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冬に咲く花 21

「やっぱり…………これ、凶鳥の兆しだ」


「………………はい?」


 聞こえなかったわけではないし、別に期待を裏切られたわけでもない。全く想像もしていなかった単語に、意表を付かれただけだ。

 カダンは声を少し張り上げて、言い直した。 


「凶鳥の兆しだよ。前はお腹に痣なんてなかったはずだよね?鳥に似た痣は凶鳥に兆しって言って、厄を呼ぶんだって前に言ったよね」


「でも……」


「でもじゃないよ!?こうしてタカヒロのお腹にアザがあるんだ。どうして言わなかったの!?まさか忘れてたんじゃないでしょう?この痣はいつぐらいにできたの?」


 押さえつけられた両手首に徐々に与えられる圧迫が増し、肌に砂利が食い込むが、幸か不幸かすでに手首の感覚が鈍くなっており、それほど痛みは感じない。


「痣?何のことだよ」


「タカヒロの腹にある火傷のような痣だよ」


「火傷っていうなら多分ここに来たばかりの頃だよ。まだ、魔法陣の中で寝ている時。たぶん……だけど気が付いたのはこ間だよ」


 最後にたぶんと付け足したのは、孝宏もはっきりと覚えていないからだった。それに毎日風呂に入っているのにも関わらずまったく気が付いていなかったのだから、いつの間にできたのだろうがいうのが正直な感想だった。

 唯一の心当たりが夢と思い込んで、今の今まですっかり忘れていたあの晩の出来事だ。


「そんな前に?どうして黙ってたの!?これは大変なことなんだよ、わかってる?いや、わかってないよね。凶鳥の兆しが現れたということは、始まるんだ、世の中を巻き込んだ騒乱が。少しでも早く警告できれば、それだけ多くの命が助かる可能性が高くなる。遅れればそれだけ、犠牲者も多くなる。それなのにこのまま、魔法も使えずにいたら、死ぬよ?孝宏はそれがわかっていない。危機感がない!」


 押し寄せる波のごとく迫ってくる言葉の波は、半分も頭には収まらなかった。ただ、一方的な責めと、吐き捨てるような物言いに、腹の底からこみ上げるものがあった。


「タカヒロには勇者の自覚がなさすぎる!」


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