初めての依頼
村の出口に向かいながら、依頼の詳細が書かれている紙を読み直す。
「えーっと 依頼内容はサンブルグ村から北に向かう街道沿いの森でのゴブリン討伐か。 報酬は一体ごとに100ルピスっと」
最初にしては良い肩慣らしになるだろう。戦いに関しては、体が覚えている気がするので、あまり不安は感じない。
村からでて15分ほどすると森が見えてきた。暖かな日差しが差し込む森はうっそうと茂っていたが完全に陽の光を遮っていないので、とても気持ちよく森林浴ができそうだ。
森に入って少し歩くとゴブリンの集団と出くわした。ここは、水辺の近くだったので一休みした後だったのだろうか。なんだか雰囲気が緩んでいる。
「数は三体か。絶好のチャンスだな」
ゴブリンの持っている武器は、ダガーと弓と棍棒だったので、まず弓の奴に狙いを決める。
息を潜めギリギリまで近づくと、素早く茂みから飛び出し弓ゴブリンへと迫った。矢を番える暇も与えず、心臓を一突き。弓ゴブリンは、力なく崩れ落ちた。
残りの二体は、突然の出来事に呆気に取られていたが仲間が殺されたことで、冷静さを取り戻したのだろう。今度はゴブリン達が挟み撃ちにするように攻撃を仕掛けてくるが、レオンはさっとダガー持ちの方へ詰め寄ると、相手が振り下ろすダガーを受け流しそのまま首を刎ねた。
さすがに二人も殺されたのは、予想外だったのだろう。慌てて逃げ出そうとする。
「逃がしはしない!」
レオンは勢いよく地面を蹴りゴブリンへ追い縋った。逃げる背中に蹴りを食らわし、よろけたところに袈裟切りを放った。
「よし。体は十分に動いてくれるぞ。この調子ならすぐに上のランクにいけそうだな」
そしてゴブリンから売れそうな素材を剥ぎ取ってから次の目標を探しに行った。
こんなやり取りが数十回続いたころ大分日が傾いてきたので、切り上げることにする。
「一日でこんだけ狩れれば十分かな」
今日で沢山のことが分かった。まずどれだけ動いても息が上がらないしあれだけ走ったり剣を振り回したのにほとんど疲れていない。そして一番の驚きがあれだけスムーズに戦えたということだ。
流石は元英雄と呼ばれていただけの事はあるかもしれない。
ちょうど陽が沈むころに村へと帰ることができた。まずは、ギルドへ向かうことにする。通り過ぎる屋台からとても良い匂いがする。立ち寄りたいが、お金を持っていないので我慢して歩き続ける。
からんからん 二度目は全く緊張しなかった。受付嬢が挨拶してきた。
「おかえりなさいませ」
「ただいま。依頼こなしてきたよ」
「ご無事でなによりです。組合証をお願いします」
ポケットから組合証を出し受付嬢に手渡した。組合証を見るだけで倒した魔物が分かる魔法があるらしい。
「ゴブリンが五十二体ですね。初めてにしては、素晴らしい成績です」
受付嬢は、御淑やかな笑み浮かべながら、褒めてくれた。...癒される。
「それでは報酬の5200ルピスお支払いします」
「ありがとう。また明日もお世話になるよ」
「はい。お待ちしております」
やっぱり笑顔が素敵だ。
いつものギルドの野次馬たちは、最初会った時とは打って変わって口々に「やるじゃねぇか」と声をかけてきた。実力さえあれば誰でも歓迎ってことかな。そんな歓迎会もほどほどに今度は、素材を売りに店に向かう。
「いらっしゃい! 何の御用だい?」
「素材の買取をお願いします」
素材の入った袋を店主に渡した。
「あいよ。ちょっと待ってな。 ゴブリンの牙と皮とその他諸々と,,,そうだなこの量だったら色を付けて2000ルピスでどうだ?」
「じゃあそれで」
「毎度あり これからも贔屓にしてくださいよ」
「また来ます」
今日のやる事は全て終え、残すところは食事のみ。情報収集も兼ねて酒場へ行ってみることにする。
一番賑わっていた『セイレーンの涙』に決めた。テーブルは、満員だったのでカウンターに腰を下ろした。この店はメニューが豊富で味も絶品という話をさっき村の人の聞いたが、本当に数が多い。どれを頼むかで、日が暮れそうだ。
「すいませーん!」
「はーい すぐに行きまーす!」
元気の良い返事が返ってきた。するとすぐに後ろで髪を一つくくりにした茶髪の女性が来た。
「おまたせしました。ご注文をどうぞ」
「豚のガーリックバター焼きとライスと本日のおすすめサラダとベリーの果実酒を下さい」
「かしこまりました。少々お待ちください」
しばらくして料理が運ばれてきた。
「うーん どれも美味しそうだ。それじゃあいただきまーす」
料理は全て絶品で、とくに豚のガーリックバター焼きは最高だった。程よく絡んだソースと柔らかい肉の相性は抜群で、甘い果実酒にも良くあった。
お腹を見たしたレオンは、勘定を済まし教会へ戻った。
教会へ戻る途中に、果物の詰め合わせが売ってあったので、お世話になったミラにお土産として買っていった。
教会の門をくぐると運よくミラと会った。
「あっレオンさん 体のお加減はもう大丈夫なんですか?」
「はい もう十分動いても大丈夫です。 ミラさんにはとてもお世話になりました。そのお礼にこれをどうぞ」
さっき買った果物の詰め合わせを渡す。
「いえそんな。こんなことまでしていただかなくても...」
「いいんです。ほんの気持ちですから」
「すいません。ありがとうございます」
「では、俺はこれで。 おやすみなさいミラさん」
「おやすみなさい。レオンさん」
レオンが彼女の横を通るとき彼女の顔は凄く真っ赤だったが、それにレオンは気づかなかった。
レオンは、水で体を洗うと直ぐにベッドへ潜り込んだ。
「明日は、宿を探しに行かないとな。いつまでもここに居るわけにいかないし」
そういうと彼は、深い眠りについた。