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お金が世界を救います! ~大切なモノって何ですか?  作者: ・w・(テン・ダブリュー・ドット)
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21◆◇◆場所:『豪奢な装飾あふれる、豪華な部屋』……語り手:『若造』

 ◆◇◆場所:『豪奢な装飾あふれる、豪華な部屋』……語り手:『若造』

「あぁ、もぅ! せっかく『計画通り』だったのにーーーッ! 何もかも、アンタのせいよ!」

「うるせぇっ! 騙して無理やり闘わせた挙句に、オレまで共犯にしやがってーーーッ! 『クソ猫たち』に『死ね』、『死ね』、『死ね』って何度も言われて、『鬱だ、死のう』って、カンジの『番組終了(エンドロール)』が流れちまったじゃねぇかッ! オマエらの良心疑うぞ、マジでッ!」

 『ぷんすか』怒る『猫嬢』に、オレは『激烈猛抗議』!

 毎回、怒って、ツッコんでる、《あなた『キレキャラ』ですか?》って勘違いされそうだけど、ここは怒らないといけない気がするぜ!

「ふんっ、『バレなきゃイカサマじゃない』わ」

「バレなきゃって、そんなわけねぇだろうが! なぁ、『メイド』ッ!」

「えっ、私、何か悪いことしましたっけ? 『悪いことって知らずにやった』から、別に悪いことじゃないですよ?」

「んな、ワケねぇだろっ! オマエ、《イッて『第六級ぐらい』だと思ってました》とか言ってたじゃねぇか!」

 《そんなこと言いましたっけ?》って、『メイド』は首をかしげて、『可愛さアピール』狙いやがった。

「バカのクセに、『変なトコ』は覚えてるのね」

「うるせぇ! オレはただ、人としての『常識(性善説)』をだなーーッ!」

 《はぁ…、これからどうしよう。バカのせいで、困ったもんだわ》と、『猫嬢』が『がっかり』と。

 《ホント困りましたねぇ……。バカのせいで。『爵位剥奪』は痛いです》と、『メイド』も『がっかり』と。

 《でも、あの『騎体』すごかったわね。『究極・夢機体(アルティメット)』だったっけ?》と、『猫嬢』が思い出す。

 《そうです、すごいでしょ。『究極・無敵・最強(アレ)』。もう。これ以上ないぐらいの『職人』に、腕によりをかけて作らせましたから》と、『メイド』が誇らしげ。

 《スグに爵位を取り返して、愚民を平伏させてやるわッ!》と、『猫嬢』が偉そうに。

 《そのイキです。お嬢様!》と、『メイド』が満面の笑顔。

「って、オレを無視してんじゃねぇよ!」

 『ドガン』と、机を殴りつける。

 『威風堂々』、『高いんです』って【自己主張】する『黒檀(こくたん)の机』が、拳の形の凹みが出来る。

 もう、バカバカしすぎだろ。

 ――今更だが、はっきりさせないといけないことがある!

「大体、何だよ、この世界! 『猫が喋って』、『火を吹いて』、『猫が貴族』で、『決闘』で、『ロボでバトル』で、挙句の果てに『爵位剥奪』って、一体、どんな『トンデモSFファンタジー』な世界だよ!」

 《あぁ、悪い、悪い。アンタがいたの忘れてた》と、本当に忘れてそうだった『猫嬢』。

「トンデモ世界ですって……? 『ニャンダーグラウンド』じゃない。何言ってんのよ?」

「にゃんだー……?」

 えっ、今なんて言った?

「そっ。その中の『グレイトッ・キャット・ビレッジ皇国』よ」

「ハっ、どこだ、その国? 何かの『マンガ』に出てきそうな、『ふざけた名前』じゃねぇかよ!」

 《ふざけたですって?》、《別に、何もふざけてないけど》と、『猫嬢』がマジメな対応。

「ねぇ、『メイド』もなにか言ってやりなさい」

「はい、ここは間違いなく、『グレイトッ・キャット・ビレッジ皇国』ですよ。――当然のことです」

 《えっ、ホントに知らないんですか?》と、『メイド』もマジメな対応。

 こいつら、またオレを担いでるのか?

 ――いや、今回は、本当にそんな風に見えないんだが……。

「『若造』さん、知らないんですか? ……もしかして、『若造』さんって、『別の国』から来たんですか? ――『竜洞(りゅうどう)』を超えて」

「いやっ、そうじゃなくってな。『猫が喋ってる』のがおかしくってだな」

「『猫が喋ることは当然』です。さっきも説明しましたよ?」

「だーッ! そうじゃなくって、オレが言いたいのは、だな! ここは、『オレが知ってる世界じゃない』ってことで!」

「もぅ、さっきから何言ってるのよ、コイツ。やっぱ、どっか『頭ぶつけておかしい』んじゃない?」

 『猫嬢』に、『まさか』の心配されちまった……。

「……えぇ、そうかもしれません」

 『メイド』は、目をそらしやがった!

「てめぇらッ、オレは『正気』だって言ってるだろうが! たしかに、『メイド』に頭どつかれまくったけどなッ! ――あぁ、わかった。わかったさ。そんなに言うなら、説明してやらぁッ! 『オレが知ってる世界』はだな……!」

 オレは熱く語った。

 『教職免許』が取れそうなぐらいにアツく語った。

 《雷によって、単細胞が生まれ》、《嫌気呼吸から好気呼吸に変わり》、《単細胞から多細胞に変わり》、《魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類、人間が生まれ》、《石器時代から土器時代に変わって》、《幾多の苦難を超えながら、現代に至り》、《今や、『スイーツ(笑)』・『オタク(職人)』・『パソコン』によって支配される世界になった》ってことを丁寧に語った。

「――どうだ、わかったか! これがオレが知ってる『ザ・ワールド』の世界ってヤツだ。どうだ、人類の英知の歴史ってやつは!」

 『……』って返された。

「どうだ、あまりに驚きすぎて、声もでないかよ?」

 《えぇ……たしかに、驚いたわ》と、『猫嬢』が意外な反応。

 《はい、私も驚きましたわ》と、『メイド』が初めて、『貴方頭よかったんですね?』って反応。

「そうだろ、そうだろ。これが『正しい世界(トゥルー・ワールド)』のあり方だぜ?」

「……こんな、『バカ頭』のクセに、なんて壮大な作り話なの。そこいらの『作家(クリエーター)』よりも、断然、すごいわ、人は見かけによらないものね……」

「えぇ、私も、色々と本は読むほうですが、ここまで綿密な『設定(プロット)』を練ったものは、滅多に出会えませんよ……」

「アンタ、『作家』になったら?」

 真剣に言われた。

 自信を思って、そう言われた気がする……。

 ――けど、それは違うんじゃね?

「ダーーーッ! オレが言ってるのは、作り話じゃねぇーーーッ! 全部、本当だ! マジなんだよ。『作り(フィクション)』じゃなくて、『リアルな(ノンフィクション)』。『真実はいつも一つ(トルゥー・ストーリー)』なんだよッ!」

「はいはい、『作家は、(みな)そう言うもの』よ。自分が考えた話が、本当だったら、スゴいわね。――大体、信じられる? 『猫が人のペット』として、飼われてるなんて。しかも、『喋れない』し、『魔法も使えない』ですって? ――一体、どんな世界なのよ。まるで、『猫嫌いなヤツが書いた小説』ね」

「だぁ~かぁ~らッ、それが『現実世界(リアル)』だって言ってるだろうがッ! こんな、『にゃんにゃんわーるど』じゃねぇよ!」

「それに、『一般機械(パンピー・コンピーター)』?」

 なんか『メイド』に、盛大に間違えられた。

 ――さりげなく、すっごく、『庶民をバカに』してないか?

「そうじゃなくって、『個人用機械(パーソナル・コンピューター)』!」

「……えっと、その『PC(パソコン)』で、『遠くの人と話』したり、『絵を描いたり』、『音楽を聴いたり』、『プログラム(?)を作ったり』、『トンデモ破壊力の核兵器』ってのが、『世界を恐怖に陥れてる』って……。まるで、魔法じゃないですか。『人が魔法を使う』だなんて、そんな話聞いたことありません。……『魔法は猫だけ』が使うものですよ?」

 《信じられない》、《何言ってるんですか》、《ありえない》って『メイド』が反論。

「魔法じゃねぇーーッ! 『人工言語(プログラミング)』だっ! 魔法なんて、『非科学的』なもんと一緒にするな。『プログラミング』ってのはな、『タグ』を組み合わせて、『コマンド』をだな……」

 「……『タグ(荷札)』? 『コマンド(命令)』……?」

 だー、そこから、わかんねぇのかよ。

「……わかったよ。実際にどんなもんか見せてやる。イイか、よく見とけ。滅多に見れるもんじゃねぇぜ?」

 そうだ。そうだぜ。

 『百聞は一見にしかず』なんだから、最初から見せてやれば早いじゃねぇか。

 「この『天才ハッカー』のオレ様の『プログラミング(超絶美技)』に酔いな!」

 ――あれ?

  おかしいな……。

 【『若造』はノートPCを探した。しかし、見つからなかった】

「……ちょっ、どこやったっけ!」

 【『若造』はノートPCを探した。しかし、見つからなかった】

 《何やってるのよ?》と、『それ、なにかの『大道芸』?』みたいな表情の『猫嬢』。

「……いや、ノートPC探してるんだが、あれ、どこやったっけ? マジで、ちょっ、マズいって! ……おい、勘弁してくれよ!」

 【『若造』はノートPCを探した。しかし、見つからなかった】×三十五。

「冗談だろ……? マジかよ。……オレのPC、どこイっちまったんだ!」

 《さっきから、何を探してるんですか?》と、『メイド』が『頭の心配』してくれた。

「『ノートパソコン』だよ! 『ノートPC』ッ! オレの命の次に大事な、オレの分身! 『オレの全て』が詰まってるって言ってもおかしくねぇ。――『愛の結晶』だよ!」

「大事なモノってのは、わかったけど、『自分の分身』で、『愛の結晶』って……。『気持ち悪い』」

 『猫嬢』に言われた。

 バカって言われるより、『グサっ』てきた。

 ――『キモい』より、『気持ち悪い』のほうが、キツくね?

「うるせぇ! すんごっく、大事なもんなんだよ!」

 《どこかに落としたんじゃないんですか?》と、『メイド』が冷静分析。

「その『ノート・パンピー』……」

 おーけぇ、あえて『スルー』しとくこう。

「そんなはずは、無いんださっきまで持ってたし……。落としたらスグに気づくだろうし……」

「さっきまでって……。『若造』さんって、私と会ったときから『何も持ってません』でしたよ?」

 なっ。えっ、えぇ。えぇぇ>>>>?

 ごめん、オレの『思考回路がショート寸前』>>>>!

 ――『>>>>』って何かの『加速記号』?

「ちょっ、マジかよ。オレはたしかに持ってたはずだぞ! コンくらいの大きさで、四角くてな。大体このくらいの厚さで、カタくてだな……」

 『うーん』と、『メイド』が、『顎に手』を当てながらの『推理中』?

「やっぱり、見てませんよ」

 断言された。

 望みが断たれた。

 ――うぉっ、認めたくねぇ!

「そんなはずは……」

 電流が走った。

 オレの『灰色の脳細胞』に『電気あんま』の『衝撃波(インパルス)』。

「まさか、クソ猫に追いかけられた時に『落として』……! クソッ、アイツらのせいで!」

 《ほら、どうしたのよ?》と、『クソ猫』って単語に『過剰反応』の『猫嬢』が急かす。

「『天災バカ』の『自虐ネタ(超絶プログラミング)』はどうしたの? まさかできないなんて言わないわよね? あんなに、『自信満々』に言ったんですもの」

 《クソッ……》と、オレは拳を握る。爪が食い込んでる気がする。

 自分の『専門分野(得意芸)』ができないのが、腹立たしい。

「できないの? あ~あ、やっぱり、アンタが言ってること、ウソっぱちの『作り話』だったのね」

「『若造』さん。きっと、夢でも見たんじゃないでしょうか?」

「ウソじゃねぇーッ! ノートがねぇから、『プログラミング』はできねぇけどよ、『オレが居た世界』は、『オレが話した世界』は『ウソ』じゃねぇ! 本当なんだ。現実なんだよ! ……夢なんかでもねぇよ! 絶対に、アレは夢なんかじゃねぇよ! オレは、あの世界で『天才ハッカー』でッ!」

 ――ちっ。

 コイツら、まるで、信じてない。

 まるで【×××イ(アレ)】を見るような、眼で、オレを見てきやがる。

「クソッ、どうやったら、信じるんだよ! テメェらはッ何を言ったら信じるんだよ! オレが何したってんだよ! オレが見た、『嵐の中の眼』は何だよッ! 『バカにしてる』ような、『ワケの分からない』眼で睨みやがって……! もぅ、一体なんだってんだよ? クソッ、クソッ! 何が何だか、ワケがわからねぇよッ!」

「……ちょっ、『若造』さん、落ち着いて!」

 感情の発露。

 感情の発散。

 今まで溜まりに溜まったモン、全てを吐き出してやる!

 高そうな『花瓶』が落ちた。

 きれいな『絵』が破けた。『壷』が何個も割れた。

 ――だけど、それが何だってんだよ!

 オレには関係ねぇ! 関係ない。こんなオレの知らない世界なんて関係ない。

 オレを必要としてない、ワケのわからねぇ世界なんて、壊れてしまえ。なくなっちまえ。壊れて壊して壊れたものをまた壊してさらに壊して壊して壊しつくして壊せばいい。

 それでも足りなきゃまた壊せばいい。何度だって壊してやる。

《『若造』さん!》といって、『メイド』が止める。

 力づくで、飛び()って、オレを押し倒し、『羽交い絞め』にする。

《うぜぇ、離せ、コノッ!》と、オレは仰向けになったまま、『メイド』を引き剥がす。

《……はっ、離しません》と、『メイド』はオレの胸に『顔を埋めて』、動かない。

 暴れても、暴れても、暴れても……。

 ――何をやっても、動かない。

《お願いですから、頭を冷やしてください》、そう(ささや)かれた。

 急に力が抜ける。

 ……オレはこの人に何をやってるんだ?

 『命の恩人』である『メイド(この人)』に何をやったんだ?

 たとえ、何度騙されたって、その『事実は騙しようがない』ってのに……。

 ――もう、沈黙で答えるしかない。

「……」

「今、アンタ、『眼』って言ったわよね?」

 オレが暴れる中、珍しく『黙って静観』してた『猫嬢』がオレに問う。

「……あぁ、言ったぜ。オレは『嵐の中で、眼を見た』んだ。一際(ひときわ)、ぎらついたヤツをな。あの眼を見たと思ったら、意識を失って……。気がついたら、こんなクソ世界にいたんだよッ!」

 ――悔しかった。

 なぜか、わからないけど、無性に悔しかった。

 ――暴れて発散できない以上、耐えるしかない、この苦しさ。

 まるで、腹が抉れて、口からあふれて、床を濡らして、塗り染めてもまだ足りない気持ち悪さ。

「……『お嬢様』?」

 オレが暴れないよう、注意しながら、『メイド』が尋ねる。

「――『嵐の中』で見た『ぎらついた眼』。――常識を知らない『非常識なバカ』。――『世界を渡る力』……。『メイド』、ソイツを離してやりなさい」

 《えっ……?》、《――あっ、はい》《わかりました》、『メイド』は『何が何だかわからない』って怪訝な表情で従う。

「ちょっと、アンタ、その『眼』ってやつを描いてみなさい」

「あぁ? 何でだよ?」

「いいから、早く。今すぐ!」

 断言。

 軽口じゃなく、『闘技場で見せた』あの『猫嬢』の『圧倒的(カリスマ)』な『強制力(プレッシャー)』。

 それだけ真剣な話ってことか?

「……あぁ、わかったよ」

 オレは、『メイド』に渡された『羊皮紙(?)』に、『嵐の中の眼』を描いた。

 それは、幾重もの『(ライン)』と『四角(スクエア)』と『(サークル)』を組み合わせた『模様(デザイン)』に思えた。

 ――そう、まるで何かの『魔法陣』のような禍々(まがまが)しい【自己主張】。

 『……』、『……』、『……』と、『猫嬢』が沈黙を返す。

「お嬢様、これって……」

「――えぇ。間違いないわ、【(じん)】に違いない。――見たこと無いデザインだけど、この『描き方』と『シンボルの形式』と『配置』と、この【自己主張】は疑いようが無い。それに、嵐の中で視えたってことは、かなり大きなものに違いないし」

「でも、『世界』を……。いえ、『時空』を超えるような【陣】なんて聞いたことありませんよ?」

「しかし、そうとしか考えられない。『若造(コイツ)』が、さっきみたいな『世界の歴史(トンデモ・フィクション)』を考えつくよりは、『時空を超える【陣】』のほうが信憑性がある。――どこぞの『狂った錬金術師(マッド・アルケミスト)』の『イカれた研究実験(自慰行為)』か。それとも、『先人の忘れ形見(ロスト・テクノロジー)』の暴走とかね」

「……たしかに、そのほうが信用できますね。『何だかんだ』で、『イっちゃいけないベクトル』で、スゴい人ってのは、よく聞きますから」

 なぜか、オレが見られた。

 ……ちょっと、動いてみた。

 そしたら視線がついてきたってどうよ?

「ちょっ、オマエら! 普通にヒデェこと言ってる自覚あるか? それに、その【陣】ってのは、何だよ?」

「そんなことも知らないの! って、そうか……。アンタの言ってることが、『百歩譲って本当』だとしたら知ってるわけ無いわよね。――わかったわ、説明してあげる。【陣】って言うのは……。あぁ、やっぱめんどうね。『メイド』、説明してやりなさい」

 《……えっ、私がですか?》、《もぅ、仕方ありませんね……》と、『服の乱れ』が気になってた『メイド』が、『何枚かの羊皮紙』を机に並べながらに説明を始める。

「【陣】っていうのは、端的(たんてき)に言えば、『記号』と『式』で、『魔法を象徴化(しょうちょうか)した文様(もんよう)』のことです」

「ショウチョウカ……? 『ペルソナ3』の『影時間』に出てくる(ひつぎ)のことか?」

「――いえ、『図形などで描いた魔法陣』ってことですよ」

 軽く流された。――視線に軽蔑を感じたのは気のせいに違いない。

「あぁ、なるほど。よくある『五芒星(Pentagram)』とか『六芒星(Hexagram)』ってヤツだな」

「そうです。『猫の魔力を動力』とし、『色と形』によって、その効果が異なります。モノを硬くしたり、重くしたり。――逆に、やわらかくしたり、軽くしたりとか。そうですね……」

 《例えば》と、『メイド』はオレの足を指差して、

「『若造』さんの『足に巻いてる包帯』にも【陣】が描かれています」

 ……『包帯』?

 丁寧に巻かれた包帯に目を落とす。

「うわっ、マジだ! なんか、赤丸の中に十字が書いてある。って、コレって思いっきり『赤十字』じゃねぇかよッ!」

「はい。『赤十字』は、『治療の印』ですから」

「だから、さっきから全然痛くなかったんだな。すげぇな、魔法ッ! ぶん回しても、痛くねぇぜ! のわっ! チッ、血が! めっちゃ血が出てきてるんだけど……」

 えぇ、ものすごい量の血でした。

 ……包帯が見る見る赤くなっていくんです。

 『完熟したトマト』よりも赤くて、『ケチャップ』よりは赤くないかもしれません。

「うわっ、イテェ!――って、痛くねぇ? どうなってんだよ。……こんなに血が出てるのに、全然痛くネェ!」

「傷を治す【陣(魔法)】なんて、あるわけないでしょ。そんなのあったら『死人も生き返るわ(墓いらず)』。あくまで『痛み止め』や『活性化』程度よ。【陣】で出来る治療なんて」

「『若造』さんは、少しぐらい血の気がないほうが良いと思いますよ?」

「さらっと、『血みどろ(スプラッタ)』なこと言うんじゃねぇよ……」

 《気をつけてくださいね》と、『メイド』が新しい包帯を巻きながら、説明を続ける。

 なんか、やたらと、ぐるぐるに巻いてない?

 ――ちょっと、足が動かないんですけど?

 ちょっ、両足縛ってるぞ!

「――今、見てもらった『治癒系」の他にも、色々な『種類(タイプ)』があるんですよ。大きく分けると『常動型』と、『発動型』があって、『常動型』は、文字通り、『常に効果を発揮し続ける【陣】』です。猫の魔力を元に、【陣】が生み出された時から、効果が発生し、込められた魔力が尽きると切れます。モノを硬くしたり、軽くしたりなどの『物質の性質変化』によく使われ、猫だけでなく、魔力を持たない人でも、その恩恵を得られるのがポイントです。――欠点は、『徐々に効果を失ってしまう』こと。――それと、『それほど強い効果は、付加できない』ってことです。『【陣】の程度』にもよりますが、できたとしても、『ほんの一瞬』で効果が切れてしまうかと。――そして、もう一方の『発動型』です。これは『猫が魔力を込める』ことで、『発動するタイプ』で、【陣】によって、『発動する効果は様々』で、【血統】とは、『全く別の系統の魔法』を使うことができます。……まぁ、『血統魔法』に比べたら、弱すぎて話しになりませんがね。ちょっと『便利な道具』ぐらいの、補助的なものだと思ってもらえればいいかと」

 《ここまでは、いいですか?》と、『メイド』が目配せ。

 《あぁ、こんくらいは大丈夫だ》と、相槌を返しとく。

「ホントにわかったんでしょうね?」

「ちゃんと、理解したっての! ――あれだろ? 『常動型』と『発動型』を、組み合わせて、『機体を動かす』んだろ?」

 《大体、正解です》と、『メイド』は『やっぱり頭いいのかな』って表情で、『補足説明』開始。

「正しくは、【騎体(きたい)】に『猫の魔力をチャージ』し、『薬莢(カートリッジ)に魔力を込め』、『インジェクト時』に『発動型の【陣】』を起動して、【騎体】を動かすんです」

 あぁ、簡単なことだぜ。

「あぁ、OK。わかったぜ。つまり、アレだ。オレは、『元の世界に戻れる』ってことだな! これで、こんな『超展開SF(トンデモ・ファンタジー)』とはおさらばだぜ。――よっしゃ、オレの『バラ色の人生(スイート・ライフ)』、『奪還完了(カムバック)』ッ! 『オレは、新世界の神になる(アイム、フリーダム)ッ!』」

 《何言ってるのよ……?》、《たくっ、ホント、バカねぇ》と、説明の間、『毛づくろい』してた『猫嬢』がツッコみやがる。

「……どういうつながりで、そんな話になるのよ。『機体を動かす【陣】はある』けど、『世界と世界を繋ぐ【陣】なんて聞いたことない』ってのに」

 あぁ、もちろん、そんくらいは理解してる。

「あぁ、たしかに、そう言ってたな。ちゃんと聞いてたぜ。――だけどよ。無ければ、作ればいいじゃねぇかよ。オマエらが、『どどーん』と、『世界を繋ぐ【陣】』ってヤツをよ。――あんだけ、『トンデモな夢機体(禁止キャラ)』が作れるんだ、『世界を繋ぐ【陣】』ってのも簡単だろ? ラクショー、ラクショーだ」

 『……』、『……』と二人が『また言ってる』ってカンジに沈黙。

「どうしたんだよ、急に黙りやがって?」

「……はぁ。バカにつけるクスリは無いわね。『メイド』説明してやって」

 『はぁ……』と『メイド』が『どう説明したらいいのか』と呟きながら、

「あのですね、『若造』さん。『機体を動かす【陣】』と、『世界を繋ぐ【陣】』は、『別物』です。『機体を動かす【陣】』は、今まで、『研究され尽くした技術』で、『構造と性質』の『強化及び変化』、『魔力回路』の『構築』・『架橋』・『昇華』です。『全ては原因があって結果がある』という法則に従っています。――つまりは、『因果律』によるところです。しかし、『時間』・『空間』・『次元移動』は『全く別の概念』です。そもそも、そこに『なかったものが突然現れる』わけですから、『無から有を生み出す』ようなもの。極端なことを言えば、『私が別次元に移動』した場合、『私を構成していた物質』は『どうなる』んでしょうか? ――『私が元々いた世界』では、『私という物質群』が消えます。一方、『私が現れた世界』では、『私という物質群』が増えます。――これは、『質量保存の法則』に明らかに反しています。増えたり、減ったりした分、『世界そのものに歪み』を起こし、『世界の統合性』が取れなくなり……。最悪、『両方の世界が崩壊してしまう』かと。――はっきり言って、『トンデモ理論』なんです。『理想』で『空想』で『夢想』の『夢幻』で『作り話』で『フィクション』で、『虚構』で、『粉飾』、『偽造』、『捏造』、etc」

 《わかったかい、少年よ(Do you understand)?)》と、『メイド』が何故か、『決めポーズ(ジョジョ立ち)』しやがる。

 ――色んな意味で『時が止まっちまった』ぜ。

「――スゴイ顔して、止まってるわね。『理解の範疇』を超えたってカンジかしら。やっぱ、コイツには難しすぎたわね」

 あぁ、範疇を超えてるぜ。

 だけど、『たった一つシンプルな答え』がある。

 ――だから、オレは宣言する。

「でも、オレはここにいるじゃねぇか! いくら、ありえねぇって言われてもよ。オレは現にこうして、『ここにいる』! 動いて、話して、考えて、オマエらと接してるじゃねぇかよッ! そんなオレは、何なんだよ? オマエらの言うように、トンデモなのかよッ?」

 『それは……』と『メイド』が口ごもる。

 だから、オレはダメ押しをする。

 ……実際、そうじゃねぇのか?

「証明されてるか、されてないか、なんてのはシラネェがよ。オレがここにいる事実は変わらねぇ! 『理屈なんてこじつけ』はなぁ、『結果の後についてくる』もんだろうがよッ! 『結果に合わせて、無理やり納得いく』ように、『誰かが疑似科学(屁理屈)こねる』もんだ! ――『我思う、ゆえに我あり(オレは、ここにいる)!』。だから、きっと、必ず、『世界を繋ぐ【陣】』ってヤツがある! ――知らねぇなら、探せばいい。――無ぇなら、作ればいい! そして、オレが正しいってことを証明してやらぁッ!」

 『……』と『猫嬢』が、沈黙。ただし、その『金色(こんじき)双眸(ひとみ)』は、オレを外さない。

 『……』と『メイド』が、オレと『猫嬢』を心配そうに視線で交互に見る。

 ――これで通じなきゃ、終わりだ。

 コイツらが、なんと言おうと、『勝手に自分で探す』までだ。

「……フンッ。バカにつけるクスリは、ホント無いわね。バカにいくら言っても、無駄だわ」

「このクソ猫ッ!」

 ――やっぱり、ダメだった。

 それだけでなく、またバカにしやがった。

 なんだ、このバカ猫、もう付き合いきれないぜ。

 《『メイド』!》と、『猫嬢』が『有無を言わさない圧倒的な強制力(プレッシャー)』で呼ぶ。

 《……は、はい!》と、『メイド』が『ビクっ』と身を正す。

「たしか、『(ジジ)様の書庫』に『【陣】に関する本』があったわよね?」

「……えぇ。詳しい著者と出典は忘れましたが……。『ジジ(ジジ・クロウリー・ヴォルデモート)』は、『錬金術や【陣】』だけでなく、『非常に幅広い学問』に『大変長けた方』だったとお聞きしています。『魔導書(グリモワール)』や『禁書(タブー)』の類は、数え切れないほどあったかと。――もちろん、『ジジ様本人』が、書いたものもあるはずです。それが何か……?」

「――我が血統は、『異端』よ」


(たん)より(はっ)して、()なる(みち)(あゆ)む】


 『猫嬢』と、『屋敷全体』からそんな【自己主張】が巻き起った気がした。

「『ジジ様』のことよ。『生半可な魔法や【陣】(こてさきのあそび)』を研究しているわけない。きっと、『世界を(つな)ぐ【陣】』ってのにも手を出してるはずだわ」

「えぇ……、たしかに、『ジジ様』は『著名で勇猛』な方。――というか、『悪名高い違法者(マッド・アルケミスト)』でした。『自分こそ神』だと言って、『雲の王国』を作ろうとしたぐらいですから。……やりかねません。『世界を繋ぐ【陣】』に手を出してても不思議はありません。ぶっちゃげ、『異世界征服』を考えてたフシもあったような……」

 《決まりね》と、『猫嬢』がオレを視る。その有無を言わさない『金色(双眸)』で。

 《やれやれ、『お嬢様』お供します》と、『メイド』が、オレに満面の笑顔を見せる。

「『猫嬢』、おまえ……」

「ふんっ、勘違いしないでよね。『愚民から借りっぱなし』は、『私の流儀(スタイル)』じゃないの。バカに納得させるよりは、『実物提示』で分からせたほうが早いってだけよ。――それに、私も興味があるわ。アンタがいたって言う『異世界が本当にあるか』どうか。もしあるってなら、見てみたいもんよ。――『人が支配し』、『猫が支配されている』世界ってのを。……まぁ、どうせ、アンタみたいな『バカばっか』なとこだと思うけどね」

「ハッ、見せてやらぁッ! イヤってほど、見せてやるぜ。後で、吠え面かくじゃねぇぞっ!」

「……もぅ。二人とも。すっかり【陣】があるって気になってるんですから……。それじゃ、『書庫』まで、ご案内しますね」

 《あぁ、よろしく頼むぜ》と、オレは、『快く』応じる。

 《フンッ、汚い靴で屋敷を汚さないでよね》と、『猫嬢』が、威張りながらに前を歩く。

「はいはい、二人とも、そこまでにしてください。――とりあえず、書庫行きますから、ケンカの続きは、『また今度』にでも――」

 意気投合、これで万事解決だ。

 『ハッピーエンド』が見えてきたぜ。

 ……だけど、上手くいっていいものか?

 なんだか知らないが、『一抹(いちまつ)の不安』ってのを、オレは感じた。

 それはとてもイヤな不安で……。

 《なっ、何、何なの!》と、『猫嬢』が驚いた。

「――おい、とっと終わらせるぞ」

 って、『いかつい』声をさせながらに、『ガタイのいい』男が登場。

 《へいっ!》、《わかりやした!》と、男たちが、続々と入場。

「アンタたち、一体、何なのよッ!」

「えっほ、えっほ」

「おい! こっちはコレでいいか?」

「あぁ、大丈夫だ。続けてくれ」

 って具合のガン無視。

 オレたちがいることなんて関係なく、同じタイプの『緑色の作業着』を着た男たちが、屋敷の至る所に『赤い札』を貼り出した。

 《やめなさい、アンタたち!》と、『猫嬢』が飛び掛る。

 《そうです。やめてください!》、《『騎士団』を呼びますよ?》と、『メイド』が焦る。

 《何が起こってるんだ?》と、『困惑気味』に『柄にもなく』、『冷静分析してる』オレ。

「おい、野郎共! 『作業』が遅れてるぞ、急げ!」

 ――後ろから声がした。

 と思ったら、『ひょいっ』と、担がれた。

 《えっ》、と思ったら、そのまま担がれたまま、オレは連れて行かれて……。

 《きゃっ、ちょっ、どこ触ってるんですか!》と、『メイド』が『ジタバタ』しながら。

 《だから、何が、どうにゃってんのよ!》と、『猫嬢』が『舌を噛み』ながら。

 《ちょっ、いきなりなんだ、オマエら!》と、オレは『貞操の危険』を感じながら。

 ――突然現れた男たちが、『オレたち』を猛然と、連れ去った。

 なんか、『ラグビーボール』の気持ちがわかった気がした。

 だって、めっちゃ『がっちり』、『固定(ホールド)されてる』んだぜ……?



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