第6話
……ミルドさんの様子を見ると野盗が紛れ込んでいてもおかしくないって事か?
流石に長距離移動のため、話す事もなくなってしまい、各人が黙ってしまうと冬季は先ほどミルドの様子から、今回のギルド員の中に野盗へ内通している人間がいると言う疑惑は大きくなっている。
……と言うか、疑い始めると全員が怪しく見えてくるよな。
何となく、馬車に同乗しているギルド員へと視線を移す。
乗物に弱いのか具合が悪そうにしている者、魔族や獣が出てこないかと外の気配をうかがっている者、他のギルド員と話をしている者、眠くなってきたのか、欠伸をしながら目をつむる者、そう考えてしまうと誰もが怪しく見えてくる。
……ミルドさんが、口に出さないようにって言う事はミルドさんは野盗と内通している人間に気が付いているのか? と言うか、本当に喰えない人だよな。
ミルドへと視線を移す。
ミルドは冬季の視線に気づき、表情を緩ませると冬季は小さくため息を吐く。
……取りあえずは、ミルドさんの手の上で踊るしかないのか? 少なくとも野盗と内通している人間もいるだろうけど、ミルドさんが信用してメンバーに加えている人間もいるはずだし、その辺の人間は気づいているんだろうからな。
冬季は自分1人ではどうにもならない事であるため、頭をかくと一先ず、考える事を止めようとする。
このまま、考え続けると人の命を奪う事になる事と向き合う事であり、冬季の手のひらにはじっとりと汗がにじみ始めている。
「ミルド様、村が見えました」
「そうかい?」
その時、馬車を運転していた従者が、村が見えてきた事を告げる。
「冬季、降りる準備をしてくれるかい? みんなもね」
「は、はい……って、そう言えば、ミルドさん、ひょっとしなくても野宿ですよね?」
「一応は、この間、ロッドやライ達に事前調査を頼んでいたからね。以前の村長の屋敷はまだ住めそうだと言う話でね。そこを拠点にして、村を見てみようと思ってさ」
ミルドは同じ馬車に乗っているギルド員に指示を出す。
冬季はその言葉に頷いた後、宿泊設備などない廃村に泊まる事に気づき、眉間にしわを寄せるとミルドは宿泊についてもしっかりと考えていたようでくすりと笑う。
「そうですか……それは良かった」
「野宿は不安かい?」
「そりゃ、野宿なんてした事無いですからね。子供の頃に学校の行事でキャンプ場にテントで泊まったくらいですよ」
「キャンプ場?」
「まぁ、そのうち話しますよ」
野宿ではないと知り、胸をなで下ろす冬季。
ミルドは冬季の様子に苦笑いを浮かべると冬季はなれない事にどうして良いのかわからないようで頭をかく。
「とりあえずは何事もない事を祈りましょうか?」
「祈るって言っても精霊様は魔王に捕えられて、力を貸してはくれないよ」
「そこら辺は気にしないでください。日本人は困った時には神様にでも仏様にでも、それこそ、ご先祖様にでも祈る節操なしなんで」
「神様? 仏様? ご先祖様?」
自分の中にある不安を紛らわすために目を閉じ、手を合わせると冬季が何をしているかわからないミルドは首を傾げている。
「クレメイアで精霊様を信仰するように、俺達の世界で精霊様のように信仰されているものだと思ってくれれば良いです」
「わかったよ……到着したみたいだね」
苦笑いを浮かべる冬季、そんな彼の様子に何となくだがミルドは納得できたようで頷いた時、馬車は減速して行き、目的の場所に到着したようである。




