第9話
「冷たいな……と言うか、寄生虫とか大丈夫なのか?」
ロッドの言う通り、何事もなく夜は明け、冬季はライを含めた数名のギルド員とともに村の近くの川で汗を流している。
川の水は思いのほか冷たいが、気持ち良いものであり、冬季の表情は緩むが直ぐに表情を険しくした。
……一応、他の人達は当たり前のように水浴びをしてるから、大丈夫だと思うけど、そもそも、クレメイアの人間と俺って、同じ構造なのか? こっちで無害なものが俺には有害とかってないよな? そもそも、病気になったら、どうするんだ? 同じ薬とかで効果ってあるのか? 風邪引いて肺炎になりでもしたら、終わりなんじゃないか?
一緒に水浴びをしているギルド員に視線を向けるとギルド員は気にする事無く、川の水で汗を流し、中には煮沸する事無く、そのまま川の水を飲んでいる者までいる。
その様子に冬季は改めて、自分が別世界の人間だと言う事を思い出し、これから、ちょっとした事でも気を付けないと思ったようでそそくさと川から出るとタオル代わりに持たされた布で念入りに川の水を拭く。
「ずいぶんと早いじゃねえか? ロッドに風呂ないのか? って、文句を言ってたわりに」
「……前を隠すような事はないんですか?」
冬季が川から上がった事に気づき、ライは追いかけるように川から上がってくるが、その姿は無駄に堂々としており、逆に冬季は恥ずかしくなったようで視線を逸らしてため息を吐いた。
「別に男同士なんだ。気にする事でもないだろ。まぁ、問題はギルド員の中に今回は女も混じってるからな。覗く時はばれないようにしろよ」
「いや、興味はそそられるけど、覗いたら、ダメでしょ。連携取って仕事しないといけないのに不信感を持たれたら、面倒な事になりますよ」
「口では真面目に答えているけど、身体は素直だな。しっかりと想像したな。それともガキに見えるけど経験ありか?」
しかし、ライは気にする事無く豪快に笑うと女性ギルド員の水浴びを覗く時に注意するように言う。
冬季は覗かないと口では否定しながらも、この世界に呼び出された精霊だと思われる美少女の裸体を思い出したようで男性にのみ与えられた聖剣は反応を示しており、その様子にライは冬季をからかうように笑う。
「な、何を言ってるんですか?」
「別に恥ずかしがる事でもねえだろ。人間、生きていれば誰もが通る道だ」
ライの笑い顔に冬季は自分の聖剣を慌てて手で隠すと、ライはその様子が楽しいようで冬季の肩に手を回し、豪快に笑う。
「ちょ、ちょっと、何するんですか!?」
「……新入り、そのままにしていろ。こっちを見てるヤツがいる。見た感じ、今回のギルド員じゃない」
「えっ!?」
「視線を動かすな。今回は偵察だ。人数も2人と少数だしな」
「わ、わかりました」
慌てる冬季は驚きの声を上げるが、ライは他の物を見ていたようであり、先ほどまでのふざけた様子ではなく、今、ここにいるギルド員を観察している人間がいると言う。
その言葉に冬季は直ぐに反応してしまいそうになるが、ライに止められる。
「何だ。経験なしか? それなら、今度、そう言う店にでも行くか?」
「な、何を言ってるんですか? ……そう言うのはやっぱり、好きになった人じゃないとイヤでしょ?」
「なんだ? そんな子がいるのか?」
「い、いない。いない。そんな子はいない」
ライはこちらに向けられている視線に注意しながらも冗談を続け、冬季は気になりはするものの下手を打ってしまってはいけないと思ったようでライの冗談に答えるが顔はどこかぎこちない。
そんな冬季の様子にライはニヤニヤと笑うが、冬季は顔を真っ赤にして否定する。