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召喚勇者は現実主義者?  作者: まあ
第2章 ギルド登録?……テンプレなど都合よく存在しません。
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第2話

「お邪魔するよ」

「失礼します」


 ミルドは何度も来ているのか、ギルドのドアを開けて中に入って行き、冬季も少し遅れて後に続く。

 ギルドの中は昼間っから、酒の匂いが充満しており、未成年である冬季はその匂いに顔をしかめる。


……中も予想していたもの一緒だな。しかし、こっちでもこんな時間から酒を飲んでいる酔っ払いがいるのかよ。


 魔王に精霊様が誘拐されて、太陽が昇らなくなってしまったとは言え、まだ酒を飲む時間は早く、目に映る酔っ払いの姿に冬季は大きく肩を落とす。


「いらっしゃい。ミルド様……ひょっとして、その子が勇者様?」

「あぁ。ステラ、紹介するよ。結城冬季、クレメイアを魔王の手から救うために召喚された勇者様だよ」


 カウンターの中に座る女性がミルドを見つけて声をかけるが、彼が冬季を連れている事に気づく。

 ミルドは彼女の疑問に直ぐに答えようとしたようで、冬季の名前を呼ぶが、冬季はミルドの声を聞いていないようでキョロキョロとギルドの中を見回しており、ため息を吐くともう1度、冬季の名前を呼ぶ。


「あ、すいません。結城冬季です。冬季が名で、結城がこの世界だと家名になります。年は16です」

「ステラ=ワム。年は秘密、よろしくね。勇者様」


 ミルドに呼ばれている事に気づいた冬季は慌てて、自分の名前と年齢を言って頭を下げる。

 その姿が初々しく見えるのか、『ステラ=ワム』と名乗った女性は楽しそうに笑う。

 ステラの年齢は冬季の目から見て、20代半ばくらいに見えるが、彼女が年齢を隠したため、実際の年齢はわからない。


 ……勇者様ね。慣れないと言うか、何と言うか。それに、こっちの世界でも、女性は年齢を隠したがるのか?


 新しい出会いに冬季は愛想笑いを浮かべるが、未だに『勇者』と呼ばれるのがなれないようで、その表情には戸惑いが隠せない。


「勇者様って、呼ぶのは止めた方が良い? なんか、慣れてないみたいだし」

「できれば、止めて欲しいです。実際、そんな風に呼ばれても実感も何もないんで」


 ステラは冬季の様子にくすくすと笑うと、冬季は見透かされていた事や本日も戦闘訓練に付き合ってくれた兵士達にボコボコにされた事もあるため、気まずそうに視線を逸らした。

 ミルドは冬樹の様子に先ほど話を聞いていた事もあり、苦笑いを浮かべている。


「了解。それじゃあ、冬季くんはギルドに登録してくれるって事で良いのかな? それとも今日は見学?」

「一応は登録させて貰いますけど、見学はしたいですね……」

「何か気になる事があるのかい?」


 ステラは改めて、冬季にギルドのメンバーになる事を確認すると冬季は頷くが、彼の視線は未だにキョロキョロとギルド内部を見回しており、その様子にミルドは首を傾げる。


「こう言うところには水晶球とかあるんじゃないかな? って」

「水晶球? 占いでもするのかい?」

「そうじゃなくて、魔力量が見えたりとか、特殊な魔法を使える才能を教えてくれるとか、そして、この子は天才だとか大騒ぎになったり、ギルドのメンバーから嫉妬の視線を向けられたり、お決まりのイベントがあるとか?」

「冬季の世界のギルドにはそんな凄い物があるのかい?」

「と言うか、冬季は何を言いたいの?」


 冬季はネット小説で良く見るギルド登録時のお決まりの設定の物を探してしまったようであり、ミルドは冬季の口から出た水晶球に驚きの声を上げた。


「イヤないんですけど、お約束と言うか、テンプレと言うか、クレメイアは剣と魔法の世界だし……本当はあるけど、隠しているとか無いですか?」

「いや、もし、そんなものがあるとしたら、精霊様は冬季を召喚しないで、クレメイア内で才能のある人間を探すんじゃないかな?」

「で、ですよね」


 冬季は本当はミルドとステラが隠しているだけで水晶球があるのではないかと、改めて、ミルドに聞くが、ミルドの答えはもっともであり、冬季は少し気まずくなったのか視線を逸らして笑う。


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