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召喚勇者は現実主義者?  作者: まあ
第1章 勇者の旅立ち……いいえ、旅立ちません。
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第4話

「失礼します。冬季様をお連れしました」

「あぁ。悪いが、部屋に入ってくれるかい? ちょっと、放せなくてね」

「失礼します……何をしているんですか?」


 レミに案内され、冬季は王から冬季に部屋を提供するように命を受けた貴族である『ミルド=グリス』の書斎を訪れ、ドアを開けると本棚から落ちてきた本に潰された男性がそこにおり、冬季は状況が理解できないようで眉間にしわを寄せた。


「……ミルド様、それでは失礼します」

「えっ!? ちょ、ちょっと、レミさん、助けなくて良いの!?」


 男性はこの屋敷の主であるミルド本人であるが、レミは彼に頭を下げると救出をする事もなく、部屋を出て行こうとし、冬季は彼女の行動に驚きの声をあげる。


「これに関しては、ミルド様にとっては日常茶飯事の事のため、冬季様も気にしないようにお願いします。それに私の仕事は冬季様のお世話で有って、ミルド様を助けるのは私の仕事ではありません」

「そ、そう言う事なんですか?」

「まぁ、私もこれに関しては自業自得でなれているから、気にしないで良いよ。それより、できれば、助けてくれるとありがたいんだけど」


 しかし、レミは自分の仕事ではないと言い、冬季に頭を下げると退室してしまい、その様子に冬季は顔を引きつらせるが、ミルドはレミを責める気はないようで苦笑いを浮かべた後、冬季に助けを求めた。


「……どうなったら、あんな状況になるんですか?」

「いや、ちょっと、調べ物をしていたら、本が崩れてきてしまってね……それより、ソファーに座ろうか? 流石に床で座って話し合いは勘弁して欲しいから」

「わかりました」


 冬季はミルドの上から本を避けると、どうして、このような状況になったかと聞くが、ミルドは苦笑いを浮かべると立ち上がり、書斎にあるソファーへと移動するように言い、2人は対面して座る。


「それで、何か御用ですか?」

「あぁ、ちょっと困った事になってね」


 呼び出された理由がわからずに首を傾げる冬季。ミルド自身もおかしな事に巻き込まれているようで小さくため息を吐くと、冬季の前に封書を2通置く。宛名には冬季とミルドの名が書かれており、ミルドの方はすでに自分の封書の中身を確認し終わっているようでノリがはがされている。


「これは? ……と言うか、見せられても文字が読めないんですけど」

「確かにそうだったね。それじゃあ、私が読んで聞かせるけど、良いかい?」

「まぁ」

「それじゃあ、まずは私の方の内容をだね」


 冬季は文字が読める事をまだ隠しておきたいため、封書を渡されても困ると言い、ミルドはその言葉を信じているようで頷くとミルドの名前が書かれた封書を手に取り、中身を取り出す。


「王からなんだけどね。内容を要約すると、私の方には君を監視しておけと言う事なんだよ」

「はぁ?」


 ミルドは簡単に封書の内容を話し、突然の事で冬季は鳩が豆鉄砲を喰らったような表情をする。


「驚いてるね」

「そ、そりゃ、普通は言わないでしょ。監視対象に」

「そうなんだけどね。君は確かに勇者として、この世界に召喚された。だけど、私から見れば、この世界になんの義理もない君を勇者として祭り上げるのは納得がいかなくてね。本来、この世界の事は私達、この世界の人間が行わなければいけないはずだ。それを君に押し付けてしまったのに、君に嘘を言うのは私の正義に反する。それに疑ってかかると君も私達を信じてくれないだろう?」


 ミルドはこの世界に召喚された冬季に申し訳ないと思っているようで真実は隠すべきではないと笑う。


 ……この人、バカなのか? いや、違う。きっと、何かを企んでいるに違いない。


 冬季は笑顔を見せるミルドの様子に呆気に取られたような表情をする。しかし、直ぐに頭を切り替え、ミルドの本心を探ろうとするが、そこまでの腹芸をできるほど彼は大人ではない。


「疑っているみたいだね。まぁ、その反応は仕方ない。まだ、私も信じて貰えるような事を君にはしてあげられてないから。ただ、覚えておいて欲しいのは王とは違い、私は全面的に君を支援したい。戦う力がないのが残念な所だけどね」

「まぁ、普通は疑いますよね。王自身が俺の事を利用しようとしているわけですから」

「そうだね。ついでに言えば、こっちもきっと、君を利用するためのものだと思うよ」

「でしょうね。ひょっとして、ミルド様はこっちの封書の内容も予想が付いているって考えても良いんですか?」


 ミルドは冬季を全面的に支援したいと言いながらも、武術などには自信がまったくないようで大きく肩と落とす。

 本に埋もれて動けなくなっていた姿を見たせいか、冬季もその事に関しては何も聞く事はない物の、ミルドが王などより油断できない相手だと思ったようで、1つの賭けなのか王が自分を食い物にしている事を口に出すとミルドは迷う事無く頷き、冬季宛ての封書を手に取った。


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