02▼場所:『人通りの多い街道』……語り手:『若造』
◆◇◆場所:『人通りの多い街道』……語り手:『若造』
「よっしゃ、終わったぜ!」
って叫んでも誰も気にしちゃくれねぇよな。
でも、『叫ばずにはいられない』って気持ちもあるもんだぜ?
急遽舞い込んだ『依頼者』の『助太刀』がようやく終わったってんなら、祝いたくなるもんだ。
今時、『DOS攻撃(田代砲)』で落とされる『サイト』の『復旧』なんて、つまんねぇ仕事だぜ、まったく。
『ペンタゴン』とか、『国防省』とかの『恥ずかしい穴』見つけるほうが有意義で楽しいっての。
まぁっ、終わっちまったんだから、すっきり爽快。
「帰って、メシ食って寝るぜ! いやっほっう」
って叫びたくなるもんだ。それが自然ってヤツだろ。
あぁ、それにしても、『どいつもこいつもしけた顔』して歩いてるぜ。『不景気』なのはわかるけど、せめて顔ぐらいは『景気良さそう』にすりゃいいのによ。
そりゃ、今が週の初めの月曜日。しかも、朝。
健全なフツーの学生は『うわっ、今日から学校かよ』って気分だろうし、『家庭を切り盛りする大黒柱』のオヤジさんたちは、『嗚呼、今日からまたクレーム受けながら、上司とお客様に頭を下げないと』ってことで、『ブルーになる』のはわかるけどよ。
「せっかくの月曜日なんだから、『テンション上げて一週間乗り切ろうぜ』って思おうぜ!」
うぉっ、思わずまた叫んじまった。
……いかんいかん。
近くにいた女子高生に、『うわっ。変なオッサンがいるんですけど、キモっ!』って顔されちまったぜ。
人を見た目で判断しちゃダメだぜっていうか、オレは若いんだ!
つうか、オレとそんなに歳変わんねぇと思うぞ!
――って、おいおい。いきなり友だちに『メールボム』してんじゃねぇよ。オレがカッコイイからって、それは『ナンセンス』ってもんだぜ。
まっ、『仕事に向かう人』の流れと、『仕事終わったんで帰宅しますよ』なオレじゃ、浮いてても仕方ないし、『別に減るもんじゃねぇからいいか』と結論。
そんなことより、さっさと帰ろう。
「うおっ!」
突然の音。
何か『トンでもないモノ』がぶつかったような激しい音と地響き。
周りの『通勤』・『通学』・『通行人』たちも驚いてる。
「……またかっ!」
今度はさっきよりも近い。
最初は断続的だった音が、徐々に近づいてきてる気がする。
まるで、派手に『血税使ってパレード』してるような『軍隊様の行進(選挙カー)』が近づいてきているような錯覚。何やら遠くのほうでは、『悲鳴や喧騒』が聞こえてくる。
「……ちょっ、一体、何が起こってるんだ!」
そんなオレの問いかけに、すぐ答えがやってきた。
音がする方角から逃げてくる人と一緒に、『ソイツ』はやってきた。
「なんじゃこりゃあああああああぁぁぁぁぁーーーーーッ!」
嗚呼、人ってホントによくわからないモノに出会ったら、そう叫んじまうんだな。
だって、『地面が空に吸い込まれていく』んだぜ?
――今まで晴れ渡ってた雲ひとつ無い空が急激に黒へと染まり。
――曇天が見る見る、街を覆い、朝日を飲み込んで行き。
――異変に気づいた人が怪訝に首をかしげた刹那、激しい風が街を殴打する。
――人家や車、道路や街路樹なんて関係無しに、暴風が吹き荒び、巻き上げ、飲み込み、破壊する。
それはまるで、『巨大な恐竜』が、『頭突き』をしながら猛進し、打ち上げられた破砕物が『黒雲の掃除機』に吸い込まれていくような光景。
――圧倒的な『破壊』という名の【自己主張】。
『壊す』・『吹き飛ばす』・『砕く』・『飲み込む』・『食らう』・『食らい尽くす』・『破る』・『巻き上げる』・『突き抜く』・『押し通る』・『邪魔させない』という『言霊』を込めて、凝縮して、煮詰めて、圧縮しきった、黒々しい【自己主張】。
しかし、ただの一片も『殺す』という主張無しに、それを完遂しちまう『破壊』の一語。
「まずい、逃げねぇと、やべぇ……」
そう、オレが思ったときには、遅かった。
――というか、巻き込まれた後にようやく、そう呟いている自分がいることに気づいた。
「あまりの『ハプニング』っぷり過ぎて、状況説明、全然追いつかないぜ、クソ野郎!」
既に、後の祭り。
――人々の想いなど、いざ知らず、『破壊』を主張する黒雲が街を駆け抜けた。