薪と藁と
その後のシャルは何かが違う感じだった。
学校はいつもどおりにすごしていたけど何かが変だった。学校からも私を置いて先に帰ってしまった。
帰宅してから、なぜかシャルは部屋を2階の居心地のよい部屋から1階の今は物置となってる使用人の部屋に移りたいとお母様に申し出ていた。お母様は何があったのか聞いたけどシャルは何も答えない。
お母様は私にも聞いてきたけど私が知るわけないし、変になった時の説明には、校門を傾かせたことを話さないといけないから、ガサツだ何だと言われそうで、言いたくない。
でも必要以上に私を見ないから私が原因だって言うのは分かる。
あの校門を適当に直したから良くなかったのかしら。
保管小屋に薪をとりにいく途中、鶏の世話をしているシャルがいた。
「きれいに掃除するのね」つい口にでる。
鶏も私が掃除するときと比べておとなしくシャルの周りに群がってる。私の声は鶏の喧騒に負けて聞こえないみたいだ。シャルは一箇所に集めた汚れた藁を外にかきだして小屋の外に出た。そこで私に気がついた。
「いかがしましたか?」
「何も。薪を取りに来ただけ」
「足りませんでしたか。すいませんでした。取りに行きます。風が強くなってきましたから、カナーディア様は家に戻ってください」
「なんで。私が取りに行くって決めているのだから、シャルこそ家に戻ってよ」
少々強い口調で言ってしまった。
気をつかってくれたのだと考えると申し訳ないような気分になる。きっと私のこんなところが色々ダメなんだ。謝らないと・・・
どういえばいいのか悩んでいると、頭のてっぺんに手を感じた。
ぽんぽんと二回優しく叩き、そして離れた。
この慰めるような接し方は何なのよ。素直な言葉が隠れてしまったじゃないの。ぐるぐる回る感情を確認しようと顔を上げると、シャルは自分の手をじっと見て、悲しそうな顔をしていた。
つい私はどうしてそんな顔をしているのかを知りたくなった。でも私の言葉も聴かずにシャルは「すみません」と力なくいい、その場から離れた。去るときの背中はとても寂しそうだった。
しまったかも。なんか落ち込んでいるかも。私が謝るところだったのに。シャルは親切で私の仕事を手伝おうとしていたのよ。薪は重いから二人で持とう。ありがとうっていったら良かったのよ。それをあんな強く拒絶したら良くないよね。
後で謝ろう。そしてこれからも手伝ってねって、頼もう。
それにシャルに家の用事をさせたら、その分、私は勉強できるし。そうそれよ。利用すると考えるの。
悪くない考えだわ。
最近ご無沙汰のルンルン気分で薪を抱えて家に入ろうとしたら、家の手伝いもしないで遊んでばかりの弟が
「くせ~。何このにおい。お姉ちゃん。なんで頭に藁くずつけているの?頭を藁山に突っ込んだの?おもしれー」
けらけら笑う。
え、もしかして
私の頭と同じにおいを身体全体から臭わせてシャルが反対方向からやってきた。
「カナーディア様。今、お湯を沸かしているので、少々お待ちくださいね」
とすまなそうな瞳で言った。
「軍手をつけたまま、頭に触ってしまって、申し訳ありません」
私は当然謝らなかった。