神獣討伐
意識はあるのに身体を自由に動かせない不思議な感覚。自分の身体が使われているときの感覚だ。
目の前に巨大な魔物が迫っている。だが身体を自分では動かせない。今この身体を使っているのは自分ではなく彼女だからだ。
魔物の爪が自分を殺そうと迫ってくる。だけど身体は動かない。
1メートル、1センチ、1ミリそして自分の身体に刺さる。刺さるはずだった。 だが刺さる瞬間に爪は消え去った。
夜空の能力『剣姫』は自分の感覚を鋭くし、相手の動きを予測するという力と、
自分の身体能力を高くするという内容だ。
佐々木はこの力を2割までしか使いこなせない。だが夜空はこの力を完璧に使うことができる。
そしてこの力のすごいところは身体能力の強化ではなく相手の動きを予測するところにある。
佐々木では高確率で相手の動きを見切るまでしかできないが、夜空はもはや未来を見ていると言っても過言ではない。
「もう終わりにしようか」
佐々木の身体を使った夜空が一瞬で魔物との間合いを詰める。そして魔物の身体を左右二つに斬る。
「これで終わり」
夜空は刀を再生途中の魔物の中央に投げる。
「おい!なにをしているんだ!」
黒岩が叫んでいる。
「また私の力が必要になったら呼んでね」
身体が自由になる。
魔物に刀が取り込まれていく。
魔物の身体が巨大化していく。
巨大化は止まらない。
元の大きさの2倍3倍と巨大化していく。
そして刀を残して魔物は破裂する。
「すまない・・・佐々木」
黒岩が光の剣、光剣を構えて近づいてくる。
「どうしたんですか黒岩さん?」
「神獣を倒してくれたことには感謝する。しかし我々『軍』の上層部から危険人物になるかもしれないから殺せと命令がでたんだ」
そう言って光剣で切り掛かってくる。それを刀で防ぐ。その時ズボンのポケットに違和感を感じた。
「ありがとうございます黒岩さん」
そして振り返り飛行魔術でその場を離れた。