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SiXTEEN  作者: 井口
Act.1
9/15

次から2日に1回ペースになります

 空気が変わった。威圧するように、恐怖、という言葉がよくあいそうだ。この感じを世泉は知っている気がした。


 普通じゃない。只ならぬ雰囲気。


 さっきまでごろごろ世泉の膝の上で、気持ちよさそうにしていた槐も全身の毛を逆立てている。


(この感じ…)


「グルゥゥ」


 低く唸るような声を上げた槐。


 重たい腰をあげる。


 あの日の会合から、日が経ち春の暖かい陽気が差し込む頃。


 バタバタ、響く足音。廊下の板が軋む。世泉は自分の部屋でその音が近づいてくるのを感じていた。


 そうしていたら、バンッ、と勢いよく部屋の障子が開けられた。雅がぜいぜい、と荒い息を正す。



「世泉さま! はっ、えっ?! ごめんなさい!」



 世泉の姿を見た雅は狼狽(うろた)えた。



「なんだ、雅か。少し待ってくれるか」


「は、はい!」


「なんだ、赤いぞ。風邪か?」



 そう言うと、顔を伏せてしまった。それもそうだろう。なんせ着替えていた途中だったのだ。雅も幼ながらに一男として恥ずかしかった。それでも世泉が気づくことは無い。そういうところは、あまり気にしてないとか。


 出撃の準備はできた。雅の話によれば、死喰(しが)が出たとのこと。この前の会合で話題になった例の"モノ"だ。


 死者を喰らう。魂を喰らう。無慈悲でそれは凄く哀しい。



「やはり、気づかれましたか。僕はこの気配は2回目です」


「ああ、異様だからな…それで、場所は」


「はい、羽木の(いち)というところです。ここからですと、10分ほどかかります」


「そうか…じゃあ、行ってくる。雅はこっちをお願い」


「はい、ご武運を」



 雅は深く頭を下げた。


 屋根伝いに目的の場所へ急ぐ。まず確認しなければならないことは、被害状況。どの程度か。致命的なら即座に浄化するのが先。世泉独りしかいないのだから。被害を大きくするよりかはマシなんだと思う。



 ふと黒い影が見えた。見るのは初めてだ、と思う。思ったより大きい。一般的な民家より少し大きいくらい。だが、それは小さい方なのかもしれない。もっと大きい"モノ"がいるかもしれない。


 ドンドン、ダンダン。ドゴーン 。


 家が崩れていく。死喰が大きな黒い腕を振り上げる。そのしたを確認すると、逃げ遅れたのか、腰を抜かして動けなくなった子供がいた。雅より少し小さい。


 世泉は走るスピードをあげて、屋根から真っ直ぐ子供の方へ飛び込みそれを抱きかかえ、また屋根の上へ。



「怪我はあるか? 」

「ううん」

「そうか。泣かないなんて偉いな、お前」



 世泉は女の子供の頭を撫でる。そして背後からの攻撃に対応する。



「取り敢えず、今は私より背後(うしろ)にいて…走れるか」


「だ、大丈夫…お姉ちゃんは…?」



 心配そうに見つめるその瞳。それに応えるように、世泉は頷くだけだった。



「…コロ…ス……ア゛ア゛……シ……ヲ」



(喋れるのか…)



 意味不明な単語をぼそぼそと呟く。それは次第に叫びへと変えていく。



『世泉さま。死喰はマナを扱うことが出来れば問題ありません。ですが、完全にとどめを刺すならば…』


『秘石を壊す』


『?ご存知でしたか…?』


『…まぁそんなとこ、かな。』



 出撃前の会話を思い出す。


(…知っていた、か…頭が痛いな…)


 考え事にふけり迷々としている間に、アレが攻撃を仕掛ける。それを避けて目の前のモノへと集中する。


 目ざとくそれを観察していく。すると胸あたりに青黒い色の輝きを見つける。秘石だ。



「秘石……アレか…」



 人型であるため、見つけやすかった。これからどうやってソレを壊すか。人型であるとは言えど、デカ物であり、化け物だ。


 世泉は、リートを思い出す。酷であった。大きいものは嫌いだ、と、そう思った。



 屋根の上へ登り、そこから死喰の腕へと飛び乗る。死喰の身体は黒と紫が入り交じっている。(もや)のようにはっきりとしないが、実態はある。


 もう一方の腕で世泉を攻撃しようとするが、その指をマナを纏った刀で切り落とす。



「オオーーン」と、なんだか苦しそうな、悲鳴めいた声を上げる。そしてお構いなく胸の秘石を貫く。


 死喰(しが)はたちまち崩れさり、地べたに這い(つくば)る。浄化のための呪禁(じゅごん)を施す。(ひも)で吊り下げられた、年季の入った三つ巴のペンダントを、懐から取り出して、紐の部分を手に持死喰の上に垂らす。


 1日目のリートが終わったあの日、街中を出歩いていた夜に、貰った。出会った記念に、と。



(われ)(かえ)れ」



 死喰の身体はそのペンダントに吸い込まれていく。何も無かったかのように、黒い物体は消え去った。


 さっきの少女がトコトコ歩いてきた。世泉は後になって気づいたが、ここには、この少女以外の人間ひとりも見当たらない。



「…ありがとう、お姉ちゃん。」


「無事でよかった。家族は?」


「…うん、あのね…みんなね、黒いのの中にね、入って…ね、ぃっ…」



 嗚咽を交えながらも、強く、真っ直ぐ、世泉の目を見て答える少女をあやす様に抱きしめた。世泉は無言で、少女が泣き止むまでそばにいた。


 そして少女にこう投げかけた。



「ねぇ、私たちと一緒に暮らさないか?」


「? で、でも」


「ここを修復するには時間がかかる。それでもここに居たいと言うならそれでもいい。 …独りは寂しいだろ?」



 薄く微笑みを向けた。しばらくして、少女は首を縦に振った。


 あの屋敷に新たな住人が増える。2人でも寂しく感じる屋敷の広さ。勝手にそう言っているが雅は許すも何も大歓迎だろう。それに、千歳も優しいから許してくれるはず。



「少し遅れたが、私の名は世泉。空木、世泉。これから宜しくな」


「世泉、お姉ちゃん?」


「好きになように呼んでくれていい」


「あ、えと…紫苑(しおん)って言うの。ありがとう、世泉姉(よみねぇ)



 屋敷への道を歩きつつ互いの自己紹介をしながら帰っていく。年齢を聞くと、10になるかならないか、と曖昧に答えた。



「生まれた日、分からないのか?」


「うん」


「親も、か」


「知らない…。 この市の人が育ててくれた」



 少女も相当な苦労があったのだろう。それも計り知れないくらい大きく、苦しい。




「じゃあ、私と一緒だな」

「え? 世泉姉も、独りだったの?」


 世泉は頷く。


「だから、紫苑(しおん)は私の妹、家族ってことでどうだ?」



 微笑みかけると、紫苑は花が咲いたように、パァーっと嬉しそうに頬を赤に染めた。孤独と戦ってきたもの同士、共感し会えるものが多くある。次はふたりで。



「うん! お姉ちゃん…ありがとう」



 会って初めて1番幸せな表情を見て、心がキュッと収縮した。


 それからどのくらい待っただろうか。壊れてしまったここら一帯の民家を片しながら、そんなに待ってはいないと思われる。この市の住民らが帰って来て事情を話す。


 皆は仕方ない、と申し訳なさそうにしていた。それこそ、被害が最小限だったことが1番の理由。東国(ひがし)の民の寛大さは、竜王の統治あってのもの。これが彼女が創った国。


 千歳の顔が浮かんだ。儚く、今にも消えてしまいそうな、フワフワしていて掴みどころのないあの王様。



 そのあとも、詳しく修復やら、何やらを説明して、紫苑のことも了承を得ることが出来た。紫苑は育てのお爺さんに礼を述べて、世泉のあとに続いた。




「あっ、お帰りなさい…その方は…?」


「ああ、羽木で独りだったんだ。親もいないから、連れてきた」


「こ、こんにちは。紫苑(しおん)と言います」



 世泉の後ろに隠れながら、おずおずと自分の名を述べる。



「そうでしたか、僕は大歓迎です! 紫苑さん、僕は雅です。どうぞ宜しくです」


「は、はい!よろしく、お兄ちゃん?」


 雅は手を差し出し、紫苑がそれにゆっくりと手を重ねる。ぎゅっと握手をする。なんとも可愛らしい光景だろうか。



「お兄ちゃん、ですか? 」


「だ、だめ?」



 恐る恐る(たず)ねる。



「嬉しいです! なんでも聞いて、頼ってくださいね」



 兄という響きが新鮮なのか、誇らしげに胸を張る雅の姿に世泉は笑った。



「きゅうっ!!」



 微笑ましく少年と少女を見守っていると、トコトコいつの間にかやって来た槐が世泉にジャンプダイブする。


 驚きながらもそれをキャッチし抱きかかえる。ただいま、と、挨拶をする。



「紫苑、この子、槐って言う水木一族の子。仲良くしてやって」



 そう言って、紫苑へ槐を手渡す。槐は紫苑の頬に擦り寄り、宜しく、というように声を上げた。それにつられて少女も小さく返事をした。




「雅、今日はもう仕事止めにして、紫苑に色々教えてやってくれないか」


「もちろんです! 喜んでお受けします」


「私は準備をしてるから、何かあったら言ってくれ」



 2人は早速、案内という名のお屋敷探検に出かけていった。槐もふたりのあとに続いて、行ってしまったのでひとりになった。


 世泉はひと息ついて彼らの姿を確認して、逆方向へと向かう。やることはひとつ。時刻を確認するともう日が沈んでしまっていた。あっという間な1日だ。いや、最近は毎日がそうだ。気が置けない日々。警戒のアンテナを張って、気疲れする。



 だからこそ、このひと時は唯一の休息の場なのだ。

 雅と紫苑が居間へやって来た。きっとこの匂いにつられたに違いない。



「わぁ、世泉さま! 豪華ですね。歓迎会ですね!」


「そう、胡蝶は新しい家族だからな。これから、なんでもワガママ言っていいんだぞ?」



 食事を運びながらそう投げかけた。雅も縦に首を振る。


 紫苑は少し遠慮気味に、


「ううん、私もお手伝いする」


 と、そう言って一緒に食器を運んでくれた。


 両親も物心つく前におらず、あくまで他人の家で暮らしていた。彼女もそれなりに気を使って生きてきた。少女は年相応の振る舞いが少ないように思える。


 あの時は泣いたり、頬を染めていたり、それは子供らしい仕草も見えていた。


 しかし、家族と言うからには、頼ってなんぼの存在ではないだろうか。


 食事の準備が終わると、3人食卓を囲んで、「いただきます」と、手を合わせる。



「…おいしい」


「ですよねー。世泉さまのご飯は家族の味がします!」


「嬉しいこと言うな」



 ほのぼの、というのはこういうことだろうか。天然な3人。世泉は意外とそういう所が見受けられる。この3人の中では1番ではないだろうか。そんな3人だからこそ、この空気が生まれる。


 結構な量を作っていたはずだったが、全ての皿が空っぽ。世泉はそれを見て微笑んだ。



「世泉ねぇ、手伝うよ?」

「そう? 休んでていいよ?」

「でも、」

「さっきも言ったがここは紫苑の家で、私と雅は家族。だから遠慮することないぞ」

「分かった。でも私がやりたいからいいでしょ?」



 それならいいでしょ、と子供らしく首をかしげて世泉を見た。



「そういう所はワガママで頑固だな」



 と、ふたりで笑っていた。そこに雅が来て、何のことだか分かっておらず、きょとんとしていた。



「なんか気になります」

「乙女の秘密ってことだ、な?」

「うん、お兄ちゃんにはひみつー」

「疎外感です…」



 肩を落として落ち込んでしまった。ごめんごめん、と、ふたりして(なだ)めていた。



 死喰が現れ、紫苑が家族になって、3つ日を(また)いだ。突拍子のない日々。事件が起こることもない。平和だった。前と同じように。嵐の前の静けさ、というやつか。


 でも千歳はいない。こういう何も無い日に限ってそれを思い出す。


 今頃何処で、何をしているだろうか。生きていることは確かだ。東国(ここ)がまだ死んでいないから。



 縁側で休んでいると少女の高い声がかかる。



「世泉ねぇ、お客さん来てる」


「客、どんな人か分かるか?」


「えっと、男の人。る、ルカって言ってた」


「る、か…?」



 その名前を聞いた瞬間に、何故という疑問が浮かんだがすぐにその場から立ち上がり、表へと急いだ。紫苑もそれにちょこちょこ着いていく。



「あっ、世泉さま!」



 世泉に気がついて、雅がぱあっと顔を(ほころ)ばせた。雅はルカの足の間に座って槐と(たわむ)れていた。


 そして、当の本人はというと子供に戻ったように、雅と槐と遊んでいた。



「空木さん、久しぶり。元気?」



 振り返って呑気に世泉の方を振り返った。取り敢えず気になったことを聞いてみる。



「何でいるんだ?」

「それがね、国王に頼まれたから、と、俺が空木さんに会いたかったから、かな?」

「なぜ疑問系なんだ」



 あはは、と誤魔化された気がしたが特に気にする様子もない世泉。

 そこで紫苑がおずおずと聞いてきた。


「お兄ちゃん、誰?」

「うーん、空木さんの知り合い、友人?」

「へー、私は紫苑です。世泉お姉ちゃんの妹です」


 可愛らしく丁寧にペコっとお辞儀をした。ルカはその頭を優しく撫でて、世泉に向かって、いい妹さんだね、と、言った。世泉は誇らしげに胸を張った。



「上がって、話を聞きたい」


 詳しく聞こうと居間の方へ案内した。がルカは縁側の方に腰掛けた。世泉は茶と、昨日丁度作った大福をそばに置いた。そして自身もルカの隣に腰掛ける。


 綺麗だね、と、庭を見て目を細める。最近は世泉と紫苑で手入れをしている。褒められたらそれは嬉しい。


 居間で雅と紫苑のふたりが槐と共にじゃれあっている、賑やかな音をBGMにルカが話を切り出す。



「大変だったね」

「うん」

「国王に空木さんたちを助けてあげてって言われたんだ」

「国王殿、ラヴロフ殿か」

「そうそう。でも会いたかったってのも嘘じゃないよ?」



 世泉は思わず笑った。


 東国と北国(きた)の友好は古くから続いる。西国との戦争でもよく仲立ちをしてくれたものだ。ラヴロフの意図は汲めないがその好意はありがたく受け取ることにした。千歳が居ない今勝手をしていいのか分からないのもある。



「いつまで」

「いつまでも」

「大丈夫なのか? 一条、お前結構重要な立場なんだろ?」

「だからだよ。東国(ここ)とのが今1番重要なことだからね」



 それもそうか、と、納得した。沈黙が訪れる。


 そこにハイトーンの声がふたつ。ひとつは少し低い。それが重なって綺麗ハモって聞こえた。



「「槐! だめっ!」」


 何事かと振り向いた瞬間にはもう遅かった。


 槐がかなりの勢いで走ってきて、世泉の作った大福をぺろり。話し込んでいて、茶を啜ることも忘れていた。久しぶりの再開といのもあったかもしれない。



「ごめんなさい。僕がちゃんと見てなかったから…」


「私も」



 なんとよく育てられた子供らだ。世泉は親目線でそう思っていた。



「気にすることない。槐もふたりを困らせるな」


 槐は気を落とし、しょげた声を上げた。反省はしているみたいだ。その姿が愛らしく見え、分かればよし、と、笑顔を向けた。



「まだあるから、みんなで食べるか」

「食べます!」

「私も、ルカお兄ちゃんも…」

「そうだね一緒に食べようか」


 紫苑はルカが気になるようだ。いや懐いているのだろうか。ルカは確かに人に好かれやすい体質だと思う。惹きつけるような何かがある。



「えー、紫苑さんばかりずるいです」


 不満を含めた雅の声が聞こえた。

 世泉はお皿いっぱいの大福を手にどうしたのかを聞いた。とっても笑ってしまうようなことだった。


「だって、紫苑さんばかり、ルカさま独り占めするんです!」

「ふたりともルカが好きなんだな」

「うん、好き」

「当たり前です」



 何故だかふたりとも威張るように胸を張って言った。それも可笑しくてまた笑った。



「一条モテモテだな」

「困っちゃうね」



 紫苑の頭を撫でながらルカは世泉を見た。家族ってこういうものかなと思った。


 じゃあ、と、



「雅、私の膝だったら空いてるぞ?」


「はえっ?! 」



 ぽんぽんとその膝を叩いてみせる。戸惑っている様子が伺えるが、もう1度優しく微笑みかける。



「なんだか、恐れ多いです」

「お前の中の私はどんなイメージなんだ」


 呆れながらに聞いた。



「決して悪い意味じゃないんです! なんだか、えっと、神々しい、感じが」



 としどろもどろに答えた。

「神様じゃないぞ、私は」と世泉は笑った。

 それでもなんとか雅が折れて大人しく膝の上へと来てくれた。



「きっ、きんちょう、します」

「雅も男だもんね」



 ルカがそう言うと余計に雅の身体に力が入るのが見えた。顔も心無しか紅葉している。


 そんなほのぼのした雰囲気が漂う中で、次第に雅の緊張も解けていったようで、世泉脳での中ですやすや眠ってしまっていた。


 さっきまで槐と紫苑と遊んでいたのもあり、さらに大福で満腹といったところか。やはり子供であることを再確認した。


 ルカの腕の中も同様に、小さな少女がすやすや寝ていた。ふたりを寝床まで運んだ。寝顔がどこか似ていて微笑ましく思う。



「そっちはどうだ、何かあったか?」

「死喰って知ってるよね。それが結構な頻度で被害が出てる。空木さんの方は?」


 死喰。何度聴いても恐ろしい名だ。やはりここだけではなかった。だとすると、南国(みなみ)西国(にし)でも起こっていない、ということはないだろう。



「3日前に1度。それっきり」

「なにかの前触れでないといいけど」


 一気に沈んだ空気。本当ルカの言う通りだ。戦争なんてやりたくない。でも守りたい。そんな矛盾した心はどうすることも出来ない。



「それ。そのペンダント付けてくれてるんだ」


 世泉の首元にかかったものを見た。世泉はそれに頷いた。



「言い忘れてたんだけど、俺が作ったやつなんだよね」

「そうなのか?」



 だとしたら、由々しき事態。死喰退治の際封印する必要があったため、それを無意識に使っていたみたいだ。



「すまない。勝手に…」


 その事を話して申し訳なくなり、謝る。ルカは気にする素振りもなくこう言う。



「役に立ったんでしょ? だったらいいよ」

「本当か?」

「だって前に困ったら助けるって言ったでしょ? 空木さんが」



 そういえばとあの時のことを思い出す。もう何ヶ月も前のこと。長いようで短い。短いようで長い。多くのことがありすぎて頭はいっぱい、いっぱいだったんだ。


 でもその言葉は世泉の力になるもので、忘れているわけではなかった。



「そうだったな、」


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