店長さんと、少年少女。
推定日本人な少年の視点です。
やたら噛みそうになる親父の名前をミドルネームに付けられた俺、“ショー・クウァッシュ・ラケル”は、前世の記憶を持つ人間だ。
前世の“坂上翔太”と言う男の記憶は17歳までしかないけれど、覚えている限りではそこそこ真面目に剣道をしていたフツメンで・・・
ぶっちゃけ隠れオタだった。
最初はゲームと漫画とアニメが好きなだけだった俺は、何時の頃からか二次創作やらギャルゲーに手を出した。
と、言うのもだ。
小学校の頃からのまあ、親友と言って良い佐原と草間が俺と同類だったからだ。
見た目も言動も普通の男だった奴らは酷い隠れオタに成長し、俺も自然とそうなった。
深夜アニメやラノベ、漫画なんかも普通に語っちゃう奴らと俺は、そこそこの良識を持っていた為か中学でも高校でもオタ認定はされなかった。
少なくとも誰の耳に届くか解らない学校でギャルゲーや美少女アニメの話はしなかったから、隠れオタになったんだと思う。
それに、俺はガキの頃から剣道やってたし、佐原は俺と同じ道場で剣道やってて別の道場で空手も習ってたし。
草間は地元のバスケサークルだったかに入ってて運動は出来た。
それに服装やら髪型にも少しは興味があったから学校でオタ認定されなかったんだろう。
そんな俺がある日突然、気がついたらファンタジーな世界で幼児になっていたのだから驚きだ。
やけに肌触りの良い熊の・・・え、あれって熊?何か角っぽい形状の物が頭に三本ついてたけど・・・熊?
まあいいや、熊っぽいヌイグルミにジュースを飲ませようとしてた時に、俺は自分が坂上翔太である事をふと思い出した。
あれ?これって最近ネット小説で流行の転生じゃね?
と、まあそんな感じで自覚したのは現在の俺である、ショー・Q・ラケル、4歳の時の出来事だ。
事故やら病気やら変なことが起きた記憶は特に無かった。
そんな俺の家族は王道な感じで両親、兄二人、姉一人、妹は揃って美形。
なのに、俺だけ純日本人顔な前世まんまな顔だったりするけど、ボクハゲンキデス・・・。
恨むぜラケル家の爺さんっ!!・・・なんっで、坂上の親父そっくりだったんだよアンタ!
って言うか外国人っぽい見た目の国でどうして爺さん黄色人種!?っつーか、顔日本人!!
隔世遺伝した俺は肩身の狭い思いを・・・そんなにしなかったけど、気に病んだっての!
顔の事は良いとして・・・いや、文句はあるけどな!?
とにかく!そんなこんなでマギソーって言うダッサイ名前の世界で、中途半端な時期から第二の人生を歩み始めて6年後、
ラケル家三男ショー君は10歳でチートな魔力に目覚め、魔法学校に通ったりしつつ、15歳で友達と一緒に記念受験した勇者学校にうっかり合格して王道的に事件に巻き込まれて勇者として魔族が支配する大陸にやってきて―・・・
って言う前回のあらすじ的な説明はここまでにするとして、
なんやかんやあって捕まって今に到る!以上!
「少年、回復魔法は?」
俺、説明乙・・・とかこっそり思って居たところに、煌びやかな謁見の間には不釣合いなほどカジュアルな服装で登場した若い男が声を掛けて来た。
さっきまで首と手首に付けられていた石製の手錠と首輪には、なんだか体力とか魔力とかそう言う能力を減退させる効果があったらしくて、首輪と手錠をしていた時は、吐かない様に必死だったし目の前がチカチカしてたからそんな認識しかできなかったけど・・・。
「・・・使えます、けど」
コイツ・・・日本人顔だけど、ぶっちゃけイケメンだ。
喧嘩売ってんのか、イケメン爆発しろよチクショウっ!
「なら彼女に掛けてやってくれ」
俺の答えを聞く前に、そう言って背を向けた男が部屋に備え付けのティーセットに向かった。
身長170位の細見の男は、体型を隠すようなだぶ付いた白い綿シャツと黒いベストに黒っぽい厚手のパンツを着ていて、靴は茶色のショートブーツを履いている。
ラケル家のある西大陸の国でも良く見かけた、ありきたりな男女兼用の一般的な格好だ。
女の人も着てたりしたが傭兵だったり体力勝負な仕事をしてる人が着ていたから男の服装として一般的と言った方が良いかもしれない。
質素な格好の中で目立つのは腰に巻いた太いベルトとそこからぶら下がる三つのポーチだ。
イケメンが背中を向けてから目に付いたが、ケツの上にぶら下がるポーチが一番大きくて、横長の長方形。
左右の小さなポーチは大きい物の半分位の幅の縦に長いものだが、縦の長さは揃えてあるらしい。
鳥と十字の模様が丸い縁に囲まれた焼印がどのポーチの蓋にも押されている物だった。
ちょっと昔であれば優男なんて言われていただろう男は、焦げ茶の髪と同じ色の少しつり目気味の肌の黄色い中性顔だ。
中世的だけど男らしい顔の、まあイケメンだ。
フツ面の俺からしたら敵でしかない。
しかも、魔王 (・・・此処まで連れてきた騎士の方がそれっぽかったけど)が直々に呼んだ傭兵ギルドの職員って事はギルド最強とか、そう言う主人公要素かライバル要素がある男なのかもしれない。
・・・今までライバルっぽいの居なかったし。
イケメンライバルとか王道だ。
そんな事を考えながら、俺に寄りかかる女に回復魔法をかける。
この女の名前は石川梓。
俺が翔太だった頃のクラスメイトだ。
因みに、幼馴染でも、彼女でも、特に仲の良かった女友達でも無い。
マギソーに来て10年経っても石川を覚えていたのは、ただ単に中学も高校も一緒だったし、コイツのキャラが異様に濃いからだ。
物凄い美人だったとか、可愛かったとか、学校のアイドルだったとかそんな事ぁねぇからお前ら落ち着け。
コイツはな、見た目そこそこ可愛いのにオープンオタクで腐女子っつー果てしなく残念な女だ。
ある日突然、ショートボブを黄色っぽい茶髪に染めて「リン意識してみた!」とか叫んで生徒指導に見つかって学校中追いかけられたり、
「やっべぇ滾るー!」とかキャアキャア言ってるなーと思ったら、視線がクラスの男子に向いてるような人種だ。
因みにその男子は佐原と草間だった、ザマァ。
しかしまぁ、良く苛められなかったなコイツ。と、今でも思う。
そんな石川は、異世界召喚“された”チートだ。
古代の遺跡に残っていた魔方陣から呼び出された異世界人。
翔太の頃と顔が全く代わってない俺を“翔太”と呼ぶただ一人。
俺のクラス、担任が坂上だったし、酒守でサカガミってクラスメイトが居たからクラス中が翔太呼びだったんだよな・・・。
いやぁ懐かしい。
っと、目の前にイケメンがミルクティーのカップを置いたから俺と石川のチート能力については後で。
「さて、自己紹介しようか」
テーブルを挟んで二人の対面に座ったイケメンが小さく笑って、そう切り出した。
確かに、イケメンイケメン言ってると俺の精神衛生上宜しくない気がする。
気力も体力も復活した石川が隣で「イケメンktkr!!」とか小さく呟いてるけど無視だ無視。
石川のテンションの高さにイケメンが目を丸くしてまた苦笑したけどまあ、それもスルーしとく。
俺のスルースキルが唸るぜ!なんつって。
「さっき謁見の間で聞いたかもしれないが、私は臨・久松。
故郷では姓が先に来て久松臨と言うんだ・・・職業はギルドの職員」
やっぱりギルド最強系かもしれない。
もしくは一般人の振りしてギルマスとか。
あ、でもギルマスは後で来るとか魔王顔の騎士が言ってたから最強の方か?
「ノゾムさんですね!記憶しました!あたしは梓です!石か・・・じゃなくて、梓・石川!一応魔法使いやってます!で、こっちの冴えないのが翔太」
「冴えない言うな!俺はショー・クウァッシュ・ラケル。勇者」
石川の勢いに慣れたのか苦笑したノゾムは、俺の名前を聞いた後僅かに考え込む仕草を見せた。
呼び捨ては気にすんな、敵に敬称つけて呼ぶほど俺は大人じゃねぇんだ。
名前までイケメンっすなぁhshsとか呟いてニヤける石川は全力でスルーだ。
「石川さんとラケル君ね・・・ショウタって言うのはあだ名?」
「ああ!あだ名って言うかっ!?」
「コイツ人に変なあだ名付けるの好きなんで!」
家族にすら過去の記憶がある事を隠してるのに、ぺろっと魔族に話そうとした石川の足を踏んで早口に捲くし立てる。
怪しまれたかも知れないけど、やっちまったもんはしゃーなしだ。




