表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚勇者は現実主義者?  作者: まあ
第3章 王都周辺探索? ……襲われるような迂闊な姫など存在しない。
16/37

第1話

「勝負あり、勝者、冬季」


 王城の兵士の訓練室で審判を行っていた兵士が冬季の勝利を宣言する。

 

 ……何とか、勝てたよ。


 自分の勝利が宣言された事に安心したようで胸をなで下ろすと冬季は手にしていた木剣を下ろし、訓練室の床に座り込んだ。


「冬季、もう少しやるか?」

「無理、流石にこれだけ連戦すると体力が持たない」


 冬季の様子に審判をしていた兵士は苦笑いを浮かべながらも訓練の継続意思を確認するが、冬季はすでに10人の兵士の相手をしており、息も絶え絶えである。


「だとしても、立てよ。いつまでも中央でへたり込んでると邪魔だ。それより、負けたわけじゃないなら、回復魔法でもかけてやれよ」

「簡単に回復魔法って言うけど、制限だってあるんだ。省エネで行かせてくれ」


 兵士の1人がへたり込んでいる冬季を見て、ため息を吐くと立ち上がれと言って手を伸ばす。冬季はその手をつかんで立ち上がると最近、訓練に付き合ってくれる兵士達の間であてにされ始めた治癒魔法にも縛りがあるようで大きく肩を落とす。


「制限? そんなものがあるのかよ? 特殊な魔法は面倒だな」

「あぁ、単純に使用回数だけどね。現状で使えるのは起きて眠りにつくまでで10回が限度、それ以上は発動しないだけじゃなく、強烈な眠気が来る。使ううちに使用回数が増えるかは不明」

「眠くなるのは疲れてるだけじゃないかな? 最近じゃ、結構な量の訓練をしてるからね」

「ありがとうございます……まぁ、昔、何かの本で読んだ事があるんですよ。余計な事を考えたくないなら、考える余裕もないくらいに身体を動かせって」


 冬季は回復魔法の副作用と使用数を話すと訓練室を覗きにきていたのか、ミルドが冬季の頭の上にタオルをかぶせ、冬季はそのタオルで汗を拭く。

 ミルドの登場に兵士達は静かになり、彼が貴族の中でも高貴な人間だと言う事がわかるがすでに冬季は彼のところで世話になり、かなりの時間を共有しているせいか、冬季はあまり気にした様子はない。


「そう? でも、元気になって良かったよ」

「割り切れはしてないですけどね。それでも、やれることぐらいはしないといけませんから……そろそろ、王様やミルドさん以外の貴族の方々の視線が痛くなってきましたしね」


 冬季がギルドに登録してから、既に冬季の感覚で1ヵ月ほど過ぎている。

王様から渡された命令書に関しては相変わらず、無視を決め込んでいるわけだが、いつまでも王都から出る事無く、魔物を倒すわけでもなく、訓練に勤しむ勇者は彼らにとってはただ飯ぐらいと変わらないため、冬季への風当たりは強くなっている。


「それなら、1度、王都の外に出て見るかい? 私の護衛で、ギルド員もそれなりに連れて行こうと思ってるんだけど、その中に同行できるように手配するよ」

「ミルドさんの護衛ですか?」

「不満かな?」

「いや、こう言う時って、可愛いお姫様の護衛がお約束じゃないかな? って」


 ミルドは冬季を護衛に誘いにきたようであり、冬季はミルドの世話になっている事や、知らない人とともに行動するよりはミルドと一緒の方が気が楽だと思いつつも、可愛い女の子とお知り合いになると言うお約束とは違う展開に残念そうに言う。


「冬季にはたくさん、元の世界の娯楽の話を聞いたけど、こんな危ないなか、お姫様はわずかな護衛で王都の外なんかに出ないから、そんな事をするのは迂闊を通り越してバカだから、姫1人が死のうがどうでも良いけど、そのせいで護衛達をも危険な目に遭わせるわけにはいかないだろ。王宮の兵士なんて、そんなに給金が高いわけでもないんだから、そんなのお話の世界の話だよ」

「そうですね。そんなバカな事はしないですよね」


 ミルドは冬季の言うお約束など簡単に起こらないと言うと、冬季もクレメイアに来てから何度もお約束を破られた事もあり、うんうんと頷く。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ