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召喚勇者は現実主義者?  作者: まあ
第3章 王都周辺探索? ……襲われるような迂闊な姫など存在しない。
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第3話

 馬車は王都の入口で出国審査なのか、兵士に止められ、代表であるミルドは兵士からの質問に答えている。

 冬季はその間に、まだ、出た事のない王都の外が気になったようで馬車の幌から顔を出すと王都と外の世界を分ける門の先には、薄暗い闇のなか、1面の平原が広がっている。


「……これって、大丈夫か?」

「何だ? 新入り、不安なのか?」


 王城で行っていた戦闘訓練は魔法や松明で灯りが点いており、視界不良の状況での戦闘は冬季には経験もなく、戦闘になった時にまともに動けるかと思ったようで、小さくつぶやくとその声が聞こえたようであり、ライはこの程度の事、何とも思っていないようで冬季の背中をバンバンと叩く。


「視界が悪いですからね。周囲を警戒するだけでも神経を削りそうですから」

「そんなもん、気にしたって仕方ないだろ。魔物や野盗が出たら、ぶっ飛ばす。それだけだろ」

「……ライさんはそうでしょうね」


 周囲への警戒を緩めるわけにはいかないと言う冬季。

しかし、心配をしている冬季とは対照的にライは何も考えていないのか豪快に笑い、その様子に冬季はライの分も周囲への警戒をしようと思ったようで気を引き締めるが、その姿には気負いが見える。


「冬季って、言ったかい。気負いすぎだ。ライみたいに何も考えないのは困るが、1人じゃないんだ。もう少し肩の荷を降ろしても良いぞ」

「あ、は、はい……」

「ロッド=クリン。一応は魔術師」

「冬季、結城冬季です。名が冬季で、家名が結城になります」


 冬季の様子に何か感じたようで、彼の肩に手を置き話しかける男性。

 男性は20代前半であろうか、落ちつた様子であり、柔和な笑みを浮かべて『ロッド=クリン』と名乗ると冬季は釣られるように頭を下げて名乗る。


「へぇ、家名が先にくるなんて、珍しいね。グリッツとは違う国からきたのかい?」

「違う国と言えば、違う国ですね」

「何だ? ロッドは聞いてねえのか? この新入りが噂の……」


 グリッツでは聞かない名前にロッドは首を傾げるとライは冬季がクレメイアを救うために召喚された勇者だと知っているようで、口を滑らせようとするが、寸でのところで冬季はライの口を塞ぐ。


「噂の? 冬季、何かあるのかい?」

「何もないです。気にしなくて良いです。俺の両親が長旅でグリッツにきたみたいです。どこの国から来たかは聞いた事がないのでわかりません」


 冬季とライの様子に首を傾げるロッド。

 冬季は取り合えず、自分がクレメイアを救うために召喚された勇者だとあまり多くの人に知られたくない事もあり、嘘の両親をでっちあげる。


「そうなのか? まぁ、あまり気負いはしない事、張り詰めてると、ふとした瞬間に対応できなくなるからな」

「は、はい。アドバイス、ありがとうございます」

「気にするな。少なくとも、今回の依頼が終わるまでは俺達は仲間だ。仲間の力を頼る事も依頼を終わらせるのには重要だからな……ん? 終わったみたいだな」


 冬季はロッドのアドバイスを素直に聞いたようで頭を下げる。

 ロッドは依頼の間、よろしくと言いたいようで笑顔を見せた。その時、ミルドは兵士との話し合いを終えたようで、こちらに向かって歩いてきている。


「冬季、ライ、ロッドも一緒かい?」

「あぁ。ライが若人をからかっていたからな」

「ライ、冬季は初依頼なんだ。緊張しているに決まってるじゃないか」

「おいおい、俺は新入りで遊んでないだろ。それに、俺はその緊張をほぐしてやろうとな」


 ミルドは冬季が他の冒険者達と一緒にいる事に首を傾げ、ロッドは彼の疑問に答えるように苦笑いを浮かべて言う。

 ロッドの言葉が不満なのか、ライは文句を言うが、その声には怒気はなく、この3人が懇意にしている事がうかがえる。

 3人の姿に冬季は小さく表情をほころばせると、直ぐに元の世界の友人達の顔が思い浮かんだようでさびしそうに笑うが、冬季の表情の変化に気が付く者は誰もいない。


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