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召喚勇者は現実主義者?  作者: まあ
第1章 勇者の旅立ち……いいえ、旅立ちません。
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第6話

「せっかくって」

「とりあえずは、そう言う事をしているんだけどね。そこで君の護衛を探そうかと思ってね。君にもそこに属して貰えると支援しやすいんだけど」


 冗談めかして笑うミルドの様子にため息を吐く冬季。ミルドはそんな彼の様子にくすりと笑うとギルドに所属するように言う。


 ……それは俺を利用しようって事だろ。


 冬季はミルドが王と同じように自分を利用しようとしていると思えず、彼の顔にはその色が浮かんでしまったようで眉間にしわが寄って行く。


「君が考えている事は否定しない……違うね。否定する事はできないよ」

「……それなら、俺の答えも決まっているってわかりますよね?」

「ただ、君は選ぶ必要がある。王の形だけの支援ですり潰されてしまうか、自分の意思で王都を出て、元の世界に帰る方法を探すかを、少なくとも私は君に魔王を殺させる事を強制できる立場にはないからね」


 ミルドの提案は王からの強制とあまり変わる事無く、冬季は首を横に振ろうとするが、ミルドは先ほどまでの悪ふざけしていたような表情を引き締め、真面目な表情をすると冬季の自由意思に任せると言う。


「わかりました」

「それじゃあ、私の話はこれで終わりだよ。この封書はどうしようか? 現状で、君はグリッツ王国の文字を読めないわけだし、渡しても無意味になるけど」

「ミルドさんが俺に渡したって事は王に知れるわけですよね? それなら、誰が持っていても変わらないでしょう」

「いや、そうでもないよ。私は君宛の封書を見る立場にないんだから、君に渡したけど、君は文字を読めないんだからね」

「俺はこの封書の中身をまだ知らない……と言う事ですか?」

「君がそう思うなら、そうなんだろうね」


 冬季は獣討伐の命令書を一先ず受け取るも、死にに行きたくないため、その表情は険しい。

 そんな彼の考えを読み取ってか、ミルドは簡単にしらばっくれてしまえと笑う。


「そんな簡単に行きますか?」

「私は君宛の封書を君に渡した。君は王からの命令書を他の人間に見せるのは良くないと思ったから、文字を読めるようになるまでと、そっと懐の中に入れた。私は君が封書の中身を読んでくれと言われていないので、中身は知らない」


 仮にもこの封書は王からの命令であり、立場の微妙な冬季としては無視する事はできないが、ミルドは現状で置かれている立場を有効的に使うべきだと答える。


「……このタヌキが」

「何か言ったかい?」

「いえ、確かに、俺は文字が読めないため、この封書の中身はまだ知りません。俺に文字を教えている人間が何かアクションをして来ても、王からの命令書を他の誰かに見せるわけにもいかないと言葉を濁して置きます」

「そうだね。王が自分で痺れを切らすまではそれで乗り切れると思うよ。まぁ、いつまでだませるかは君次第だけどね。私の話はここまでだよ。後は君が考える事だけど、できれば、ギルドに所属してくれると助かるね」


 今までのやり取りの中でミルドが食えない人間だと理解した冬季は小さな声でつぶやく。その言葉を聞き取れなかったのかミルドは首を傾げるも、冬季が自分の言葉に賛同してくれた事で追及する事はなく、話の終わりを告げる。


「その件に関しては考えさせて貰います」

「そうだね。よく考えてくれると助かるよ」

「それでは失礼します」


 冬季は即答する事無く、言葉を濁すとミルドに頭を下げた後、書斎を出て行く。


 ……さて、どうするべきか? 条件的にはミルドさんの方が俺には都合が良い。だけど、王はこの国の中では1番の権力者だ。それをだまし切る事ができるかを考えると。


「冬季様、お話は終わりましたか?」

「レ、レミさん!? いきなり、声をかけないでください。驚くじゃないですか?」


 廊下に出るとミルドの提案に乗るべきか、王の命令を聞くべきか、2人の事を天秤にかけようとした時、書斎の外で冬季を待っていたのかレミが冬季に声をかけ、冬季の思考は強制的に戻される。


「それは失礼しました。それでは冬季様、お部屋にご案内させていただきます」

「そうですね。お願いします……あの、レミさんって、ずっと廊下で俺を待っていたんですか?」

「はい。それが私の仕事ですから」

「あの。中の話って聞こえてました?」

「盗み聞きをするような事はしません」

「そ、そうですか。疑ってしまってすいません」


 冬季はレミが廊下に立っていた事に、ミルドとの話を聞かれたと思ったようだが、レミは即座に否定をする。彼女の様子に冬季は頭を下げるが、王からの命令で冬季の世話をしている彼女を信じて良いかはわからない状況である。


「私は王の命で冬季様のお世話をさせていただいていますが、メイドとして今は貴方様に仕えているのです。主人の不利益になる事はたとえ聞いてしまっても口外しません。それが私のプライドです」

「そ、そうですか?」

「はい。それでは冬季様、部屋までご案内させていただきます」


 冬季の表情から、レミは何かを察したようで自分の主人は冬季である事を明確に伝えると、1度、頭を下げてから、冬季を彼の寝室まで案内する。


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