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第二章《始》
僕にとって最後の野球の試合を思い出すと、僕は懐かしく感じてしまう。
もう何年も昔の思い出のように語れてしまうから、これから先、僕が年をとっていくにつれて一年がどんどん短くなっていくのかもしれない。そう思うと、早く大人になれるようにも思えたし、逆にどんどん老いていくんだろうなと思ってしまう。
それで話は変わるけれど、僕はちょっとした願いがあった。
僕はあの試合で、僕の肩の荷を降ろしてくれたあの青年に会いたかった。
人と会って話すことがあまり得意ではない僕が、なんでそう思っているのか、自分自身わかっていない。
でも、あの時確かに彼に救われた。
だから、感謝の言葉を言いたかったし、どうして、ああやって僕を助けてくれたのか、聞きたかった。
彼は僕のことを助けたとは思っていないのかもしれない。
それでも聞きたかった。会いたかった。
あの試合の後、あの青年はどこかに連れさられてしまった。それに、僕は試合が終わった後すぐに駆けつけることが出来なかった。そういう理由があったから僕は会いたいと思った。
地元での試合だったため、周辺を探したのだけれど、見つかることはなかった。
まだあの時から一年も経っていない。
そう簡単に会えるものじゃない、と僕は良く理解している。。
一年探して彼を見つけることができれば、それは幸運中の幸運だと思う。それほど人を探すのは大変なはずなのだ。
もしかすれば、一生の間で見つからずに、僕か彼が死んでしまうかもしれない。
そちらの方が可能性が高い。
だけど、なるべく早く会いたかった。
彼に会って話をすれば『何か』が変わるんじゃないかと思ったから。
全てを打ち明ければ、受け止めてくれるんじゃないか。
彼のような人だったら僕が困っているようなことを解決してくれるんじゃないか、そう思ったのだ。
そうなるか、わからない。
でも、ああやって試合中に肩を叩けるような人はそうそういない。いや、いるほうがおかしいのかもしれない。だけど、あの人のような雰囲気を持つ人間なら、僕が悩んでいることでさえ解決してくれるんじゃないか、と
そう思ったのだ。
純粋に、ただ彼なら、と。