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召喚勇者は現実主義者?  作者: まあ
第1章 勇者の旅立ち……いいえ、旅立ちません。
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第5話

「まあね。王は何よりも勇者のお披露目をしたいんだよ。グリッツに勇者が召喚されたとなると各国から注目が集まる。勇者を手に入れた国は世界を救った時に力で他国を支配する事も可能だからね」

「まぁ、それくらいなら、俺も何となくわかります」


 王の中では、既に冬季を自分の権力を維持するためのコマとしか思っていない事はすでに冬季も気が付いている事もあり、ミルドの言葉に小さく頷く。


「となると、この封書の中に入っているのは王からの命令書。今の君でも戦える魔王の影響を受け、凶暴化した獣の討伐って、ところかな? ……正解みたいだね」

「獣の討伐?」

「そう。どうする? 素直に受けるかい?」


 ミルドは冬季宛ての封書を開けると、彼の予想通りの答えが書かれており、冬季に王からの命令を聞くかと問う。


「無理に決っているでしょう。ミルド様は、俺の戦闘訓練の成績を知っていますか? 自分で言うのもなんですが、センスなんかありませんよ。今すぐ行ったら、死にに行くようなものです。それくらいわかるでしょ?」

「知ってる。ただ、君の訓練に付き合っている兵士達はそうは思っていない。技はまだいまいちだけど、君の攻撃は重く、既に街の外に出ても問題のないレベルだと思われている。そして、強くなるのは実践だとも思っている輩も多くてね」


 冬季はその問いに直ぐにまだ外の世界になど行く事はできないと声を上げ、ミルド自身も冬季の言葉に賛成のようだが、周りの声がそれを許してくれないと首を横に振った。


 ……どうする? このままだと無駄死にだ。何か方法はないか? その前に1人で行けって言うのか? あのバカ王は。


 しばらくは身の安全が保障されていた事もあり、完全に虚を突かれた形になった冬季は目の前にミルドがいる事も頭から抜け落ちてしまったのか乱暴に頭をかく。


「落ち着きなさい」

「落ち着いていられるわけないでしょ。そうだ。護衛くらいは付けてくれますよね? いくらなんでも、1人で行けって事はないでしょう?」

「無理だね。君も知っている通り、我が国の王は打算で動く、1番大事なのは自分の身の安全だ。兵士を無駄に割くような事はしない」

「それは俺に死ねって言ってるって事だ!!」


 ミルドは冬季を落ち着かせようとするが、死の淵に立った冬季が簡単に落ち着く事ができるわけもなく、焦りの表情のまま、冬季はミルドに向かって声をあげる。


「そうだね。道も知らない場所にいきなり投げ出されてしまっては元も子もない。それを踏まえての君の提案だったはずだ。それに私は君を支援したいと言った事もある。だから、1つの提案をさせて貰おう」

「提案?」

「あぁ。これは君が本格的に街へ出るようになった時にもきっと役に立つ事だと思うんだ。聞く気はあるかい?」

「聞かないと何も始まらなさそうだから、聞かせて貰います」


 ミルドは冬季を本当に支援する気のようであり、冬季に提案がある事を告げた。冬季は生き残る確率を上げるためなら、今は手段を選んでいるヒマではないと思ったようでその提案を聞くと頷く。


「今、私は1つの事業として、街や村から1歩、外に出るために護衛を斡旋する仕事を考えているんだ。兵士でなければ危ないからね。だからと言って、街の外にも出ないわけにはいかない人もたくさんいるから、その人達の身の安全を守るような人達を育てて行きたいと思っているんだ」

「それって、ギルド?」

「ギルド? なんだい。それは?」


 ミルドの口から出た物は、マンガやゲーム等で良くある冒険者と言った、ならず者をまとめている組織のようであり、冬季はそれを表現するために良く使われている『ギルド』と言う名を挙げるが、ミルドは聞き慣れない言葉に首を傾げる。

 

「えーと、ゲームやマンガ? 違うな。俺がいた世界での娯楽で、それこそ、勇者とか魔王とかが出てくるお話の中の言葉なんですよ。今、ミルドさんが言ったような事をやってる組織の総称みたいなものです」

「へぇ、そうなんだ。ギルドね……名前は決まってなかったし、せっかくだし、これからはギルドと呼ばせて貰おうかな」


 冬季は説明しようとするがうまく言葉がまとまらないようで、乱暴に頭をかくがミルドには何となくではあるが、冬季の伝えたい事は理解できたようで冗談めかして笑う。


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