第16話
「……何と言うか、迷った相手が悪い」
「何よ?」
2人で村に戻るために、目印を探そうとするがミリアは探索に向いていないようで足早に歩いて行き、冬季ははぐれてはさらに面倒になるためか後を離れずについて歩いている。
「何よ? じゃなくて、村に戻るために手掛かりを探そうって言ってるのに何も見ないで行かないでよ。村に近づいていれば良いけど、逆に歩いていたら、どうするのさ」
「時間をかけて探したって、何も見つからないんだから、歩くしかないでしょ」
「歩くしかないにしても、自分達の位置情報くらいわかるようにしてないと……ミリアさん、ちょっと、ナイフを貸して」
「何する気よ」
冬季は林の中で方向がわからなくなるのが怖いため、近くの木に印をつけようと思ったようで、ミリアにナイフを貸して欲しいと手を出す。
ミリアは冬季が何をするつもりかわからないようで疑いの視線を向けているが、何か考えがあるとも思っているのか、冬季の手のひらにナイフを載せる。
「自分達がどの方向から来て、どこに向かって行くか、それくらい、わからないとどれだけ時間が経っても村に戻れないよ。取りあえず、ここを中心として、捜索範囲を広げていこう」
「……冬季、これ、なんて書いてるの?」
「あー、まぁ、遠い異国の字だよ」
ミリアに借りたナイフで冬季は木に印を付けると『スタート地点』と書き込むとミリアは見慣れない文字に首を傾げると冬季は苦笑いを浮かべた。
「異国? 何で、そんなものを使うのよ。私にわかる文字で書きなさいよ」
「いや、ミリアさんに読める字で書いたって、見ないでしょ。それに……ミリアさんの性格を考えるとロッドさんもライさんも裏切り者の話はしてないだろうし」
「何よ? また、隠しごと」
冬季はグリッツで使われている文字を使うと野盗に文字が見つかると面倒な事になると思ったようで自分だけがわかる文字と他にも矢印と使い慣れた数字を書き込んで行く。
「隠しごとってわけじゃないけど」
「でもさ。冬季だけがわかる文字なら、村にいる人達が探しに来ても、わたし達がどこに行ったか、わからないんじゃないの?」
「……確かに」
「あれ?」
冬季が気が付かなかった事にミリアが気が付き、冬季は夜盗の事があるため、どうしようかと首をひねった時、ミリアが何かを見つけたようで首を傾げた。
「どうかした?」
「あれ。言ってるそばから探しにきてくれたんじゃない」
「ちょっと待って……不味い、不味いぞ」
ミリアの視線の先には2人のギルド員があるいている冬季とミリアを探しているようにも見えるがその様子はどこか落ち着きにかけ、2人を探していると言うよりは他のギルド員に見つからないようにしているようにも見える。
冬季はその様子にイヤな予感がしたようでギルド員に声をかけようとしているミリアを引き止め、木の陰に隠れる。
「ちょっと、どうしたのよ?」
「静かに……ミリアさんはロッドさんかライさんから何か聞いてる?」
「何かって何よ?」
ミリアは冬季の行動に意味がわからずに眉間にしわを寄せるが、冬季はこの胸騒ぎから逃げ出したい事もあるのか、ミリアに改めて、野盗の事を聞いていないかと聞くが言葉を濁した事もあり、ミリアははっきりと物を言わない冬季の態度が気に入らないようで彼女の眉間のしわはさらに深くなって行く。




