帰宅したら
家に入った気配を感じたお母様が飛び出るように出できた。
「遅かったから、道に迷ったかと思って心配したわ。シャル」
私より先に王子の方を心配するなんて・・・この気持ちなんと言うのかしら。
お母様と言葉を交わしていた王子が私の方に身体を向けた。
「カナーディア様がいなかったもので・・その、捜しているうちに眠ってしまったもので、ご心配おかけしてすみません」そして私を覗き込むように「ありがとうございます。カナーディア様」とほほえんだ。
突然、話がふられたから、反応できない私に代わり上機嫌のお母様が返事をかえす。
「まあ。当然よ~シャル。夕飯をすぐ作るわね。カナ、どうしたの。顔が赤いわ」
「寒かったのかもしれません。大丈夫ですか。カナーディア様。部屋までお連れしますね」
「あらあら。カナをお願いね。シャル」
王子様の右手が私の背中を優しくおした。背中の感覚が敏感になっていたようで私は悲鳴をあげ、王子様と距離をおいた。その勢いに驚き、目を丸くする二人を安心させるため「大丈夫です」と言い放ち自分の部屋に走り逃げた。
部屋の鏡には紅潮した私が映ってる。
なんで赤くなるの。どこかの部屋から扉の音がした。シャルが自分の部屋に戻ったのね。と想像したとたん、心臓がバクバクし始めた。
何なのよ。私・・・また顔が熱くなり涙がでる。どうしちゃったの。
そう色々あったから、変化のないこんな田舎に、人が来て、うちに下宿して、しかも・・・そうこれが一番だ。わたしを脅かす人だったから。不都合があった時、今まで私はどのように対処していたのかをまず思い出さないといけないわ。
蜂の巣を見つけたときはその生態を調べて巣を撤去した。
猿が畑を荒らしたときはリーダーを捕獲して猿の仲間とともに森の奥に誘った。
子供のとき点数が伸びなかったら、私より成績のいい子以上に勉強した。
うん。できる。まず王子様のことを知ろう。王子様以上に勉強をしよう。そして、実力で王都に行こう。泣いてしまったのは混乱したから、大丈夫。私はできる。
こすりすぎで充血した目をぱちくりさせて鏡をのぞいた。
薄い茶色の瞳は充血した中、輝きを取り戻したかのように思える。瞳と同じ色の肩まである髪を結いなおした。外出着から室内着に着替えエプロンをつけた。
準備が整い、もう一度鏡を覗き込むと充血した目はちょっと薄くなっていた。
これぐらいなら大丈夫よね。夕飯の手伝いに行こう。髪をちょっとなで、ひとつ頷いてから、部屋をでた。




