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召喚勇者は現実主義者?  作者: まあ
第1章 勇者の旅立ち……いいえ、旅立ちません。
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第2話

 ……さて、何から始めるべきかな?


 用意された寝所は王城から少し離れたところにある貴族の家の部屋の1部屋を間借りしたものであり、冬季は勇者になると決めたものの、これからの事を考えないといけなく、ベッドの上に寝転ぶと天井を見上げる。


 まずは物の読み書きだろ? 後は俺を召喚した張本人の情報収集? 王は精霊様って言ってたよな? そいつを見つけて、必ず、元の世界に戻るんだ。当然、時間も元に戻して貰わないといけないな。


 初めにやるべき事は、文字の習得である事は決まっているのだが、それに並行して必要な事は冬季をこの世界に召喚した者を知る事。

 冬季自身は正直、この世界の事などどうでも良いと思っている。

知らない世界に相手の都合で有無も言わずに呼び出された人間としては恨みこそあっても、この世界を救う義理など存在するわけがない。


 あれ? 何かが引っかかるんだよな? 何だ? この喉に骨が引っかかったような感じは?


 しかし、何かが引っかかる。それが何かわからずに、引っかかっている事が思い出せないようで乱暴に頭をかいた。


 待てよ。あの美少女が精霊様ってヤツか? 待てよ。あれは夢だろ?


 冬季は1つの事を思い出したようで、勢いよく体を起こす。彼の中には1人の美少女の姿が思い浮かぶ。

 その美少女は惰眠を貪っていた冬季の前に現れたようであり、冬季は眉間にしわを寄せるとその時の事を思い出そうと頭を捻る。


 ……そう言えば、世界を救ってとか言っていたような。でも、それより、重要な事があったはずだ。そうだ。あの美少女は全裸だった!! 思い出せ。言っていた事より、もっと、重要な部分があったんだ。胸や色々な所が!!


 冬季は美少女の格好を思い出したようで、目を見開くと夢の中に現れた美少女の肢体の隅々を思い出そうとする。

 今のおかしな状況より、自分の本能に忠実に生きようとするのは10代男子には珍しい事ではないが完全に思考は脱線を始め出す。


 ……どうして、何も思い出せないんだ?


 かなりの時間、美少女の肢体の隅々を思い出そうとしたわけだが、思い出す事はできず、冬季は血涙を流しながら、枕を叩く。

 その姿は勇者と言うには酷く情けない姿には見えるが、彼のおかしな行動を責める人間もいない。


「勇者様、よろしいでしょうか?」

「は、はい。少し待ってください。今、開けます」


 その時、誰かが部屋のドアをノックする。ノックの音に冬季は現実に呼び戻されたようで慌てて返事をすると入口に向かって駆け出そうとするが、ベッドから降りる際に足を踏み外し、盛大な音を立てて転ぶ。


「……す、すいません。お待たせしました」

「大きな音がしましたが、どうかしましたか?」

「えーと、何でもありません」


 冬季は転んだ時に腰を打ちつけたようで右手で腰をさすりながら、ドアを開けるとメイド服に身を包んだ40代前半に見える女性が立っている。

 彼女は1度、頭を下げると部屋の中から聞こえた音の原因を訊ね、冬季は流石にベッドから落ちた事を話すのは気恥ずかしかったようで視線を逸らす。


「そうですか?」

「は、はい。あの、それで貴女は?」

「申し遅れました。『レミ=アグリア』と言います。王様から、駐留中の勇者様のお世話を申しつけられております」


 女性は自分の名前を名乗るともう1度、頭を下げ、冬季の世話をする事を告げた。


「せ、世話?」

「はい。お食事の準備やお掃除、お洗濯、何なりとお申し付けください」

「ちょっと待ってください」

「どうかしましたか?」


 自分にメイドが付くなどまったく考えてもいなかったようで、突然の事に慌てる冬季だが、レミはメイドと言う仕事で長い間、人に仕えているためか、冬季が慌てる理由がわからないようである。


「いえ、いきなりの事で、どうして良いものかと、あの。とりあえずは今は何もないので、何かあったら、呼びます」

「そうですか? わかりました。それでは、御用の時にはこれでお呼びください」

「は、はい。ご丁寧にありがとうございます」

「それでは失礼します」


 冬季は自分を落ち着かせる必要があるようで、レミに下がるように言う。

彼女は冬季の言葉にメイド服から1つの鈴を取り出し、彼に渡すと頭を下げた後、部屋を出て行く。


「メ、メイドさん? 初めて本物を見たよ……だけど、こう言う時って、普通は同じ年くらいの可愛い女の子じゃないのか? まぁ、ネット小説や妄想とは違うよな。さてと、早いところ、方針を決めないと、いつまでもダラダラとしていると追い出されそうだからな」


 ドアが閉まり、1人になると冬季は、初めて見た本物のメイドと言う今までの世界の冬季には縁のない物に口をポカーンと開けるも、直ぐに頭を元に戻し、改めて、これからの事を決めようと頭を動かし始める。


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