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SiXTEEN  作者: 井口
Act.1
1/15

書き直し、大幅改稿!


ストーリーもだいぶ落ち着きを見せられていると思います。


取り敢えず、8話まで書いてるので、1話ずつ公開していきます。

 東、西、南、北、に分かれてそれぞれ4つの国があった。




 その4国は四獣という存在に護られ、暮らしていた。


 東の青龍、西の白虎、南の朱雀、北の玄武。その国の象徴であるそれらは、各国に祀られていた。



 そして人々には、『マナ』と呼ばれる不思議な力が宿っていた。マナは、大気中や人々の体内などに宿り、様々な力を与えた。


 ある人は、火を操り、また、ある人は、水を操り、創造しモノを作り上げることもできた。


 国によっては外見的特徴や、元から備わった身体能力の違いもあった。


 多くの種族が共に力合わせに暮らしていた。国によって種の特徴も大きく異なる。また人間以外の種族を総称し、人々は亜人と呼んだ。東国(あずまのくに)では、それを(あやかし)と呼ぶことが多い。人間よりもさらに、マナの加護をより受けている存在であると言われている。


 同時に、囃し立てられるようにもなった。その姿かたちは人外、例えば獣の耳や尻尾が生えていたり、角があったり、独特の形を持っているがゆえに、恐れるものや、蔑む者もあった。


 人間よりはるかに優れたものを持つ者の所以(ゆえん)でもある。


 それから人々はマナの恩恵に感謝し、年に1度だけ4つの国全てが会する、マナ祭、正式には『マナ・アグライア』と呼ばれる祭典を開くようになった。4つの国で同時にというわけではなく、東西南北の順に、回ってきた国が主催するのだ。


 今年は(あずま)が受け持っている。


 そこでは、国ならではの、多くの伝統芸が披露されたり、食や衣服の店が街に並び、毎年大賑わいだ。各国から人々が押し寄せ、その祭りが行われている間は夜通し騒ぎが絶えない。



 その中でも、1番の盛り上がりを見せるのが、3日間かけて、闘技場で行われる猛者たちの戦いである。年齢も性別も種族も関係なく行われる。


 そして、今年は丁度100年の節目を迎え、その賑わいは例年の比ではない。そのせいもあってか、自然のマナも溢れかえっていた。ふわふわと大気中に浮き上がっているそれは、きらきらと暖かい光を放っている。



 今は祭典の前夜祭が行われており、既に3つの国からの客人も絶えなく、もう11時を回っているのに対して、声量は段々と増していくばかりだ。



 1人の少女が闘技場の中にぽつり、立っていた。何をするでもなく、ただ星を眺めていた。真っ黒のはずの空はその輝きにより少し青く見える。所狭しと不規則に並んでいる。


 はらり。ひと片の雪が少女の頬に落ちて、溶ける。それを合図とするかのように、闘技場を後にした。


 雪も次々に降り始め、あっという間に一面が真っ白になる。マナ祭が行われるのは、年末の1週間。



 少女が向かったのは、4つの国の中心にある泉。その泉には、大きな樹がそびえ立っている。その大樹はマナから生まれたもので、枯れることはない。また季節によって葉の色を変えるのである。今は雪のように白く、葉を茂らせていた。


 此処は複雑な場所にあるため、意外と誰も知らない穴場となっている。服などお構いなしに、ゆっくり泉の中へ入る少女。大樹の元まで一直線。大樹の周りは小さな島ができている。その島に上り、そのまま樹にもたれかかる。



 ある時間帯になるとマナが一斉に輝きだす。青だったり、赤だったり、様々な色で輝きだす。それを待つ。


 深夜0時。


 ついに、その瞬間が来る。


 ゆっくりと上下し、ゆらゆら、ゆらゆら。雪と一緒に舞いながら、幻想的な雰囲気を醸かもし出す。

 泉の水面がカラフルに彩られる。


 空を仰ぎ見た。今まで真っ黒だったそれは虹色に輝き、少女の瞳も虹色にさせた。



 しばらく眺めて、もう1度水面の方を見た。異様なほど赤が多く不思議に思って、水をすくい上げる。案の定、水は真っ赤に染まっていた。荷を意を嗅ぐと薄まってしまっているが、鉄分の混じった血の匂いだとわかる。


 それが流れてきている場所を辿っていく。



 人が倒れている。暗くて見えないが、おそらく、白に近い金髪ブロンドの青年だった。頭から血を流し、全身ボロボロで、服もところどころ破けているのがわかる。その服の特徴から、北の国の青年のようだ。少女は青年に話しかける。



「ねぇ、聞こえる。私の声が聞こえるか?」



 何の反応も示さない。死んでいるのかと思った時だった。



「…ご、めん…ね」



 歯切れ悪くそう言った。なんのことだかわからないけれど、少女は、生きていることを確認した上で、あくまでの応急処置をし、引きずる形で寝泊まりしている宿に青年を連れ込んだ。



 理由を話せば、快く、女将はそれを引き受けてくれ、自分の部屋と襖を挟んで隣室へと招いた。






 夜が開ける暁の頃。夜の騒ぎとは打って変わって、静まりあえっていた朝。青年の様子を見に、少女は隣室へと足を運んだ。



「入るぞ」



 といっても返事はないだろうが、礼儀というものがある。なるべく音をたてないように、ゆっくり襖を引く。予想通り、まだ深く眠っている様子だ。


 そっと近づき、腰を下ろす。


 昨日傷を見た限りでは、そこまで深いものはなく、その代わりに、たくさんのかすり傷や切り傷があった。数はあったものの、綺麗に治癒することができた。マナ祭の開催で、それの加護がより強くなっていたというのもある。


 しばらく様子を窺って、退室しようとしたその時、青年がくぐもった声を上げて目を開けた。



「…ん、ここは…」


「起きたか、お前泉の近くで倒れてた。覚えてないか?」


「あ、そっか俺、気失ってたんだ……ありがとう…なんていうの?」


「ああ、すまない、空木世泉(うつぎよみ)だ。貴方は」



 彼は一条ルカと名乗った。改めて明るいところで凝視してみると、思った通り白よりのブロンドに、鼻筋の通った、美青年だった。気取る風でもなく、物腰柔らかなこの青年に世泉は好感を覚えた。



「俺の服は…」


「それは、すまないが、破れすぎて直すに直せなかった。こっちの服だが、我慢してほしい。でも、これの方は何とか直せた」



 手渡したのはネックウォーマー。



「いや、仕方ないよ、それに介抱してくれただけでも十分なことだよ、そのうえ直しまで…感謝しきれないよ」


「いや、大事なものかと思ってな。」


「ううん、そんな大したものじゃないよ。それなのに、本当にありがとう。でも俺、今すぐ行くとこあるから。また次会ったとき、何か恩返しさせて」


「そう、そんな大層なことはしてない、気にしないで。」




 あえて、世泉は聞かなかった。倒れていた理由を。誰にだって話したくないことはある。それは世泉自身にも言えることだった。


 ルカが出て行ってから、宿の女将さんの手伝いをしていた。祭典の最中は稼ぎ時だ。すでに宿は満室のため大忙しだ。また、祭典の昼時には料亭として店を構えるため今よりもっと休む暇などない。




 外にちらほら人の影が見えてきた。いよいよ始まる。




 『マナ・アグライア』


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