第19話
「納得がいかないわ」
「納得がいかなくても、下手に首を突っ込むと危険じゃないかな? ライさんは俺やミリアさんじゃ、危ないと思ったから戻るように言ってるわけだし……それにあまり大声をあげてると気付かれるよ。野盗と繋がってるのはあの2人だけとは限らないんだし」
ライの案内で無事に村に戻ると2人を待っていたのは当然のように昼食の準備であり、ミリアは文句を言いながらもしっかりと調理を続けている。
冬季はそんな彼女の様子に苦笑いを浮かべるも心配事は終わっておらず、ミリアにこの話はここまでにしようと言う。
「そうだとしても」
「だから、静かに、仮に俺がギルド員の中に内通者がいるなら、全部を接触させるような事はしないよ。他人の目ってのは案外、自分が気が付かないところにあるから、ミリアさんが下手に動いて、相手の戦力も見極められないとミルドさんに危険に曝される。それはギルド員として不味いんじゃないの?」
「確かにそうなんだけど」
それでも、納得のいかないミリアではあるが、ギルド員としての自覚はあるのか、依頼人であるミルドの名前を出されては納得するしかないようであり、ぶつぶつと言いながら自分の作業に戻って行く。
「これで、一先ずは落ち着いたかな?」
「そうだと良いな……」
「ロッドさん、それってどう言う事ですか?」
冬季は一先ず、ミリアが納得してくれたと思ったようで胸をなで下ろすと彼の背後にロッドが現れ、ため息を吐いた。
冬季はロッドが妹であるミリアの性格を熟知していると思ったようで、眉間にしわを寄せながら聞く。
「冬季、ミリアが暴走しないように見張りを任せるよ。感情のままで動かれると状況整理もできないし」
「それって、確実に暴走するって事ですよね!? それがわかってるなら、どうして、連れてくるんですか? ミリアさんにばれたらこうなるのってわかりきってた事でしょ」
「それはほら……ミリアにばらした冬季の責任として」
ロッドはポンポンと冬季の肩を叩き、ミリアを押し付けようとし、冬季はミリアの制御などできるわけがないと思っているようで人選くらいは考えてくれと声を上げる。
しかし、ロッドはミリアに野盗へと繋がっている人間がいる事を伝える気はなかったようであり、全部、冬季の短慮が悪いと責任をなすりつけた。
「だって、仕方ないじゃなですか? あの時、説明しないと普通にあの2人に声をかけてましたよ」
「だろうね。と言う事でよろしく」
「だから、よろしくじゃないですって、無理、無理です」
状況が状況だけに仕方がない事だったと肩を落とす冬季。
それについてはロッドは納得するものの、それとこれとは別であり、冬季は絶対に無理だと主張する。
「大丈夫。大丈夫。ミルド様から聞いてるけど、冬季は慎重だし、年の割に周りを見る事ができる。ミリアの手綱ぐらいは引けるって、あ、だけど、ホントに手綱を付けるようなおかしなプレイは兄として認められないけど」
「しません!? 何を言ってるんですか!?」
ロッドは冬季の性格を知って、ミリアと組ませるのはバランスが取れているとも思っている。
冬季の説得におかしな言葉が混じっており、いきなりの事に冬季は驚き顔を真っ赤にして声を上げた。
「冬季、バカ兄貴、遊んでるなら、手伝いなさい!!」
「ミリアがご立腹みたいだから、冬季、任せるぞ」
「ちょ、ちょっと、逃げないでください!?」
「……冬季、あんたまで逃げる気?」
「そ、そんなわけないですよ」
その時、2人の様子に気づいたようで、ミリアは自分だけ働かされているため、2人を怒鳴りつける。
ロッドはその声にそそくさと退散して行き、冬季は背中に突き刺さるミリアの視線に顔を引きつらせ、直ぐにロッドの後を追いかけようとするが、そんな彼の肩を鬼の形相のミリアがつかむ。
冬季は逃げれば殺されると思ったようで声を震わせながら頷く。