第11話
「……知り合いを紹介してくれるんじゃなかったんですか?」
「良いか。これを持ってあそこの鍋の前にいる娘に声をかけてくるんだ」
ロッドについて歩くと、ギルド員が朝食の準備をしている場所に戻ってしまう。
冬季はどこか疑ったような視線をロッドに向けているとロッドは懐から小さな布袋を取り出し、冬季に渡す。
「これ、何ですか?」
「いや、ここら辺の木に生ってる実なんだけど、良い調味料になるんだよ。それを取りに行ってたんだけど、冬季と話してただろ……と言うわけだ」
「それって、怒られるかもしれないから、俺に状況を説明してこいって言ってるだけじゃないですか?」
「そうとも言うな。頼む」
冬季は突然、渡された布袋に首を傾げると、ロッドは中身の説明とその時に言い訳をして来てくれと手を合わせ、冬季に頼み込む。
「……わかりましたよ。だけど、俺、名前も知らないのにただ行ってこいじゃなくて」
「大丈夫だ。俺の妹だから、そいつを渡せば、どうにかなるはずだ。名前はミリアだ。頼んだぞ」
「それじゃあ、行きましょうか……逃げた? そんなに妹さんは怖いのか?」
ロッドは渡す相手を指差す。ため息混じりの冬季は説明するから、一緒に行こうと言いかけるがすでにロッドの姿はなく、ロッドが逃げ出すミリアと言う女の子の性格がどれだけきついのか不安になりながらも行かないわけにはいかず、肩を落としながら鍋の前にいる少女へ向かい歩き出す。
「あ、あの、ミリアさん、ですよね?」
「何やってるのよ。遅いわよ。バカ兄貴!! ……誰?」
「えーと、ロッドさんからこれを預かったんですけど」
ロッドが指差していた少女に声をかけると、少女は額に青筋を浮かべて冬季を怒鳴りつけるが、ロッドではない事に首を傾げた。
冬季は怒鳴られて事もあり、少し距離を取ってから、ロッドに預かった布袋をミリアに渡す。
「あ、ありがとう……」
「えーと、冬季」
「冬季? あたしは……名前を言ってたけど、一応、ミリアよ。それで、これを持ってた、ウチのバカ兄貴はどこに行ったの?」
初対面でありながら、いきなり怒鳴った事もあり、2人の間には微妙に気まずい空気になっている。
冬季はその空気を振り払うためにもまずは話をしないといけないと思ったようで名前を名乗るとミリアは冬季に続いた後にロッドの居場所を聞く。
「いや、ちょっと、話をしてたら、時間が経ち過ぎてて、急いで戻ろうって話になったんだけど、他のギルド員さんにロッドさん、捕まっちゃって」
「本当に? ……」
「本当だよ。って、近いよ!?」
冬季はロッドが悪くない事を説明すると代わりに布袋を届けに来たと言う。
しかし、ミリアはその言葉に真偽を確認したいようで冬季の顔を覗きこみ、いきなり近づいて行きたミリアの顔に驚き、後方に飛ぶ。
「何? 逃げるって、嘘をついてるんじゃないの?」
「そ、そんなわけじゃないよ」
動揺している冬季に対して、ミリアは何とも思っていないようで眉間にしわを寄せる。
冬季は初対面とは言え、何も感じてくれない事に男扱いされてないと思ったようで、少し落ち込むもそんな事を言っていられる状況でもないため、ショックを顔に出さないように平静を保つ。
「そう? まったく、あのバカ兄貴、朝食の準備を投げ出して、この人数分を1人でやるなんて無理に決ってるでしょ。最初は何人かいたのにいつの間にみんな逃げてるし……ねえ、手伝って」
「えーと、俺は料理なんてした事無い」
「した事無いじゃなくて、手伝いなさい。あんた、ギルド員なんでしょ、できない人間ばかりの依頼を受けた時、最悪よ。覚えておいてなんの損にもならないから」
「……ラ、ラジャー」
料理をしていたギルド員はいつの間にかミリアを抜かして逃げ出したようであり、ミリアは1人で行うのは無理のため、有無を言わさずに冬季に手伝いをさせる。




