどういうこっちゃにゃ? ああ、困った、困った。本人が知らにゃいってのに、『借用書』がある。――これはどういうこっちゃにゃ?」
《フムフム、ホムホム》と、『借金取り』が、『ウサギ探偵局(推理番組)』の『写楽先生(名探偵)』みたいな『名推理』を開始。
「フゥ~ム、フムッ! そうか、なるほど、わかったにゃ! そうか、そうか、それだったら『辻褄が合う』にゃ」
『フンッ、何がよ』と、『猫嬢』が『あるはずがない』とアピール。
『聞きたいにゃ?』と、『借金取り』が勿体ぶって、こちらの『興味』を引こうとアピール。
「そりゃ、聞きたいに違いにゃい。なぁ~に、『答えは簡単』だにゃ。――『猫嬢』の代わりに『誰か』が借りに来たってことだにゃ?」
《私の代わり?》、《……一体、誰がよ?》と、『猫嬢』は『記憶にございません』と不機嫌。
《お嬢様の『名前を語る』なんて、トンデモない奴ですね》と、『メイド』も不機嫌。
「おい、『金を借りに来た輩』は、どんにゃだったにゃ?」
「……へいっ、『窓口の報告』では、今から半年ほど前に、『女が借りに』来てます。その日から頻繁に、店に入り浸ってますぜ。――服装は、『目撃証言』の『全て』が『侍女服』だったと記録してます」
と、『リーダ格』の男が告げる。
……あれ?
『軍隊っぽい規律』のわりには、なぜ、『べらんめぇ口調』なんだ?
――これって、『任侠』繋がり?
「フムフム、ホムホム。……『侍女服』かぁ~」
「人様の『名前』を語るなんて、とんだ『メイド』もいたもんですね。『メイド』の片隅にも置けません!」
『メイド』がまともなこと言った!
オレを騙してばかりの『まさに、ペテン師(外道)』なのに、『珍しく』イイコト言った。
――これが、『職業意識』ってヤツなのか!
「……『歳は若め』、『背丈は小柄』、『口調はですます調』。――これが、『その女の写真』です」
写真を見た。
なんか、『でっかい既視感』です。
――ゆえに、だから、『力いっぱい』ツッコんどく。
「これって、どこかで見た気がするんだけど!」
「……ですねぇ。私もどこかで見た気がしますよ。なんというか、頻繁に」
「って、『オマエ』だよッ!」
『ボケられた』ので、『思わず』ツッコんじまった!
――なんか『今日一日』で、オレ『漫才師目指』してない?
「違います! 『他人の空似』ですよ! それに、ほら、よく見比べてください! 私の顔には、ここに、ほら、『ホクロ』がありますからッ!」
《ここです。ここですよ!》と『メイド』が、『目の下』にめっちゃ小さな『泣き黒子』を示す。
だが、それ以上に、オレは気になったことがあるんだ。
――これは、『ツッコめ!』って『フリ』なんだな。
「……その手に『持ってるペン』は何だ! 『黒マジック』ってヤツか?」
「はぅ! こ、これは、違います、たまたまです! たまたま、ペンを持って、『ふら~っと』……。いや、そうじゃなくって、『冤罪』ですっ! 『濡れ衣』です! 『若造』さんが勝手にッ!」
「って、オレかよ! どうやって、握ってる手に『ペンを握らせる』んだ。オレには、『スタンド能力』なんてねぇぞ! ――それにオレには、『女装(メイド服を着る)趣味』なんてねぇーよ! ここ『重要』ッ!」
《はぁ……》と、『猫嬢』が『やれやれ』と溜息しながら、『メイド』を見た。
「……『メイド(サクヤ・マリア・ロベルタ)』。『怒らないから』、『正直』に話してみなさい」
「でも……」
「私が『ウソ』をついたことある?」
「まぁ、『しょっちゅう』ですが。――いや、何でもないです。お嬢様がウソをつくことなんて、『滅多に』ありません。……わかりました。『正直』に話します。『お金を借り』に行ったのは、私です……」
『メイド(犯人)』が『犯行(借金)』を『自供(告白)』し始めた。
……あれ?
なんか『火曜サスペンス劇場』の『犯人逮捕BGM』が流れ始めたぞ。
――これは『空間』が【自己主張】してんのか?
「オッフォッ、やっぱそうだったにゃ」
「……えぇ、そうです。お嬢様の『名前を借りて』……。いえ、正確には、『お嬢様にはサイン』をしてもらってはいたんですが……。お金に困って、どうしようもなくって……」
「フンッ、お金のことなら、私に話してくれたらいいのに。――何で相談しなかったのよ? 私と『メイド』の仲でしょ。『たった1メガCat』ぐらい、払ってあげたわよ。そんなはした金」
『猫嬢』は、『すごくやさしい』。
でも、『すごく成金』っぽい。
……あれ?
もしかして、ここは『ツッコミ禁止』だったか!
「……お嬢様。お気持ちは、ありがとうございます。――でも、『1メガCat』ですよ? 『1メガCat』って、『はした金』じゃないですよ。ものすごい大金です……。『一介のメイド』ごときが、どうこうして良い額じゃないと思って……。私は……」
《『1メガCat』って、そんなすごい額なのか……?》と、『話に追いつくため』、オレは聞く。
「はい……。大体、『人一人』の『年収』が『1メガCat』です。つまり、『人、一人分』の『カルシウム』です」
……『骨身を削って』、『頑張った』ってことか?
「『カルシウム』って意味がわからねぇけど、そりゃ、『はした金』じゃねぇな……。オレの世界で考えると、大体、『年収が400万円』だから、そりゃ、言い出せねぇぜ」
「えぇ……。だから、私どうしようもなくって……。途方にくれて……。『借金取り』さんに、『お金を借りた』んです。――それで、なんとかなりました。……でも、なんとかなったのはその時だけで――」
『……』の乱発が、『メイド』の心境をアピールしてる。
――いや、『メイド』の『健気さ』が、オレの『胸中』を『どつきまくって』狂わせてるのか?
やっぱ、オレって『メイド』のこと好きだったのか!
「また、すぐ、お金が無くなってしまって……。その度にお金を借りに行ってたら、どんどん借金がたまってしまったんです。そして、今みたいな状態になっているんだと……」
「……うぐっ。ひぐっ、……ごめんなさい。……ぐすっ、えぐっ」
《わ……私が、不甲斐ないばかりにごめんなさい》と『メイド』が涙をこぼす。
――もう、見てるこっちが涙でそう。
きっと、『少ない給料』で、こき使われながらに『仕送り』とかしてたんだろうな。
きっと、『おなかが空いた誰か』に『パン』をあげてたんだな。
――そんな気持ちになってしまって、『目から汗』が出そうだぜ!
「……なるほど。よくわかったわ。『メイド(サクヤ・マリア・ロベルタ)』、顔を上げなさい」
《えぐ、えぐっ、ひぐっ……》と、『メイド』の泣き顔が上がる。
ごめん、見るに耐えない。
――すっごく、オレの『胸』が痛い。
「私のほうこそ謝らないといけない。アンタの気持ちに、早く気づけば良かったのに」
《悪かったわね》と、『猫嬢』が『貴族らしく』、謝罪する。
「うぐ、えぐっ、えぐっ……」
「安心しなさい、『メイド』。――ちゃんと、『私が』払ってあげるから。――だから、そんなに自分を責めることはないわ」
「ぐすっ……。お嬢様。……お嬢様、ありがとうございます」
なんという『主従君主』のやり取り。
……あれ、さっきまでの『バカ猫』と『嘘つき女』は、どこいった?
ここにいるのは、『心の広い主人』と、『主人思いのメイド』だけだぜ。
――思わず、感動しちまった。
「よかったな。一応、『問題解決』みたいで。意外と、『猫嬢』もイイトコあるじゃねぇか」
「フンッ、当然よ。私を誰だと思ってるの? 『身内のやらかしたこと』ぐらい『責任取る』わよ。それに『1メガCat』ぐらい、『猫嬢家』の『総資産』から見れば、『はした金』よ。『年間の利子』の『百倍安い』わ」
さらっと、とんでもないことを言う。
――その『はした金』は、『へこへこ頭下げて』、『涙流して』みんな稼いでるだぞ?
「でも、何に使ったんだ? その『1メガCat』って金」
「あ~、それ私も気になるわ。――『メイド』、話してみなさい」
《……ぐすっ》と、『メイド』が『涙の余韻』を拭いながらに答える。
「そ、それは……」
「どうしたの? 答えられないの?」
《……いや》、《あの、その……》と、『メイド』はうつむき気味に。
《まさか、『私に言えないようなことじゃないでしょうね?》と、『猫嬢』が詰問。
《『言わないとダメ』ですか?》と、『メイド』が、『上目遣い』。
《もちろんよ。『私が払う』とは言ったけど、『どんな出費か』ぐらいは知りたいわ》と、『猫嬢』が理路整然と詰め寄る。
……たしかに、オレもどんな出費か気になる。
どうすりゃ、そんな額が使えるのかってのもある。
でも、それ以上に、『メイド』が『誰か』のために使ったかもしれないってのが気になった。
「『メイド』、話しなさい。怒らないから、さぁ」
「……わかりました。話します。でも、『絶対怒らない』で聞いてくださいね。実は……」
《実は……?》と、身を乗り出して聞きそうになるオレと『猫嬢』。
「――『究極夢騎体』の『製作費用』です」
ちょっ、そこにいくのかよ!
「『最新鋭』ってだけあって、やはりどうしてもお金がかかってしまいました。なるべく安くしようと頑張ったんですが、『材料や【陣】』の都合上、どうしても高くなってしまって……」
尊敬した。
マジ尊敬した。『使用用途(使い道)』って、めちゃくちゃ、『猫嬢』のためじゃねぇか!
――『メイド』ってやっぱり、『いいヤツ』だったんだな、見直したぜ。
《なんだ、そんな理由?》、《心配して損したわ》と、『猫嬢』が優しく微笑む。
「そんなのは、『必要経費』。むしろ、『ストーカー』を止める『代償』としては安いぐらいだわ。全然、気にしなくていい」
「……『400万円(人一人の年収)』の『ストーカー対策』ってどうかと思うがな」
「そりゃ、アンタが体験したことないからそんなこと言えるのよ。――はぁ、思い出しただけでも頭が痛くなる……」
「……ですね。『王子』は、『ドを超えた熱愛狂』でしたから。――でも、良かったです。お嬢様に打ち明けることができて。胸の中の『もやもや』がなくなって、すっきりしました」
「ふふ、それは良かったわ。これからは、何か言いたいことがあったらはっきり言いなさい。ちゃんと相談に乗るから。その辺のメンツばっか気にしてる『貴族(ダメ猫)』たちよりは、断然、理解があるつもりだわ」
《はい、わかりました》《これからはどんどん言いますね》と、『メイド』がまた泣きそうになりながら答える。
なんかほのぼの展開。
……あれ? 『神展開(トンデモで無残)』な『不遇なイベント(BADルート)』じゃないぜ?
この世界に来て初めての『名場面』じゃね?
――『メイド』と『猫嬢』の『絆が上がった』って気がしたぜ。
ついでに、『メイド』って『涙もろい』のかもって思ったぜ。
「せっかくの機会ですから、色々言っちゃいますね。――例えば、『究極夢機体』の『開発費用』よりも、『お嬢様の出費』のほうが『数倍多い』とか。『毎日毎日』、好き勝手の『ワガママ三昧』で、『あれが食べたい』、『これが食べたい』。『あの服が欲しい』、『あそこに行きたい』、『人が持ってるもの』は、『必ず』欲しくなって、それより『スゴいモノを手に入れよう』って、『無理難題』。私が『借金して回ってた』のは、その代金に当てるためだったんですよ?」
……これは相談なんかじゃない。
壮大な暴露だ。騙されてたぜ。
――本当の『原因(真犯人)』は、別に居たのか!
「……『前言撤回』するぜ。やっぱ、『オマエ』ってヒデェ、ヤツだな」
《うるさいッ!》と『猫嬢(真犯人)』が自ら、『否定して(名乗り出て)』くれました。
「こっちにも、『貴族としてのメンツ』ってのがあるのよ! アンタみたいな『愚民とは格が違う』の!」
愚民って言われた。
断言された。
オレは、この世界に住んでないのに、決め付けられた。
――まぁ、格というか『種族が違う』ってのは認めとく。
《まぁ、いいわ》と、『猫嬢』は、『この話は終わり』とばかりに、『借金取り』へ向き直る。
「お金は、ちゃんと払うわ。それでいいんでしょ? 速やかに私たちを解放しなさい。それと、屋敷も全部、『元に戻しなさい』よね」
『モフォッ、そりゃあもう』と、『自慢のヒゲ』の手入れをしていた『借金取り』が返す。
「払ってくれさえすれば 今すぐにでも、開放して、元に戻すにゃ」
「えぇ、払わせてもらうわ。今すぐに。――えっと、『1メガCat』でよかったかしら?」
「『ノンノン』。――それじゃあ、足りにゃい」
《はぁ?》と『猫嬢』が相変わらずの短気を見せる。
「アンタ、さっきの『借用書』には、『1メガCat』ってあったじゃない。……何が足りないのよ?」
「モフモフ、『1メガCat』は、『初回の借用額』にゃ。それに『利子』やら、何やらが入るから、高くなるにゃ」
「あぁ~、『利子』って『十日で三割』っていうヤツ? ……利子分、含めて払わないとダメだったわね。で、いくらよ? 悪どい利率だったけど、払ってあげるわ。『10メガ』? 『20メガ』?」
【しめて、『壱仟万(いちせんまん(1ギガ))Cat』だにゃ】
《はぁ?》と、『猫嬢』が『冗談じゃない』と『キンキン声』を張り上げる。
……たしかにわかる。
圧倒的に法外な額だ。
ざっと、『人間千人分』の『骨密度』。
――円に換算したら、『四十億(どっかの国家予算)』って金額は高いよな?
って、うぉっ、高いってレベルじゃねぇぞ!
「どこをどう間違えたら、『1メガ』が『1ギガ』になるのよ! 千倍じゃない、千倍! いくらなんでも、増えすぎよ!」
《何度も、足を運びましたから……》、《お嬢様の『無理難題ごとに』何度も……》と『メイド』が『感慨深げ』に目が泳いでる。
アレ? 『白い魂』みたいなモノが出てないか?
――これが、『幽体離脱』ってヤツ?
「そこの飼い人の言う通りだにゃ、ちゃんと『借用書』もあるにゃ~」
『リーダー格の作業員』が、『辞書並みの厚さ』の『借用書の束』をちらつかせてくれた。
うん、一冊じゃなくって、いっぱい、いっぱい。
「ぐっ……、わかったわよ! 払えば、いいんでしょ、払えば! ……払うわよ、千倍したところで、まだまだはした金の域よ。すぐに、また稼いでやるわ。『究極夢騎体』があれば、あっという間よっ!」
「そりゃ、頼もしいにゃ~。でも、ホントに大丈夫かにゃ~?」
「ん? どういう意味よ」
《……あのですね、お嬢様》と、『メイド』が非常に非常に言いにくそうに呟いた。
「『言いにくいけど、言いたいこと』の続きなんですが……」
【実は、もうお金ないんです】
――『意味の顕現』を聞いた。
人は魔法を使えないはず。
――だけど、オレには、そう感じられちまった!
「はぁ? そんなワケないじゃない。『爺様』の莫大な遺産があるじゃないのよ」
「……いえ、えっとですね。今までに『お嬢様のため』に色々とお金がかかって……」
【とっくに使い果たして、借金して回ってます】
――まただ。
また、『意味の顕現』を見た!
な、何、『お金の力』って、魔法が使えない『人の限界』を超えちゃうってのか!
「はっ? 破産……? この私が、破産? 『一流貴族』のこの私が『破産』ですってッ! 冗談も休みながら言いなさいよ。あの『土地』は何よ! 『屋敷』は何よ! 『美術品』は! 『服』は? 『宝石』は? 『本』は? 『騎体』はッ!」
「――モッフォ、全部、『借金』のカタになってるにゃ」
《つまり、没収だにゃ》、『借金取り』は丁寧に、『説明(催促)』してくれました。
「ミス『猫嬢』の財産の全てを、借金のカタとして差し押さえたにゃ」
《そんな、こんなことって……》と、『猫嬢』が『ありえないけどそうかもしれない』って顔をする。
「『爵位つき』の『一流貴族だから』ってことで、『返済期限が過ぎてる』のも『大目に見てた』んだがにゃ~。『今日のランブル』で、ミス『猫嬢』は『爵位を無くしてしまった』にゃ。――『仁道金融』としては、規約に反してもらうのは困るにゃ。ここで、ミス『猫嬢』を特別扱いすると、『他の債務者』に示しがつかないにゃ。というわけで、今回のような『強行処置』を取ることになったんだにゃ~。――あ~、あと、『利子(差し押さえ)」とは、別に『総額の10億Cat』も払ってもらうにゃ。悪いけど、従って欲しいにゃ」
「イヤよ! こんなの納得行かない。私は、払わないし、『差し押さえ』も認めないわ!」
「それは困るニャ~。と言っても、困るのは、ミス『猫嬢』のほうにゃんだが……』
《モホッホッ》と、『柔和に』、『借金取り』が『ヒゲ』をいじる。
【こっちにも、貴族としてのメンツってのがあるのよ! アンタみたいな愚民とは格が違うの。まぁ、いいわ。そんなことよりも、お金は、ちゃんと払うわ】
――『意味の顕現』。
《なっ!》、《私の声ッ?》と、『猫嬢』が、『飛び上がって』驚いた。
……『録音機』?
『猫嬢』の声でそのまま、そんな『セリフ』をいったカンジに聞こえたぜ。
……『なんというヒゲ(【陣】)』だったのか!
『ジェームス・ボンド』もびっくりだぜ、その『発想』。
「ちゃんと、『返済意思の確認(証拠)』もあるにゃ。『合法的』で、れっきとした『借用書』もあるにゃ~。『裁判沙汰』になっても、『間違いなく』儂が勝つ。――おとなしく、『従ったほうが賢明だ』ニャ。下手すると、『第三級の爵位剥奪』だけでなく、『第二級の国外追放』を受けるかもしれないにゃ~。『貴族なら貴族らしく』、自分の言った『言葉と行動に責任』を持つにゃ。――あぁ~、今は『爵位剥奪された』から、『元一流貴族』のミス『猫嬢』だったにゃ」
気づかなかった。
気づけなかった。
――なんという伏線。
今回、やたらと『猫嬢』って『通称(通り名)』じゃなくって、『ハルヒ・キョウカ・ルイーズ』って『本名』が出てきたが、この展開を狙った罠だったのか!
《ぅう、コイツーーーーーっ!》と『猫嬢』が今にも噛み付きそう。
《お嬢様。お嬢様、落ち着いて……。『ここで』やったら、『裁判』で負けます》と『メイド』が止める。
……あれ。
今のセリフって、『他のトコ』なら、『やってもイイ』って『ニュアンス』入ってなくね?
「私の力が至らなかったばかりに、こんなことになってしまって……」
《『メイド』のせいって言うよりは、全部、『猫嬢』のせいだけどな》と、『半目な視線』を送るオレ。
「うっさい! アンタは黙っててッ!」
――スゴい『殺気』でした。
『強制命令』をかけられて、『死ねって言われた』ぐらいの『死刑宣告』でした。
「どうするにゃ? 『貴族の誇り』にかけて、払うかにゃ? それとも、『外道(犬畜生)』として、争ってみるかにゃ?」
《くぅ~~~~っ!》と、『猫嬢』が『激怒』、『怒り』、『怒髪天』、『天国か地獄』、『獄死の如く悲惨』、『惨殺』、『殺す』って、【自己主張】を『バチバチ』放つ。
ちょっ、マジで、『大気』が『バチバチ』って『火花』上げてるんですけど!
「わかったわ! 払えばいいんでしょ! 払えば! そうすりゃ、文句はないでしょうが! たった『10億Cat』ぐらい払ってあげるわよ!」
「モッフォッフォ、それはありがたいにゃ。でも、破産してて、一銭もにゃいのに、『千人の年収』と同じ額を本当に払えるのかにゃ?」
「えぇ、払ってやるわよ! 私が、やると言ったからにはやるわ。『異端の血統』にかけて、『ハルヒ・キョウカ・ルイーズ』こと、この『猫嬢』が払ってやるわ!」
断言した。
これ以上無いってぐらいに断言した。
……単純計算、『人一人の千年分』の給料を完済するって宣言しやがった!
「モッフォッフォ、了解したにゃ。『口約束』じゃにゃんだから、ちゃんと『サイン』もしておいて欲しいニャ」
《いちいち、細かいわね!》と、『猫嬢』が今だ『バチバチ』って【自己主張(殺気)】を放ちながらに、『書類にサイン』。
「モッフォッフォ、確かに。『猫嬢』の『仁道(仁義)』に期待してるニャ~」
「望むところよ!」
なるほど。
こうやって、『人は騙され』、『消費者金融(高利貸し)』から、ふんだくられるのか。
嗚呼、『頭にこさせて』からの『正論武装』。
まさに、『アリ地獄(逃げられない)』。
――恐ろしいぜ。『サラリーマン金融』……。
「……ヘタな『プライドに縛られて』、『騙されて』いくんだな!」
《なんか言ったっ!》と、『猫嬢』が『殺気』をオレに向ける。
《いやっ、別になんでもねぇよ》って、オレは返しとく。
これ以上は、マジに『殺されそうな気がした』ので、オレは『放置スキル』発動。
――『華麗にスルー』してやるぜ。
「モッフォッフォ、快くミス『猫嬢』も引き受けてくれたことだし、万事、解決だにゃ。――さて、御前等、押収した物品を持って、引き上げるにゃ」
《イエス、マイ親仁!》とお決まりの応答。
今までのやり取りの間、ずっと『不動(休め)の姿勢』で聞いてた、オッサンたちの『努力に困憊(乾杯)☆』。
――『家庭』を持つ、『貴方たちのスゴさ』を、オレは忘れないぜ……。
「親仁、『運びきれない物品』の類はどうしやしょう? 特に、『膨大な書物』がネックですぜ」
「……モフォッ。後日、若い衆に運ばせれば良いにゃ。今日はあくまで、ミス『猫嬢』の『了承を取る』ことが『目的』だったにゃ」
「イエス、マイ親仁!」
「全体、作業につけ」
《合点(Sir)、愛しの兄貴(Yes、Sir)》』と、『緑色の悪魔(ししとうっぽい作業服)』の男たちが、押収した物品の荷造りを始めた。
《さて……》と、『男たちの働き』に『関心関心』ってしてる『借金取り』が、こちらを向いた。
「殊勝な、ミス『猫嬢』たちに、『吉報』を伝えるにゃ」
《何よ?》と、『猫嬢』が『機嫌悪そうに』答える。
ん、ちょっと、落ち着いた?
つうか、『疲れたのか』、『ゲンナリ』してる。
「屋敷を差し押さえられて、これから住む場所に困るだろうにゃ。――そこで、儂から素敵な家を紹介するにゃ」
《そんなの大きなお世話よ!》と、『猫嬢』が『プライドを守って』再燃しそう。
「……まぁまぁ、お嬢様。たしかに胡散臭そうで怪しいですけど。――家が無いと、困るのもたしかですよ?」
「モッフォッフォ、どう思われようが構わないにゃ。どうせ、さっきの書類にもあるように、『どの道、強制』だからにゃ」
「わかったわよ。その家ってのに案内しなさい!」
《ほら、アンタもぼさっとしない!》と『猫嬢』がオレを急かす。
「……なっ! オレもかよ」
「そこに居たって、何も始まらないでしょ」
たしかにその通り。
……『世界を繋ぐ【陣】(帰る手がかり)』は、『猫嬢』たちが知ってるわけで。
『あぁ、わかったよ』と、『消去法』で、決めるしかない。
――オレは、しぶしぶ、『馬車』に乗り込んだ。
『ことこと』と揺れる馬車の旅。
『ゆったり』流れる外の景色。
――だけど、その『室内』はそうでもないぜ?
まるで、『アヒルの足かき』みたいに『壮絶』なんだ!
「ちょっと、アンタもっと、そっちによりなさいよ!」
「うるせぇ、ぎゅうぎゅうなんだよ! 贅沢言うじゃネェ!」
「……うぷっ、騒がないでください。わ、……私、『乗り物に弱い』んです!」
うん、『とても壮絶』な気がする。
……これは、かなりヤバイ気がする。
人として、これだけは避けたいってもんだ。
だって、もし、『メイド』に何かあったら、オレの顔面が、『見せられないよ』になっちまうぜ。
――『TPO』で、『唇が触れそうな距離』ってのも考えモンじゃねぇ?
いろんな意味で、『ドキドキが止まらない』んだけど!