20◆◇◆場所:『疑惑の中心で、真実を叫ぶ』……語り手:『若造』
◆◇◆場所:『疑惑の中心で、真実を叫ぶ』……語り手:『若造』
「ぬぉーーーッ! 私の全記憶を総動員しても、こんな『マヌケ面』は見たことないぞ、一体誰だァーーーッ!」
「うるせぇ、『マヌケ面』は余計だ!」
『司会』の『マイク』に対抗して叫んでみた。
けど、やっぱり、『マイク使い』には、敵わない。
つうか、『首絞められて』て、叫べるだけスゴくない?
「ぐっ……」
「てめぇ、自分のしたことがわかってねぇのか! どれだけ大それたことをやってると思ってんだ、えぇっ!」
この『隻眼(フック船長)』は、まだ怒ってます。
「ぐっ、くそっ……。だっ、大それたことって何だよ!」
「知らばっくれんじゃねぇッ! アリーナでの『代戦行為』は禁じられてるだろうがよッ!」
初耳です。
……全くの『初耳』です。頼まれて戦っただけです。
だから、『精一杯』、この気持ちを込めて歌います。
「『代戦行為』? 何だそれ? 『大山』に登ったことすら無いぜ?」
「てめぇっ! 『代戦禁止法』を知らないってのかよ!」
止めてください、マジ首、絞まってるんですよ?
ほらっ、意識が飛びかけてて、『内面描写ヘン』ですよね?
「『猫同士の決闘』が決まった時に決められた闘技者を、後で代えるってのは『代戦行為』だろうが! ケガしても、死んでも、何があっても、代えちゃならねぇ! 『決闘に重要性』を持たせた、『この国の法律』だろうが! 知らねぇってのかッ!」
初耳です。
……えぇ、『マジ初耳』なんですけど。
初耳ばっかで、『騙』されっぱなしで、そろそろ『キレていい』ですか?
まず、『首の戒めを外す』ために、思いっきり殴りましょう。
『爽快な音』と『衝撃』が聞こえたんで、この気持ち、歌います。
「知らねぇッ! あぁ、そんなの知らねぇよッ! 全くの初耳だ!」
《てめぇ……》とか、唇に手を当てる『眼帯野郎』は無視だ無視!
今のオレには、『猫嬢』しか見えない。
『感嘆符連打祭り』で、『表現が陳腐』って言われても関係ねぇ!
「どういうことだよ、『猫嬢』! 説明しやがれッ!」
「もぅ、バカ! せっかく、上手くいってたのに、アンタのせいで『計画』台無しよ!」
「うるせぇっ! 『メイド』との約束で、代わりに戦ったが、『犯罪』だなんて聞いてねぇぞ!」
「その位、空気読みなさいよ! もぅ、ホント『あったま悪い』んだから、大体、アンタは――」
「おっと、なんだか仲間割れが始まってるぞ。『合意でのランブル』じゃなかったのか?」
『司会』が『ちょっと、大丈夫?』とばかりに、仲裁を入れてくる。
「しかーし、合意だろうが、そうでなかろうが、『猫嬢』がやったことはれっきとした『犯罪行為』だァッ!」
――いや、仲裁じゃなくって、『止めないと退場』って警告のほうか。
「『皇国法第十三条ランブル代戦禁止法』に十分、『違反』している。状況が状況だけに、かなり厳しく罰せられるはずだァッ! ……んっ、ここで『タイミングを見計らった』ように、『評議会からの通達』だ。フム、何々……?」
『司会』は、『聞こえるんです』って【自己主張】を放つ『耳元のマイク』に手を当てながらに、『ぶつぶつ』と。
「なぁーーーーんとッ! 『猫嬢』の罪状はーーーッ! 『第三級皇国法違犯』だーーーーッ!」
「なっ、『第三級皇国法違犯』ですってぇ!」
場内のどよめきよりも、『猫嬢』の『キンキン声』のほうがでかい。
《ちょっ、それってあまりに酷すぎない!》と、『不平不満☆爆発』の『猫嬢』。
《……えぇ、イって『六級ぐらい』だと思ってましたが》と、『メイド』がやれやれ顔。
「オマエら、やっぱ『犯罪だと知ってて』やってたのかよ! オレの『無犯罪記録』に、『前科』がツいちまったじゃねぇか!」
《えっ、そうなの?》、《あの顔で?》、《いや、冗談だろ》、《指名手配の顔だって》、《ほら、オレ手配書持ってるぜ》とか『適当なこと』を観客のクソ猫どもが。
「『猫嬢』サイドから抗議の声が上がっているが、今回のケースでは十~分当てはまる!」
「つうか何だよ、その『皇国法違犯』って? 『第三級』ってどんな罰則だ!」
《ちっちっち、『無問題》と、『司会』が制す。
「場内のみなさんにも、『法律なんてクソくらえ』な人がいるでしょう! そこで私が、至極、『簡単に説明』して差し上げましょう! そして、法律に詳しい聡明な方は、一緒に叫んでちょうだい!」
《3、2……》と指で、『カウントダウン』させながら。
「1ッ!」
ジャストのタイミングで、猫が叫ぶ。
《『爵位剥奪』ァーーーーーーーッ!》と、場内が一心同体。
「『爵位剥奪』だってッ!」
「加えて、今回のランブルも『無効試合』! 『猫嬢』らの『宣告(絶対遵守)』は破棄されますッ!」
「にゃんですって!」
『猫嬢』驚きすぎ。
驚きすぎて、ちょっと、噛んでるぞ?
「……嗚呼、何と言うことだ。やっぱりボクとキミとの間は、誰にも引き裂くことは、できないんだね」
うぉっ、また、ウザイのが『復活』しやがった!
「嗚呼、なんてことなの……。この私が『爵位剥奪』ですって? せっかく勝ったのに『逆らえば死ね(宣告)』は破棄……? そして、また……。このクソ猫に『追い回』される毎日が始まるのね……!」
あっ、『猫嬢』が倒れた。
「――お、おいっクソ猫ッ!」
目を回してるってレベルじゃねぇ。
……『泡』を吹いて倒れやがった。
『自業自得』で、いい気味だけど、ちょっと待て!
《お、お嬢様ッ!》と、心配そうにかけよる『メイド』。
「フハハッ、こりゃあ、良い。『違法者』には、お似合いの末路だ。せいぜい、頑張りな。フハハッハハ、ハァーーーハッハッハ!」
『黒ひげ』野郎が、オレの肩を叩いて、『さも愉快』とばかりに、歩き去った。
「お嬢様、お気を確かにッ! 『猫嬢』様! 『猫嬢』様ッ!」
『メイド』が悲鳴をあげる。
『おろおろ』ってレベルじゃなくって、『一心不乱』っていう真剣さ。
それを壮絶に感じちまって。
……オレの怒りもどこかに、飛んでしまって。
『何かやらないといけない』と、感じてしまって。
『何かできることはないか』と、考えてしまって。
――ふと、ある疑問が浮かんだ。
これって、『スゴく重要』なことだと思う。
だって、こんなことになった『原因』なんだぜ?
聞いておかないと、オレは正しい行動ができないかもしれない。
――だから、聞こう。
『KY(空気嫁)』かもしれないけど、聞かないと『一生の恥』みたいな気がしたんだ。
「……なぁ、ちょっとイイか?」
「な、なんですか? こんな大事な時に?」
「『爵位剥奪』って何だ?」
「――――ッ」
『メイド』が、『スゴい顔』をした。
どのくらいスゴいって?
ただ『スゴい』としか言えない、『比喩できない』顔だった。
――それがオレが感じた『最期の景色』だった。
――分厚く、硬いもので、殴り飛ばされた。
【『死ね』と殺気のこもった一撃で】
薄れ行く記憶の中、聞こえるものがあった。
「お嬢様ッ! お嬢様しっかりっ!」
という『メイド』の嘆き。
それと、『猫たち』の呻き。
《犯罪者は逝ってよし》、《生きてんじゃネェよ、ゴミ虫》、《馬に蹴られて死んじまえ》、《生まれ変わってもまた死ね》、《そして、また死ね》、《いや、ずっと死ね》、《もう生まれてこなくていいよ》、《死んだままでいてね》、《死ん……ぜ》、《死……だ》、《……》、《……》、《かゆ……》、《……うま》。
【『BAD END』 No.百十一『メイド』に殴られて、死す】
【お金が世界を救います ~大切なモノって何ですか?】(終)




