第3話
「登録終了ね。説明っている?」
「それって、どう言う事ですか?」
「だって、ミルド様から聞いたけど、冬季くんはギルドについての知識があるんでしょ」
ステラは特に何かする事無く、冬季をギルドのメンバーに登録したと告げると、ギルドの説明が面倒なようで、くすりと笑う。
冬季はその表情に目を奪われ頷きそうになるが、彼女の言葉の意味が理解できなかったようで聞き返すと彼女はイタズラな笑みを浮かべた。
「知識があるって言っても、ゲームやネット小説の妄想だし、説明をお願いします。実際、何も役に立ちそうにないから、特にネット小説の知識は」
「ネット小説?」
「冬季の世界での娯楽の1つらしいよ。私にはさっぱりだけどね」
冬季はクレメイアで生きるためには情報が重要である事は理解しており、ステラに頭を下げた。
ステラは冬季の口から出た聞きなれない言葉に首を傾げるとミルドは先日、冬季から簡単な説明があったためか苦笑いを浮かべて彼女の疑問に答えた。
「そう。娯楽の1つね……いつか、楽しんでみたいわね」
「えーと、世界が違い過ぎるんで無理だと思いますよ」
娯楽と聞き、ステラは少し興味を持ったようだが、冬季はクレメイアにはインターネットがないため、無理だと首を横に振る。
「それは残念ね。それじゃあ、ギルドの説明をしようかな? 準備は良い?」
「お願いします」
ステラは小さくため息を吐いた後に冬季に、準備ができているかと聞き、冬季は大きく頷く。
「そうね。ここは元々は酒場だったのよ。精霊様が魔王に連れ去られて王都の外には魔物や魔族が溢れ始めた。王都の中に閉じこもっていれば良いって、王族や貴族は言うけど、そんな事をしていたら、民は死んでしまう。王都にある食料や生活必需品は王族や貴族が独占しちゃうんだからね」
「そうでしょうね」
ステラの言葉に冬季は頷く。
現在、ミルドの邸宅に居候させて貰ってはいるものの、彼の邸宅も貴族らしく物で溢れかえっているが、それ以上に王城の中では兵士や勤めている者達は物があると言う事を当たり前だと思っているように見える。
冬季自身も元の世界にいたままなら、彼らと同様に気に留める事もなかったのだろうが、クレメイアが電気やガス、水と言った酷く当たり前だったものすら、簡単に手に入らない世界だと気が付いた冬季には当たり前のものがなくなるかも知れないと言う平民の不安が手に取るようにわかる。
「だから、人々は危険でも王都から出て、必要なものを求める。汚い話だけど、そこにはお金が発生するからね。商人達は我先にって、外に出ようとしたんだけど、彼らだけじゃ何もできないわけよ。そして、外に出て、恐怖と向き合って、自分達は死にたくない。だけど、お金は欲しいって思ったわけよ。欲が深いわけよね」
「私はそんな事はないよ」
ギルドへと投資している者達は商人や先を見据えたミルドのような1部の貴族であり、ステラは彼へ非難のこもった視線を向けた。
ミルドは直ぐに否定するが、説得はあまりなく、冬季とステラは顔を合わせて苦笑いを浮かべる。
「酷いな。これでもかなりの財を投げ打っているんだけどね」
「それは知っていますけどね。それで、王都の外の村や町、他の王国とかに足を運ぶ商人や旅人の護衛をする人を集めて、集まった人間がここに登録しているわけね。そして、外の世界で持ち帰った情報を共有するの。ここで強い魔物が出て、命からがら逃げてきたってなるとそこは避けて動けば危険は減るから」
「1番の目的は安全確保って考えても良いんですよね?」
ミルドは苦笑いを浮かべると、ステラは冗談だと言いたいのかくすりと笑い、説明に戻るが、王都の外に出て死にたくはない冬季は真っ先に1つの事を確認する。




