第4話
「良いわよ。目的地までの安全確保ができれば、他にも思考が向く。魔物を倒したいと思うなら、倒したいと思う人間と組んで歩けば良いわけだしね。ただ、王都から出て、戻ってきたら、必ず、ここによって、ルートやどんな魔物が出てきたかを知らせる事ね」
「生存確認は大切だよね」
「そうですよね……誰だって死にたくはないですよね」
ステラもミルドも安全第一だと思っているようで、冬季の事を責める事はなく、冬季は安心したのか胸をなで下ろした。
「魔物や魔族と戦闘なんて、言ってしまえば、ただの自己満足、帰ってきて欲しいと願ってくれる人がいるなら、命をかけて戦う必要性何かないわよ」
「帰ってきて欲しいって願ってくれる人ね……」
「冬季、どうかしたかい?」
ステラ自身は無駄な事で命を失うなどバカげていると言いたげであり、冬季はその言葉をかみしめるようにつぶやく。
そのつぶやきには自分が元の世界に戻る事を家族や友人は願っていてくれているのだろうかと思ったようで小さく表情を歪ませる。
その小さな表情の変化にミルドは気が付いたようで、彼の顔を覗き込んだ。
「何でもないですよ」
「そう……とでも言うと思ったかい?」
冬季はミルドに言っても仕方ないと思っているようで、首を横に振る。
ミルドはその言葉に頷こうとするが、彼の考えていた事がわかっていたようで真剣な表情をする。
「な、何ですか?」
「少なくとも、君がクレメイアにいる間、私は君がこの場所に帰ってきて欲しいと願うよ」
「……いえ、俺、そっちの趣味はないので」
真剣なミルドの表情に冬季は戸惑いを隠せない。そんな彼の様子に、ミルドは笑うが冬季は変な意味でとらえてしまったようで、1歩、後ずさりをする。
「冬季、君は何かおかしな勘違いをしていないかい? 言っておくけど私に男色の趣味はないよ」
「そ、そうですよね。そう願いたいです。そうだったら、直ぐにあの屋敷から逃げないといけませんから」
冬季が何を考えたか、理解できたようでミルドは大きく肩を落とすが、冬季は罠ではないかと疑っているようで、ミルドとの距離を縮める事はなく、2人の姿を見て、ステラは楽しそうに笑っている。
「ステラ、笑っていないで、冬季の誤解を解いてくれないかい?」
「いや、でも、あの言い方だと冬季くんが勘違いするのもわかる気がしますからね。冬季くん、心配しなくても、ミルド様は根っからの女好きだから、警戒しなくても良いわよ。そこは私が保証するわ」
「そ、そうですか」
ミルドはその勘違いはあんまりだと言いたげにステラに助けを求めると、ステラは余程、笑いのツボに入ってしまったようで笑ったまま、ミルドの無罪を保証し、冬季は警戒しつつも、元いた場所に戻った。
「そんな勘違いをされるとは思っていなかったよ」
「い、いや、貴族とか武士って、そう言うのを好むって、女友達に聞いた事があったから」
ため息を吐くミルド。冬季はおかしな思考を持つ女友達に変な知識を入れたれていたようで苦笑いを浮かべる。
「変な意味でとらえないでくれるかい? もう1度、言うよ。君には迷惑かも知れないが、少なくとも君がクレメイアにいる限りは私は君の保護者だ。兄だと思って欲しい」
「いや、ミルド様みたいな胡散臭いお兄さんは冬季くんも要らないでしょう」
「ステラ!!」
ミルドは冬季の事を本当に気にかけているようだが、ステラは茶々を入れ、ギルド内にはミルドの怒声が響きわたった。




