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私の道

シャルが受験のため王都に旅立った日。

お母様はため息をつくように私に言った。

「あなたシャルを振ったって本当なの。国の英雄と親戚関係になれると思っていたのに。しかも王子でしょう。高貴な人なのに。もう現れないわよ。断言できる。もったいない」

「お母様。そんな人が私の相手になるわけないじゃない。現実をみてよね。」

シャルが月明かりの中言っていた台詞がプロポーズなんて普通、気が付かないわよ。記憶にもないし。

でも私が気が付かなかったとわかるのが悔しいから、そのまま振ったことにした。


私はこれからの進路をこの田舎でできることに定めた。学校に残り後進を育てるのだ。結局お父様やお母様の言ったとおりになったけど、いつまでもくよくよしている私は誰にも見せたくない。


「え、おれがあの学校を継ぐんだよ。」

弟の目を真ん丸にして私に食い掛かる。

「お姉ちゃんはシャルと結婚して王都に行くから、おれが継ぐってお父様言っていたもん。」

「結婚しないからあんたは王都に行きなさい。」

「えー嫌だよ。勉強できないもん」

「今日からお姉ちゃんがあんたを教育する。あんたの根性から直す」


朝は学校に行って、子供たちを教え、シャルが植えたひまわりを眺めながら帰路につく。


夏の暑さが和らぎ、全てのひまわりが疲れを感じ下を向き始めた頃、シャルは合格の知らせをもって私の前に現れた。


「おめでとう。良かったね」

「カナーディア様に言いたいことがあって、待っていました」

一か月程会わなかったためか、違う人のように感じる。


「奥様に聞きました。カナーディア様ははっきり言わないとわからないそうで」

お母様が何度もくどくどシャルを振ったのはもったいないと言い続けるので、本当のことを口にしてしまっただけだ。

「単刀直入に言います。結婚してください」

真剣になったシャルは怒ったようにも見えた。


このしばらくの間、私考えていたの。

家族を感じたシャルはただ家族が欲しいだけだって。この家族の中でうまくいったからその一人をとりだして家庭を作ろうとしているんだ。だからもっと世間を知れば私の存在は疎ましくなるだろう。

そんなのたえられない。


「僕のこと嫌いですか。王都にいけるのですよ」

「貴方のことは嫌いではない。王都へは自分で行きたい」


私はそれだけを言い視線を合わさないようにした。


「ともかく、しばらくは王都での勉強で戻れませんが、次に会うときは覚悟してくださいね」


「公爵に会えたの」

「いえ、卒業して役人としてからではないと会えませんし、その時の順位により役職が決まるので、もっと成績を上げないといけません」

私はふと思いつきでつぶやいた。

「シャルが首席になったら、王都に行ってもいいかな」

確か王都の学校は卒業時の首席が代表になり、王宮で何かを読み上げると聞いたことがある。

視線を見上げると、吸い込まれるような瞳は驚愕の色を浮かべて

「それぐらいでいいの」

とつぶやく。

「ではもう決まりましたね」

やさしい手は私の頬を撫で、後頭部を掴んだ。

逃げられない。

 

今だけ夢を見ていたい。

この人がわたしのもとから去ったとしてもこのひまわり畑に私の心を隠して生きていく。

この日を糧にして頑張っていこう。






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