10◆◇◆場所:『ちょっと暗めで、こざっぱりした部屋』……語り手:『若造』
◆◇◆場所:『ちょっと暗めで、こざっぱりした部屋』……語り手:『若造』
『着きました。――ここです』
かなり。いや、もうめちゃくちゃな距離を歩いた。
ホントに『競歩でマラソン(ハンター試験)』って思うぐらいに、周りの分からない『無限回廊』の廊下を歩いた。
もちろん、めっちゃ早歩き。
ようやく、たどり着いて、そこにあったドアが開かれたとき、『ゴールした』って感動が満ち満ちて、涙が出そう。
「ん、ここって言うけど、誰もいねぇぜ?」
案内された部屋には、『人っ子一人』いる様子がない。
用心して隠れてるのか?
「ただ今、戻りました」
と、『メイド』さんが、ささっと部屋に入ってドアを閉める。
「あ~、もう。待ちくたびれたわよ」
と、『やれやれ』と、『めんどくさそう』な返事が来た。
なんというか、『若い』というか、『子供っぽい』声というか……
「……すいません、思ったより手間取ってしまって。でも、ちゃんと連れて来ましたよ?」
「ふぅ~ん、その『男』がそう?」
どこからか『視線』を感じる。
あれ、この『分析される』気分は、『既視感』?
「……なんかぱっとしないし、『頼り無い』わね」
「なっ、誰が頼りないって! まさか、オレのことを言ってるのか、あぁ、コラッ!」
と『条件反射』で、怒るオレ。
いやはや、『初対面で大人気ない』ぜ、オレ。
ここは、穏やかにしないと……。
「たくっ、『頭悪い』わね。それ以外、誰がいるってのよ? あんたみたいな『単細胞』、他に居ないでしょ? あっ、『単細胞』だから自分じゃ見えなかったのかしら」
……うん。
大人しくする『必要』なんて『全くない』ぞ。
オレよ、『盛大』にやってよし。
「……てめぇ、言わせておけば! 隠れてないで、出てきやがれッ!」
「呆れた……。出てくるも何も、最初からいるじゃない? どこに眼をつけてるの『フシ穴男』」
「くそっ、そっちかよ!」
右側の隅っこ。
そこは、『ベット(?)』がある位置。
いや、そこに『人』がいたら、絶対気づかないワケがない。
「って。マジかよ……」
「何がマジよ。最初から『全てが本当』だけど。昼間っから、『夢』でも見てたのかしら?」
……あぁ、そこにいた。
間違いなくそこにいた。
「おもいっきし、『猫』じゃねぇかぁぁぁぁぁぁああああああああッ!」
猫がいた。
一匹の『黒猫(バーミーズ?)』がいた。
薄暗い部屋の中で、『金色の相貌』が爛々(らんらん)と光ってる。暗い中で黒って『保護色』は『見えづらい』はずなのに、やたらと『存在感』を感じる。
なんというか、『私、偉いんですよ』って『ふてぶてしい』カンジの『尊大』な【自己主張】。
「うっさいわね! いきなり大声出さないでよね。まぁ、言葉通じてるか怪しいけど」
「しかも、めっちゃ口が、わりぃ……」
「なっ、なんですって、この私が口が悪いですって! 『顔の悪い』『ド低脳』な『人』の分際で。……この『可憐』で、『知性的』で、『高貴』な私が、『口が悪い』ですって!」
「はっ、テメェの口が良けりゃあ、『常習苦情者』も『怪物親』も、カワイイもんだ! 『世界平和』、間違いなし! ははっ、みんなでお手々つないで、『フォークダンス(マイム・マイム)』踊りながらの『愛と平和(ラブ&ピース)』! 『ダンナの浮気相手』とも仲良くできるぜ」
「くぅ~! 言わせておけば調子に乗ってぇーーッ! ――もう許さない」
それが合図とばかりに、猫の『存在感』やら【自己主張】が、イッキに膨れ上がる。
『口の悪い黒猫』を中心に『びりびり』って、『プレッシャー』が巻き起こったと思った瞬間、
【従属の楔よ、其任を果たせ(Subjugate!!)(=おすわり!)】
という言葉を聞いた。
――いや、正確には、『意味』をぶつけられたってのが正しい。
もちろん、ぶつけられる『対象』は『オレ』なワケで。
「……なっ、うおっ! く、く、首が、首がががが、お、お、おおおおおおお」
いきなり、『首輪』が重くなった。
『鉛』なんてもんじゃなくって、百二十キロの『鉄アレイ』に変わったような荷重。
「ちょっ、うおっぅ、さ、さらに追い討ちぃぃぃ!」
首輪が、締まりました。
『真紅』だけど、『黒の万力』のように、『ぎりぎり』という優しさもなしに、一気に『ぎゅぅぅぅぅぅ』と。
ごめん、かなりヤバイかも。
『天国のじっちゃん』が、『三途の川』で手招きしてる。……しかも、なんかめっちゃ嬉しそう。
ナニコレ、『孫に死ね』っていうのか、このジジイ!
「フンッ! 『下賎』で、『ド低脳』で、『ブサイクの代表』が、私を見下すからそうなるのよ。そうやって、『床を舐なめてる(掃除してる)』のがお似合いよ。いい気味だわ」
言わせておけば、このクソ猫……。
とりあえず、『天国のじっちゃん』に、さよなら逝っとく?
「お、オレは……」
「あら、抵抗する気? 『首輪の束縛』には、歯向かえないのに。『バカ』はやっぱり、『バカ』なことをするものね」
『ぷちん』と、可愛らしい音がしましたよ?
えぇ、このクソ猫を、『とりあえず、しばけ』って、『全オレが涙した』。
「オレは、『バカ』じゃねぇぇぇぇえええええええーーーーーーッ!」
「なっ、えっ、ウソっ? 私の『束縛』を破ったですって!」
「オレは、『バカ』じゃねぇえええええーーーーーーーッ! ちょっと、『ドジ』なだけだぁぁぁあッ!」
一歩一歩の『日進月歩』。
クソ猫に向けての、『牛歩の歩み』。
首輪の荷重で、『一歩ごとに床に足』がめり込んでんぞ、テメェ!
「ちっ、バカなだけに馬鹿力出して……!」
再び、『存在の力』と【自己主張】がクソ猫に集まり、意味を紡ぐ。
【従属の楔よ、其任を果たせ(Subjugate!!)(=おすわり!)】
荷重の追加。
二倍? 四倍? 八倍? 十六倍? 三十二倍? 六十四倍……?
――もう何回言ったか、何回喚いたか。
いちいち、数えるのも、めんどくせぇ!
「こぅぉんなん、屁でもねえぇぇええええええーーーーーーッ!」
『バキンッ!』、『ガシャンッ!』、『グワャンッ!』って、『ガラス』の砕け散るような音がした。
それと共に、一気に身体が軽くなる。
「なっ……、な、な、な。なんてヤツなの! 『バカ』には、『常識』ってもんが通じないのッ!」
「はっ、さっきからバカ、バカってなぁ……。テメェのほうこそ、同じこと言いやがって、『バッカ』じゃねぇのかッ!」
おい、さっきまでの威勢はどうしたよ?
怯えて、慌てて、後ずさってんじゃねぇよ!
「一発、ぶちまかしてやるっ!」
「ひっ!」
クソ猫の悲鳴。
まるで、『イタズラしたガキ』が、『母親に許しをこう』ようなご都合めいた鼻声。
「はっ、今更、そんなの許すわけねぇだろうが!」
『グァッシャン』って、粉砕せんとばかりの『衝撃』。
手ごたえばっちり、『直撃コース(ジャストミート)』。
アレ、それなのに、なんか、オレの身体が、空中舞ってない?
つうか、『なっ、ちょっと、え……?』ってカンジに『黒猫』が、『オレ』を見てるんだけど?
うぉっ、きゅ、急に『後頭部』に違和感が。な、なんだこの『既視感』は!
……やっと理解が追いつきました。
えぇ、『激しく殴られた』んですね、わかります。
それも、分厚く、硬いもので、延髄に、死ねと言わんばかりに、強烈に。
「ふぐぅぉおぉぉぉ!」
って、『痛々しく』派手に『壁』に突き刺さった。
うん、『比喩表現』じゃなくって、マジで頭がめり込んだぜ。
「……はいはい、もう二人とも止めてください」
やっぱり、打撃の正体は『メイド』さんだったか。
「ぶっちゃげ、はしゃぎ過ぎ。『お嬢様』も、『ツンツン』しないで。今は、一刻を争う事態じゃないですか?」
ん……、今、さらっとスゴいこと言わなかった?
「そ、そうね。たしかに、『バカ』とやりあってる暇は無いわ」
えっ、今。『メイド』さん、『クソ猫』のこと、『お嬢様』みたいなカンジで呼ばなかったか?
「……この『クソ猫』が?」
「ちょっ、何ぃぃぃぃ……!」
「『お嬢様』、落ち着いて。話が進みませんから、どうか堪えてください。たしかに、見た目は、【アレ】ですけど……」
おっと、『メイド』さん。そんな視線は『不要』らないぜ。
――『オレとキミの仲』じゃないか。
いや、そんなことより、もっと『重要なコト』が!
「『お嬢様』の『束縛』を破るほどですよ。『仲間』にして、『損はない』と思いますが?」
「くっ……。ふんっ、わかったわよ。『メイド(サクヤ・マリア・ロベルタ)』がそういうなら認めてあげるわ」
「さすが、『お嬢様』。ありがとうございます」
いやいや。……なんか勝手に話がまとまってるんだが。
それになんか、やたらと『スゴい名前』が出たのは、キノセイか?
「……なぁ、一体どういうことなんだよ! 『お嬢様』って、猫じゃないかよ。さっき、アンタ、『猫と戦う』って言ってたじゃないかよ? なんで、『猫が仲間』になんだよ!」
『メイド』さんが、『にっこり』微笑んだ。
「えぇ、『猫と闘う』と言いました。でも、『猫が仲間じゃない』とは、言ってませんよね?」
「たっ、たしかに、そりゃそうだけどよ……。猫がウザイから戦うんじゃなかったのかよ!」
「べ、別に『鬱陶しい』だなんて、言ってませんが……」
「いやっ、『あの顔はマジ』にしか見えなかったぜ。ものすごく『不満』そうだった。その、なんだ……。『こき使われてる』って辺りが特に!」
『ん?』と、ちょっと『蚊帳の外』になりかけてた『猫嬢』が視線に気づく。
「ちょっ、『何か訴えかける眼』で、こっちを見ないでよね! ……一体、どんな説明したのよ、『メイド』?」
「……いや、ただ私は『普通』にですよ」
なんか『目が泳いでる』ぞ、この『メイド』!
「まぁ、闘うの『は』本当です。……けど、相手は『お嬢様』じゃなく、『別の猫』です。ちょっと、色々あって、闘ってくれる予定だった人が、『逃げ出して』……。あっ、『今のところ無し』で! それで急遽、『代役』として『私が闘う』って話になって……。まぁ、私が闘っても、結果は見えてました……」
『メイド』が、『しゅん』と縮こまる。
なんか、とても『悲壮』なカンジ。
「……もしかしたら、死ぬかもれません。だから、途方にくれてしまって。……私の代わりに『闘ってくれる人』を探していたんです。――そんなとき、偶然、『貴方』に出会ったんです!」
『びしっ!』と指さされた。
指先は、思いっきりオレを『捕捉』して、『メイド』は沈黙。
「……。……。えっと、『名前』なんでしたっけ?」
「……あぁ、『神名和馬』だ。『カズマ』って呼んでくれ」
ここに来て、ようやく『オレの名前』が登場。
アレ、今まで、誰も『自分じゃ』名乗ってなくね?
「そうです! そんな時、偶然、『若造』さんに出会ったんです!」
「えっ、オレの『名前』、それで『固定』かよ!」
「……何でも、『若造』さんは、『かわいそうな私』の話を聞くと……」
無視られた!
オレの名前、『若造』に『決定』?
「《何でもする!》、《力になるよ!》、《オレに任せてくれ!》って、力強いことを言ってくれました。……私はどんなに勇気付けられたことでしょう。――ですよね? 『若造』さん」
「あ、あぁ……。た、たしかに言ったが……」
思わず、力なく返事をしてしまった。
……何、この『熱弁大会』?
むしろ、『逆転裁判』で覆されるほう?
「そう! だから、『進んで首輪』もしてくれました。闘うために、『自分で』、『自ら』、『快く!』。この『忠誠の証』である『首輪』をつけてくれたんです!」
「いやっ、『首輪は狩られないため』につけただけで……。って、おい! 『忠誠』って何だよ。アンタも『狩られた』かなんかで、つけたんじゃねぇのかよ!」
「えっ? 私は『自分でつけた』と言いましたよ? 私は、『お嬢様』の『メイド』ですから、『忠誠を誓っているのは当たり前』です」
……なっ、話がなんかおかしくないか?
「ちょっ、テメェ、はめやがったな……。オレを騙しやがったなッ!」
「騙してません! 『人聞きが悪い』です……。私は『本当』のことしか言ってませんし、ウソは言ってませんよ?」
「……ホントに?」
やり取りを見ていた『猫嬢』が、『じと目』で、『メイド』に聞く始末。
「たぶん、そのはずです! ――って、『お嬢様』、『どっちの味方』ですか……!」
「いやっ、私は別に……」
なんか、『ドンマイ』ってカンジの視線を『猫嬢』から感じるぜ……。
「くそっ、納得いかねぇ! こんなん、まるっきり『詐欺』じゃねぇかよ。オレは降りる!」
バカだろ。バカ過ぎるぜ。
全然、話が違うじゃねぇか。止めだ。止め。
さっさと、『首輪』を外してだな。
【『若造』は首輪を外そうとした。しかし、首輪は外れなかった】
「ぬあっ、なんだ今の『説明文』は!」
【『若造』は首輪を外そうとした。やはり、首輪は外れなかった】
【『若造』は首輪を外そうとした。やはり、首輪は外れなかった】×百○八。
さすがに見かねた『猫嬢』が、口を開く。
「無駄よ。『忠誠の首輪』ってだけあって、絶対外れないから。もし、無理に外そうとしたら……」
「ぐぼぁっ!」
「もんのっ、スゴく重くなる」
「……さ、先に言えよ!」
とりあえず、床にめり込みながら、ツッコんどく。
そんなオレに、『メイド』が、とても悲しそうな顔で見つめてきた。
「……『若造』さん。『忠誠を反故』にするなんて『最低』です。……守れないなら、最初からしないでください」
「違うだろ。『首輪は騙されて』つけたんだよ!」
「ヒドい……。騙しただなんて……。私、そんなつもり『は』、全くなかったのに。『若造』さん、『困ってる私』に言ったじゃないですか? 《何でもする!》、《力になるよ!》、《オレに任せてくれ》って。アレも『ウソ』だったんですか?」
「いやっ……あれは……」
「……できない約束なんてしないてください。軽々しく、口にしないでください……。『私の純情』踏みにじって……! 『命の恩人』に向かって、ヒドいです……」
一呼吸。
この世の悲しみっての溜めに溜めるべくの一呼吸。
「……『若造』さん、『サイテー』です」
直球が、『ど真ん中ストレート』。
もちろん、悪い意味で、オレの『良心を粉砕』。
「男の風上にも、風下にも置けません。『恩を仇で返す』なんて、人のすることじゃありません。……人でなし」
『もうやめて、オレのライフは0よ!』って、オレの『反省なんてガン無視』で、『メイド』の叱責が続きます。
「いやっ、だ、だから、アレは……」
「……ぐすっ、えぐっ、えぐ……ヒドい。……ヒドいよ。ヒドいです……えぐっ」
泣かれた。
めっちゃ泣かれた。
うわっ、さっきの『うれし泣き』より色んな意味で、もう限界なんだけど!
「……あ~あ、泣かした。しかも、『言い訳』って、ホント『最低』ね。『人でも』、『バカでも』、『単細胞でも』、『ド低脳でも』……。『生物として最低限の常識』は持ってると思ったのに」
『最低だわ』と、『猫嬢』にまで罵られた。いや、『猫嬢』の口の悪さは、『仕様』かもしれないけど。
今日は、何かの『厄日』ですか? 今年は『厄年』だったっけ?
……いや、違う。断じて違うぞ!
とりあえず、『反論』して、流れを変えてだな。
「なっ……くっ……」
あれ? 口が上手く動かないぞ。
それに、オレは断じて、『卑怯モノでも』、『バカでも』、『最低でも』ねぇ!
心の中で叫んでるぜ。落ち着け自分!
「く、クソッ、わかったよ! 戦えばいいんだろ。それで、お前らの気が済むんだろ!」
「気が済むじゃなくって、『常識』ってもんでしょ。最低限、守らなければならないっていう『不文律(暗黙の了解)』ってヤツ」
「……」
『猫嬢』が、じっと、オレを見ている。
『メイド』が、ずっと、泣いている。
『オレ』は、『死亡フラグしかない選択肢』を選んでる。
『断れば、白状者』、『従えば、下僕』って、『選択肢』ってどうよ?
「だぁーーっ! わかった。わかったよ。オレが悪かった!」
「……ぐすっ、ひぐっ」
「戦うよ、戦うさ! なぁ、頼む。なっ、戦わせてくれ!」
「ぐすっ……、ほ……本当……ですか?」
「あぁ、本当だ。戦う、借りた恩は返す、約束も守る」
《だから、戦わせてくれ!》と、頭を下げる。
「…………。わかりました。ひぐっ……。でも、お願いがあります」
よし! ついに『謝罪に成功』したぜ。
これで、小学校の『帰りの会』みたいな吊るし上げから解放されるぜ。
「あぁ、なんだ? どんな願いだ?」
【その言葉、忘れないでくださいね?】
『メイド』が顔を上げるなり、そう言った。
『能面』のように『無表情』なソレは、『笑顔』にも、『憤怒』にも見えるもので。
いろんな『感情の坩堝』の中、はっきりと、こう語ってた。
【約束破ったら、殺しますよ?】
――きっと、勘違いだと思う。
今日はいろんなことが起こりすぎてるから、きっとキノセイだ。
《さっ、なんとか話がついたわね》と、『猫嬢』が場をつなぐ。
《ステキな仲間もできましたし》と、『メイド』が満足げ。
《なんか流されてないかオレ……》と、人生について考えるオレ。
「そんなことないですよ~。……『約束』」
『ボソ』っと『メイド』が呟くと、背筋が『ゾク』っとした。
嗚呼、なんか『心的外傷』になったかも。
「……ヒドイです。そんなに恐がらなくても……」
またもや、『メイド』が泣きそうな顔をする。
「だ、だって、あれは、なぁ……?」
《ちょっ、こっちに振らないでよね!》と心底、嫌そうな『猫嬢』がいたり。
「って時間がないわ。すぐにこれを被って、準備して!」
「これって……?」
ずっしり、黒くて重い『ヘルメット』。
なんか、どっかの『暗黒騎士』とか『黒の騎士団』とか『ゼロ(革命家)』が被ってそうな『デザイン』なんですが?
まぁ、この世界……。
ツッコんでたら、キリがないんで、おいといて。
「あぁ。わかった! って『今から戦う』のかよ!」
今、自分に誓ったばかりで、もうツッコんじまったよ!
「『時間が無い』って、言ってるでしょ! 早くして!」
「『お嬢様』、こっちの準備はできました! いつでも行けます」
「よし、派手に暴れてきなさい! 私たちの『命運』は、アンタが握ってるんだから」
「おぅ、オレに任せとけっ! 邪魔するヤツぁ、ぶっ倒してやらぁっ!!」
こうなったら、ヤケだぜ。
『ノリと勢い』で、なんとか乗り切ってやるぜ!
《しゃあ、この野郎!》と意気込むオレを、《頼もしいです!》って《メイド》が案内。
向かう先は部屋の奥。
『ガシャン』、『ウィーン』と『シャッター』が上がって、奥が奥になって。
どんどん、奥が深まって、『広大な空間』だったことが、わかった。
「って、マジかよ……」
勇んだオレの目の前には、『巨大ロボ』。
それも、『一緒に戦おうぜ、相棒』って【自己主張】を放ってるんだぜ?
――驚くのが『フツー』ですって!