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布団ちゃんには絶対負けない  作者: 伊呂波 ましろ
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第九話 ま、待った?

 俺は駅でひかりを待っていた。まだ朝は早く、利用客も少ないので、人があまりいない。

白い息で遊んでいると、駅から見える道に、見惚れるくらいきれいな薄赤い髪をした少女が走ってくる。ひかりだ。ひかりは息を切らし、俺のところまで来た。何で一緒に来なかったかと言うと、ひかりがそうしたいと言ったのと、ひかりの準備が遅かったのが理由である。

 

 

「待った?」

「ううん、今来たとこ」


 おそらくこれがやりたいのであろう。


「ま、待った?」

膝に手を突き汗を流すひかり。


「まあそれなり、……今きたとこ」

「まあそれなりに待った」と言おうとしたのだがひかりにすごい顔で睨まれたので「今きたとこ」と訂正する。


「それじゃあ行こう」

ひかりが右手を出す。俺が「?」と思っていると、


「手!」

右手を動かし強調する。


「手?」

ひかりが何を言っているのか分からず聞き返す。


「……手くらいつないでも」

声が小さく、ひかりが途中で声を濁したのでまだ分からない。


「もう少し大きな声で頼む」

耳を近づけ、ひかりにそう伝えると「も、もういい!」と言ってひかりは強引に俺の手を繋いだ。


「なんだ、そんなこと恥ずかしがる必要ないだろ、かわいい奴だな」

ひかりの頭をなでてやる。


「かっかわいいって……むぅ」

ひかりは顔を真っ赤にし、困ったようにしたが、大人しく頭をなでられていた。

 今日のひかりはなんか変だ、変態らしくないっていうか、女の子らしい。ひかりがこうだとこっちまで調子が狂う。


「も、もういいっ」

羞恥心に耐えられなかったひかりが俺の手を両手で「返しますっ」みたいな感じで遠ざける。


「あらあら、若い子たちはいいねぇ、恋人かい?」

駅で電車を待っているおばあさんに茶化される。


「こ、こここここここ恋人!?」


 おい、お前いつも「夫婦」とかいってんのにこういう時に限って赤くなんなよ! 

こっちまで恥ずかしいだろ!


 そんなことをしていると俺らが待っていた電車がやってきた。

俺らがこれからいくのは埼玉県内にある小江戸の風景を残した観光地である。

 目的地に着くとそこには絵巻物に出てくるような世界が広がっていて、タイムスリップをしたようだった。

朝は寒かったのだが昼になると気温は上がり、浴衣をきている人も見かけた。


「光太! あれ!」


「うわっすげぇ! 人力車じゃん!」


 そこで俺たちはおいしいものを食べたり、ひかりは浴衣を貸してもらったりでかなり楽しんでいた。

ひかりは髪を引き立たせるような黒を基調とした浴衣を着ていた。


「浴衣姿のひかりちゃんもかわいい! はあはあ」

「もうちょっと静かにしてくださいよ! バレたらどうすんですか!」


「ん?」

視線を感じ後ろを振り向く。


「どうした光太?」


「いや、何でもない」

あれ? 今布団と茜さんの声がしたきがするんだけどなぁ、気のせいか。


「きゃっ!」

風が吹くとひかりがまたを押さえ座り込んだ。


「? なにしてるんだおまえ? 浴衣の下には服着てるんだから大丈夫だろ?」

ひかりは顔を赤くしたまま黙り込んでしまった。ひかりが俺に周りに聞こえない声で耳打ちする。


「……は、はくのわすれたっ」

俺の顔が熱くなっていく、ひかりも顔を赤くし、「し、知らなかったの!」と弁明する。


「お前、本気で言ってるのか?」


「信じられないなら……」

ひかりは浴衣の重ねた部分を広げ始める。


「まてまてまてまて!」

ひかりの手を押さえ止めさせる。

 お前に常識と羞恥心は無いのか!!!


 隣にいる女子がはいてないと知っただけでこうも気まずくなるとは。



 その後も俺たちは観光を続け、小さな公園のベンチで休憩していた。

「はいよ」

自販機で買ってきたホットミルクココアをひかりに渡す。さすがに夕方になると冷えてくる。

 ひかりも浴衣を着替え私服に戻っていた。


「今日は楽しかったな」


「うん」


 ひかりは少し何かを考えているようだった。

「どうした?」


 ひかりはしばらくうつむき「よしっ」と言ってほっぺたを叩く。

するとベンチをたったひかりは俺をベンチに押し倒す。


「いてっ! おまえなにして……」

目を開けるとひかりが頬を赤らめ鼻と鼻がぶつかりそうなほど顔を近づけてくる。


「私じゃ……駄目?」

耳まで真っ赤になっているところをみるとひかりも無理をしているのだろう。


「ま、まてって!」

そんなこといっても今のひかりが止まるはずがない。助けを求めるように横を向くと草村が少し動いた気がした。


「まてぇぇえええぇい!!!」

草むらから布団が飛び出してきてひかりを引き剥がした。


「あんたご主人になにしようとしてんですか! 止めないご主人もご主人です!」


「おまっ、何でここに!?」


 草むらがまた動き始め茜さんが出てくる。

「ちょっと布団ちゃん! 何してるの! ひかりの痴態が撮れたかもしれないのに!」


 あんたがなにしてんだよっ! てか録画してたのかよ!?


 一瞬で蚊帳の外にされたひかりは無言で茜さんのところに向かう。

「ど、どうしだのひかりちゃん? そんな怖い顔して……ま、待って! カメラだけは! あぁぁあぁ!!」


 こうして俺の初デートは終わりを迎えた。

 

 最後まで呼んでいただきありがとうございますっ!

ひかりとのデート回です。

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