第5話
「大丈夫かどうかを確認に行くんだよ。それに、魔物の脅威が大きくなって、次々と村を捨てて王都に人々が集まってきている。いつまでも難民を受け入れて行けるほど、王都には余裕はない。働く場所だって不足してるし、人が増えると食料だって不足する。村を再建させ、魔物に対応できる戦力を配置する事が出来れば、復興は成るからね」
「確かにそうかも知れないですけど、上手く行くんですか? お金もかなりかかるでしょう?」
ミルドはこのままではグリッツは難民を受け入れてもそれを維持できる力はないと真剣な表情をして言い、冬季はテレビで見ている復興の難しい事を見ているため、乱暴に頭をかく。
「かなりかかるね。これでも、それなりにお金は貯め込んでいてね」
「貴族だしね。だからと言っても」
「まぁ、何もやらないで終わりを迎えるほど、私は諦めが良いわけじゃないんだよ」
「そうですか……」
ミルドはこれも自分の戦いの1つだと笑い、冬季はテレビの奥にいた口先だけの政治家とは違うミルドに少し戸惑っているようで首をひねっている。
「そう言う事で、冬季にも力を貸して貰うよ」
「は? 俺が力を貸す? 何を言ってるんですか? 俺はようやく戦えそうになってきただけですよ。復興に力を貸せるとは思えないんですけど」
「そうでもないよ。冬季には知識があるだろ。クレメイアとは違う世界の知識が、使えそうな知識があれば、教えて欲しい」
ミルドが冬季を今回の依頼に連れて来たのは外の世界を見せる以外にも意味があったようで、元の世界の知識を教えて欲しいと言う。
「無理ですよ。ネットで溢れてる内政系の小説じゃないんですから、知識として知っていても、どうすれば、それができるかなんてわからないんですから、妄想を簡単に現実にできるほど、俺は頭にお花は咲いてないですよ」
「でも、冬季の世界には便利な物があるんだよね。答えや終着点がわかっているなら、多くの人間が頭を捻れば、完全に一致するものはできなくても、似た物はできるかも知れない。無い物を作り出そうとするよりは、ヒントがあれば完成までの道筋を作れる人間だっている可能性はあるだろ?」
「そうかも知れませんけど……」
冬季はミルドの考えを最初から否定しようとするが、ミルドはミルドなりにできる事を模索しているようであり、些細な事でも良いから力を貸して欲しいと笑う。
冬季はできると思ってはいないようだが、否定し切る事も出来ないようで首をひねっている。
「まぁ、頭の片隅にでも置いておいてよ」
「わかりました」
「それじゃあ、さっき、言いかけた。ゴムとかサスとか言う物について聞こうか?」
「いや、説明するにもいろいろと面倒なんで、王都に戻ってからにしましょう。いろいろと考えてると注意力散漫になりそうですから」
ミルドは先ほど、冬季が話していた事が気になるようで、説明して欲しいと言うが、いざ説明するとなると上手く説明できないようで冬季は頭をかく。
「まぁ、そうだね。まずは村の様子を見てくるのが大事だね」
「そうです。まずは生きてグリッツに帰る事が重要です……ミルドさん」
「ん? どうかしたのかい?」
まずは生きて王都に帰らなければ、説明も意味がないと言った冬季だが、何かが引っかかったようでミルドの服を引っ張る。
ミルドは首を傾げると、冬季はミルドに顔を近づけるように手招きをする。
「……今更だけど、今回のメンバーに野盗が混じってるって事はないよね?」
「どう言う事だい?」
「いや、ギルド員の素性って、よくわからないから、野盗の仲間が紛れ込んでたら危ないと思ったんだよ」
「冬季、それについては、口に出さないようにするんだ」
「……わかった」
冬季が感じたのはギルド員に野盗の仲間が紛れ込んでいる可能性を聞く。
その言葉にミルドは眉間にしわを寄せると何かあるのか冬季に口止めをし、冬季はミルドの様子から何かあると察したようで小さく頷き、話を打ち切った。




