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風見鶏の店長さん。  作者: 武蔵(タケクラ)
店長さんと、城と勇者と軍人と?
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店長さんと、少年少女。2


引き続き、翔太君視点です。


「そうか・・・ラケル君が勇者で石川さんが魔法使いで・・・他に同行者は?」

「槍使いの戦士と弓使いが一人ずつとー、治癒士が居たんですけど。移転に失敗してバラけちゃって」


怪訝な顔をしつつ話を逸らしたノゾムに、ぺらぺらこっちの情報を漏らす石川は馬鹿じゃないかと思う。

勉強出来たかどうかは覚えてないけど、思考回路的には紛れもないFクラス(馬鹿)だコイツ。


「そっか、それでラケル君と石川さんは運良く同じ場所に着地できた・・・ってとこか」

「そう、着地場所は最悪だったけど」


ノゾムが俺に訊いてきたから頷いて、ふと違和感に気がついた。

コイツ・・・“石川”って日本語発音してる?


「それは・・・ご愁傷様。この街だったら傭兵も元勇者も多いし、好戦的でもないから少しは扱いマシだったかもしれないけど、今言ってもしょうがないしな」


また苦笑を浮かべたノゾムは紅茶を一口啜ってから、それじゃあ。と表情を変えた。

安心させるような雰囲気から一転、少し真剣な表情でカップを置く。


「これから簡単な質問するけど、時間が無いから短く答えてくれないか」


疑問系じゃなく言い切ったノゾムの雰囲気に押されて俺と石川は同時に頷いた。


「よし、じゃあまずラケル君から、石川さんは後でね。・・・君の武器は?」

「剣」


ピンク頭の幼女に真っ二つに折られて没収されたけど。とは言わない。

短く答えろといったのはノゾムだし、訓練中の軍人達の中って最悪な状況に飛び込んだ俺達の事情は出来れば言いたくない。

フルボッコまでは行かなかったけど、ダサイ負け方したんだよ。


「次、さっき中級魔法使ったけど、使える魔法のランクは?」

「物質系だけだったら最上位、その他は中級が限度」


物質系って言うのは要するに土とか金属とかを操る魔法の系統だ。

物質系の最上位が使える人間は希少だそうで、俺がチートたる所以は此処にある。


実は今、ちょっと嘘ついた。

本当は最上位よりも上の物質系古代魔法も使える。

古代魔法とは言わずに精霊魔法と言う地域もあるみたいだけど。


魔法のランクってのは初級、下級、中級、上級、最上級、古代魔法の六つに分かれているものだ。

初級と古代魔法以外は、級じゃなく下位や上位なんて呼ばれ方もする。

その場の語呂だったり個人の感覚で使い分ける程度の差だけど。

閑話休題。


メモを取るでもなく、珍しがるでもなく、何か考えるように視線を彷徨わせたノゾムの視線が真っ直ぐ俺を射抜いた。


「家系的に物質系が得意なのか?」

「多分俺だけ」

「じゃあ、ラケル家は魔法使いの家系?」

「あー、母さんの家系が魔法使い」

「その家系で物質系が得意だった人は?」

「爺さんが多少は得意だったらしいけど知らね」

「勇者以前の職業は?」

「魔法学校の学生」


卓球の古今東西みたいな質問と回答の繰り返しにちょっと面倒に成ってきた。

速度がどんどん上がっていく質問に答えながら俺はソファーに沈み込んでいく。


「出身は」

「バーナードの王都」

「その街の特色は」

「城よりデカい図書館と遺跡」

「勇者になった理由」

「記念受験に受かった事故」

「家族構成」

「両親兄兄姉俺妹」

「君の年齢」

「じゅーなな」

「鳴くよウグイス」

「平安きょ・・・」


答えに被せるようにどうでも良さそうな質問をポンポンされて、反射的に答えたけどコレって“日本人”にしか出来ない質問じゃね!?


「う・・・って、何で!」

「あー・・・引っ掛かってくれなかったらどうしようかと思った」


安心したように息を吐いてソファに沈んだノゾムが、ヘラッと笑った。


「改めて自己紹介。久しい松に臨むで久松臨。24・・・あ、25歳日本人。君の名前は?」

「え、ああ・・・ショー・Q・ラケルは本名、前の名前は坂上翔太・・・じゃねぇよ!アンタ日本人!?」


目の前のローテーブルに手をついて乗り出せば、まだ口を着けていないミルクティーがカップの中で跳ねた。


「そう、今言った通り。石川さんは判り易かったけど、ラケル君は警戒してたし“故郷”と関係あるのかちょっと怪しかったから・・・汚い手段使って悪いな」


苦笑したノゾム・・・否、久松さんの謝罪を呆然としながら聞いていた俺は、石川に上着の背中を引かれてソファーに沈んだ。

あ、ちょっと訂正。

服を引っ張って座らされたと言うより・・・


「今の翔太を引っ掛ける為だけの質問だったんですか?!じゃあ、あたしは!?」

「特に無いんだ、ごめん」


背中を鷲掴まれて投げられたが正しい。

着地点にソファーがあって良かった。

困ったように笑うってのはこう言う顔の事を言うんだろうなー。

っと、久松さんの顔を見てぼんやり思う。

イケメンだろうが同郷ならそこそこ敬意を払うくらいの良識は俺にもある。

口には出してなかったけど下の名前呼び捨てにしてサーセンっした。

心の中でこっそり謝りながら俺は視線を久松さんに向けた。


「どうでも良い事聞くなら誕生日とかスリーサイズとか恋人いるかとかぁあああ!!」

「いや、男の子にスリーサイズって・・・後、十代も外見十代もちょっと・・・って言うか石川さん話がれてない?」


久松さんの言う通り、逸れるどころかズレてる。

ヒートアップした切っ掛けが解んねーよ・・・。

あ、もしかしてコイツ、俺と久松さんカップリングしようとしたのか!?


「って!ちょっと待った!そのツッコミから察するに臨さん同性オッケーな人!?好きになったら性別も構わない!的な?!」

「は?否、そう言う対象としては同性はご遠慮願いたいんだけど今の流れでどうし・・・ああ」


眼を輝かせる石川の言葉に、思わずソファーの上で体育座りするように身を守れば、一瞬唖然とした久松さんが、頭を抱えて項垂れた。

やけにwktkした表情を浮かべた石川は放置の方向で。


「・・・女だ」

「「ん?」」

「これでも、一応ランドセルは赤だったし・・・ああ、今は男女で二色じゃなかったか。中学はセーラー服だった」


文化祭で着た学ランの方が似合ってたけど・・・。

とか眉間に皺を刻む久松さんの言葉に部屋の空気が凍りついた。


「嘘だっ!!」

「性別秀吉ってことか・・・逆だけど」


初めて見た。

ヒグラシ的な叫び声を上げてテーブルを叩いた石川の横で、ぼんやり呟いた俺が馬鹿だった。

まさかのカミングアウト(本人からすればそうじゃ無いんだろうけど)に呆然とした所為で、ついうっかり口から出た感想に、石川の矛先がこっちに向く。


「ちょっ!おまっ!馬鹿テス知ってんの!?てか実はオタク?!仲間!?腐男子だったり!!」

「しない!落ち着け!!佐原に小説借りて知ってただけだ!」


えー、ホントに?と疑問の視線を向ける石川を黙らせたのはノックの音だった。

久松さんがどうしてこの世界に居るのかとか知りたかったんだけど、石川の所為でタイムアウトだ。

って言うか、女の人だと思ってみれば久松さんは本当に女の人だった。

首は細いし、男っぽい顔立ちだけど頬のラインとか・・・って言うか、化粧ちゃんとして女物着てたら久松さん美人くね?

男前美人っぽい。


「失礼します、ノゾムさん。

ギルドマスターをお連れしましたがっ!お通ししても宜しいですか?」


“がっ”の所でガッっと背後に裏拳を決めた角のある赤い髪の女騎士が、にこやかな笑みを浮かべて久松さんに尋ねる。


「ああ、丁度確認が取れた所だ。クレア、悪いんだけどコリーかヴァンに報告頼む。

“二人共確定”で、どうしてこっちに居るかは聴きそびれたって」

「はぁい、了解しました」


ガントレットで攻撃力増し増しな裏拳を顔面に食らって、顔を抑えて痛みに耐えるオッサンをいっそ見事な位無視して久松さんとクレアさんと言うらしい女騎士は言葉を交わす。


多分、恐らく、信じたくないけどもー・・・。

廊下にしゃがみ込んで顔面を両手で覆うこのオッサンが、ギルドマスターなんだと思う。


「ショー、梓。それもう冷めてるだろう、お替りは?」

「あ、あの・・・それより臨さん、あのオッサ・・・じゃなかった。あの人?良いんですか?」

「ああ、あのオッサンは自業自得だから放って置いて問題ない」


アニメとリアルは違う訳で、流石の石川もちょっと引いたらしい。

口角を引き攣らせて未だに呻いているオッサンに指を向けた石川の言葉に、それが当たり前かの様に久松さんが答えてティーカップを三つ手に取りポットに向かう。


「つーか自業自得って何が?」

「だよな・・・今、何もしてなかったよな、あのオッサン」


声を潜めた石川に水を向けられて頷くと、俺達の視線の先で呻いていたオッサンが漸く立ち上がった。



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