17◆◇◆場所:『激闘の後の独演会(インタビュー)』……語り手:『若造』
◆◇◆場所:『激闘の後の独演会』……語り手:『若造』
「さてさて、両者、良い具合に感傷に浸ってるが、そろそろ『メェーンタァイム』といかせてもらおう。皆さん、お待ちかねの『ショータァーイム』!」
『司会』が適度な間を取りつつ司会進行。
見た目通りに、『伊達に司会暦長くないですよ?』って【自己主張】を感じるぜ。
「勝者こそ『正義』! 勝者こそ『絶対』! 敗者は全てを『甘んじろ』ッ! 我々、観客は、『勝者の言葉』を待っているッ! 今日の勝者は、誰だッ?」
《『猫嬢』ッ!》と、観客が、声を合わせて叫ぶ。
「敗者は、誰だーーーーーッ!」
《『王子』ッ!》と、観客が、また叫ぶ。
「オーケー、オーケーッ! みんなよーくぅ、ご存知だっ! それでは聞こう! 『勝者の意見(正義)』を語ってもらおう! 『求婚の破棄』を今ここでッ!」
《今、ココでッ!》と、観客がまたもや。
……コイツら、やっぱり、ノリよすぎ。
って、この勝負って『求婚』の話だったのかよ!
今更ながらに、『スゲェ理由』で、オレ戦ってるぜ……。
そんなオレの『やれやれ』って気持ちを他所に、全体の視線が、『猫嬢』に注がれる。
『猫嬢』は、頷くと、『アリーナ中央』へと歩を進めた。
なんか、黙っていると、たしかに、『貴族(?)』に見えなくもない。
「――」
『圧倒的』で『尊大』な存在感。
《ハッ、愚民め》、《はい、愚民です》、《愚民と呼んで頂いて光栄です》、《足を舐めさせてください》って『四連コンボ』を食らいながら、場内が沈黙し、固唾を飲む。
「……。いいわ、聞きなさい。『愚民』ども! 『勝者』である、『私の言葉』を、その汚れた『耳』で聞きなさい。――『敗者』へ紡ぐ、『言の葉』を聞いて、末代まで語りなさい! 『生き証人(奴隷)』として、『私の言葉』をありのままっ!」
――誰も何も言わない。
ただ、聞いている。
「我、『猫嬢』は、ここに命じる」
――誰も何も言えない。
ただ、聞かされる。
「『王子』よ――」
《跪け》、《屈服しろ》、《御託はいらない》、《黙って聞け》、《でなければ死ね》、《『はい』か『イエス』で答えろ》って『強制』させる【自己主張】が、『濃縮』され、『圧縮』され、『解放』される。
次の一語を持って、全ての【自己主張】が解き放たれた。
【今後、一切、私に付き纏うなッ!】
「私に近づくことも、『話しかける』のも、『手紙をよこす』のも、『プレゼント』も、『私への関りの一切』を禁じるッ!」
……うん。ものすごい『拒絶』の言葉だった。
傍目で聞いてるオレにもキツイ。
これ、この人数(猫数?)の前で、言われてる『王子』ってのはどんなに、ツラいんだ。
案の定、『ぐっ……』と『王子』が押し黙る。
……その気持ちは、痛いほど分かる。
これはツラい。
「どうしたの。返事が聞こえないわよ、『王子』?」
「……。そ、それはあんまりじゃないか、『猫嬢』。ボクは、君のことをこんなにも……」
「ハッ、『負け犬』の分際で、私に意見する気? 『腐っても皇族』でしょ。『勝者の宣告(絶対遵守)』に従いなさい! 男ならなおさら、潔くっ!」
あ、この人数の前で、『正論武装(まともな理由)』で、攻撃された。
オレなら謝るかもしれない(場合によるけど)。
「……ぐっ、わかった。キミが正しいよ、『猫嬢』」
『がっくり』と、ホントに『がっくり』と、『王子』は肩を落とした。
《おい、なんか。カワイソウだな、アイツ》と、一部始終を遠くから見ていたオレ。
《いえっ、そんなことありません》と、オレの隣で見ていた『メイド』が返す。
「彼がやってきたことを思えば全然、全く、『当然の報い』です」
「……そういうもんか?」
「えぇ、そうです。だって……」
《だって?》と聞き返すオレは、『メイド』の心底、『迷惑そう(嫌そう)』な顔を見た。
「ものすっごく、ウザいんですよ? 彼のことだから、きっと……」
『メイド』は答えなかった。
自分の口からじゃ言えない。代わりに、『猫嬢』たちを見るように促された。
だから、舞台の真ん中を見た。
「……『猫嬢』。キミの要求は受け入れる。今後、キミに近づくのは止そう。――話しかけることも、手紙を送るのも、プレゼントも……今後、一切、キミに関わることを止めよう。……実に悲しいことだが、キミに従おう」
「殊勝な心がけね。実に嬉しい限りだわ」
「……嗚呼。なんてことだ、何故なんだ。ボクとキミの間には、いつも『困難』が付き纏う。――ボクがこんなにもキミのことを思っているのに、ボクとキミの間にはいつも邪魔が入ってしまう。そして、もうキミと関わることも許されない。ボクはどうやって生きてゆけばいいんだ……。キミという、『人生の輝き』を失って、一体、ボクには何が残るんだ……」
……アレ、おかしくないか。
なんか、『悲恋劇』が始まってるのは、キノセイ?
「キミとの関係を断っても、きっと、キミのことを考えてしまうだろう。考えるな、と言うほうが無理さ。――キミはそれほどまでに、『ボクの心』に住みついてる。心の中のキミは、無邪気な笑顔で、ボクを悩ませる。――たとえ、他の素敵な女性と出会ったとしても、キミほどの人はいないだろう。……決して届かない、キミへの想いを抱いて、ボクは生きていくしかないんだ。――キミには幸せになって欲しい。キミの要求……。いや、キミとの『約束(誓い)』を守る。それがボクという敗者からの、キミという勝者への『賛辞』だ。
『……』、『……』、『……』、『……』、『……』と観客全員の時が止まった。
みんながみんな棒立ちで固まっている。全部の時間を合わせたら『一生分の時間』より余裕で長そう。
……あえて、オレが、この『止まった時』を動かしてもいいですか?
えぇ、ツッコませてください。
――コイツ、とんでもない『バカ王子』だっ!
「これは、なんという『熱烈ラブコォォール』ッ! 私も、『猫嬢』の心中をお察しするぞ!」
あっ、『司会(本業)』がツッコんだ。
『オレ(なんちゃって)』が心の中での呟いたのと違って、『盛大にマイクで』、ツッコみやがったぜ。
『じー』って視線を『メイド』から感じた。
オレと彼女の目があった。
「……」
《……たしかに、うぜぇ》と、脱力するオレ。
《でしょ?》と、真顔で、『女の敵』を見るような『メイド』。
「……おい」
なんか声がしたので、振り向いた。
オレたちとのテンションとは、別で、『ぎらついた殺意』を向ける男がそこにいた。
「ん? オマエは確か……」
……あれ、こんな人とオレ、会ったことないぞ?
いきなり、『初戦』に勝ったオレの『ファン第一号』ってヤツか?
《『隻眼』ですよ、『若造』さん》と、小声で『メイド』。
「そうそう、それだ。忘れてたぜ。で、オレに用か?」
「……フン。勝者だけあって余裕だな、『技皇』。まさか、この俺がお前なんかに負けるとはな」
……ん? オレの名前は、『若造』。
いや、『神名和馬』なんだが……。
そういや、さっきから、ずっと間違われっぱなしじゃね?
「『技皇』なんて知らねぇぜ。つうか誰だ、それ? って、イテッ」
――突然、わき腹が痛い。
見れば、『メイド』の『肘鉄』が原因らしい――。
「何言ってるんですか、『貴方』の事ですよ? 『勝者なんですから』謙遜しなくても!」
褒められた。
なんか、やけに『慌ててる』が、『褒められる』と『嬉しい』もので。
「……あぁ、そうだったな! オレが勝ったんだよな。『技皇』である、このオレが! でも、オマエも十分強かったぜ。最初は、ヒヤヒヤしたもんだ。なぁ、そうだろ、えっと、『隻眼(伊達政宗)』!」
「……『隻眼』だ。お前とは長い付き合いのはずだが、……忘れたのか?」
おっと、間違えちまったぜ。
『隻眼キャラ』だから、被っちまった。いかんいかん。
「おっと、スマン! いやっ、そのなんだ。オマエ強いからさ、緊張しちまってだな。……べ、別に『名前』を知らなかったなんて、そんなんじゃないぞ!」
うん。『強かった』のは本当。
『名前を知らなかった』のも、本当。
「……フン、抜け抜けと軽口を叩きやがる。前からお前とは一度、闘ってみたかったが、こうも実力差があるとは……。正直、驚いた。驚きすぎて、むかっ腹が立つぜ。――今、この場で、殺してやりたいぐらいだッ!」
……おいおい。
名前を間違えたのは悪かったが、そりゃいけねぇぜ。
「ちょっと、そりゃ物騒だろ……。そうアツくなるなって。今回は運が良かっただけだって! 次は分からないって。マジでッ!」
「フンッ、どうだか……。そう言ってる割には、『ヘルメットも外さない態度』が気に入らねぇ。その下じゃ、俺を馬鹿にして笑ってんだろうが!」
「んっ、『ヘルメット』……? あぁ、そう言えば、そんなのしてたっけな。通りで、さっきから前が、『ほんのり黒い』と思ったぜ。……えっと、どうやって外すんだったっけな。ここがその、こうなってて……」
「わっ、ちょっ、『技皇』さん! 『ヘルメット』は、その……。外しちゃ、ダメ……」
なんか『メイド』の声が聞こえた気がした。
けど、ヘルメットを外す『ガサガサ』って音で、よく聞こえないぜ。
うわっ、なんか掴まれた。
《『メイド』、邪魔すんなよ》と、オレは手を払いのけて、
《ダメッ、そこは、ダメですからッ!》って、しつこい『メイド』。
「……とっと。ここをこうやれば……。よし、外れた! ふぅ~、さっぱりしたぜ。やっぱ外の空気がうめェなッ!」
「あーーーーーっ! 『若造』さん、ちょっとっ! な、に、してるんですかッ!」
そういうなり、掴まれた。――しかも、顔ッ!
「うわっ、オマエ! 何って、そりゃこっちのセリフだろうがっ! つうか放せ! 前が見えん、つうかイテェッ! 『オレの眼球』、『眼球』、えぐってるぅーーーーーッ! オマエは、『眼球抉子』かよぉぉぉぉっ! 」
痛い。
めっちゃ痛い。コイツ、なんて『バカぢから』出しやがる!
「きゃっ! もぅ、暴れないでください! ちょ、うわっ、そんなとこ……んっ……ダメ、らめっ……いやっ、ヘンなとこに手をつっこんじゃ……」
――エロい。
なんかやたらと、『エロい』。
視界を塞がれて、声だけ聞くと、めちゃくちゃエロい。
……いや、これは『不可抗力』でだな。
「このッ、ダメって言ってるでしょうがッ!」
「フッゴホゥッ!」
……信じられないだろうが、今あったことを、ありのままに言うぜ。
――一瞬だった。
一瞬、世界が明るくなったと思った。
そう『知覚した瞬間』、ぶっ飛んでたぜ。
オレは、分厚く、硬いもので、『死ね』と言わんばかりに、『頭頂』、『延髄』、『足払い』と流れるような『凶悪コンボ』を決められて。
――『意味でも言葉でもなく』、『魂で悟ったぜ』。
『物理的な損傷』が『甚大』、『死(DEATH)』!
「……もっ、いきなり何するんですかッ!」
「何って、そりゃオマエだろうがッ!」
あれ? オレ生きてるし。
もしかして、オレ、打たれ強くなってきてる?
『ボケ担当』は、ツッコまれて強くなるってか?
《おい、お前……》と、『隻眼(伊達政宗)』がツッコんだ。
「ほら見ろっ!『隻眼(クック船長)』も、あきれてるだろうが!」
「あきれてるのは、『若造』さんに対してですっ! また、名前『間違ってるし』! 私は悪くないですからっ!」
「オレは悪くねぇッ!」
「いいえっ、悪いです!」
「悪くないっ!」
《お前ら、ちょっといいか……?》と、『隻眼(ブラッドレイ大総統)』がお怒りです。
「なんだよっ! 邪魔すんじゃねぇ!」
《お前は、誰だ?》と、『隻眼』が、分かりきったことを聞く。
《『若造』さんです!》と、『メイド』が声を張り上げる。
「そうだ、『若造』だ! 文句あるかッ!」
思わず、オレも大声を出しちまった。
「大アリだッ!」
……あれ?
なんか、『隻眼』も大声出しちまってるし!
――お前ら、『カルシウム足りてない』んじゃね?
◆◇◆場所:『激闘の後の敗北者(負け犬)の独演会(意見陳述)』……語り手:『猫嬢』
「……ほんと、『カルシウム』が欲しいわ!」
「嗚呼、『猫嬢』。キミはなんて、罪深い人なんだ」
「……はいはい、『そうですね』」
って、この仕打ちは何なの!
私は、勝ったのよ。勝負に勝ったの。
それなのに、いつまで、こんな場所で、コイツからこんな話を聞かされて……。
《……んっ》、《何か向こうが騒がしい》と、『王子』が『口説き文句』以外のことを言った。
「『声』……?」
と、私は、『反復応答』。
――あぁ、たしかに声がする。
それも、やたらと言い合ってるような『口喧嘩(言い争)』。
しかも、どこかで『聞いたことある声』が二つほど。
「って、あのバカ……ッ!」
――ちょっと、『私の計画』、台無しじゃないの!




