店長さんの、城での昼休憩2
「そう言えば、ノゾムはギルドに所属しているのよね? ああ、ギルドの人だというのは教官から聞いたの。でもギルドに所属してるとしたら兄さん達と一体どこで知り合ったの?
それに、ギルドに所属してるのに一般人だって説明された理由も知りたいわ。
ギルドの職員にしろ傭兵にしろ一般人とは呼ばないじゃない?」
つらつらと疑問を並べ立てながら首を傾げるジュリアに、漸く喋る事を許された臨は苦笑を浮かべてフォークを置いた。
「風見鶏の食堂、そこで料理人をしてる。だから、一応ギルド職員だが一般人なんだ。
ヴァン達と知り合った経緯は・・・あー、少し特殊な体質なんだ。それでヴァン経由で色々あって友達になったってところだ」
「料理人・・・本当に一般人なのね。教官に聞いても詳しくは本人に聞いてみるといいとしか教えてくれなかったから謎だったのよ」
少し身を引いて臨を観察したジュリアは納得したのか、小さく頷いて食事に戻った。
「教官って、コリー?」
「そうよ、兄さん達って言ったじゃない。・・・あ! ミラ、アーサー! こっち!」
突然、ぱっと手をあげてジュリアが合図した方に視線を向けると、トレーを持つ金髪碧眼の勇者と少女がそんなジュリアに気付いて苦笑していた。
ちょっとそちら一人分詰めてくれない? と、物怖じせずに、臨の横に座っていた兵士に声を掛けジュリアは自分の隣と臨の隣二人分の席を確保した。
臨の気の所為でなければ、声を掛けられた兵士の耳が少し赤く染まった気がするが・・・。何と言うか、美人は何処行っても得なんだろうな。
「もう一人居なかったっけ?」
「ソフィーね、彼女なら兵士さんと意気投合してあっち」
あっち、と示された先を見ると数人の兵士の一団に冒険者が二、三人混ざって雑談に花を咲かせていた。
兵士とは主に騎士団の下級隊に配属されている者達を差す。
公に騎士と示されるクレア達とは身に纏う鎧の種類が違うのだが、まあそこは追々説明できたらしよう。
「ノゾム、紹介するわ。私達の勇者、アーサー・バケットとそのイトコで私達の仲間のミラ・バケット」
臨の横に座ったアーサーと、ジュリアの隣に座った神官二人をジュリアは簡単に紹介した。
一瞬、シスター・ミラの背後にもふもふした白いアルパカの幻影が見えた気がした。
アルパカブームを巻き起こしたCMで使われていたキャッチコピーと、彼女の名前が類似していたからだろうが・・・
「あ、ああ。ノゾムと言うのか、私はアーサー。先日は済まなかった」
「否、こちらこそ悪かった。腹は平気か? 臨・久松だ、傭兵ギルド『風見鶏』の食堂を任されている」
握手を求められたので、少しだけ身体の向きを変えて握手をする。
しかしまあ、改めて見てもアーサーはイケメンだった。
童話の世界の王子様みたいでしょ! と日本での友人が臨に突きつけた雑誌の中のハリウッド俳優の様な整った顔立ちに人の良さが滲み出ている。
見るからに気に強そうな迫力美人のジュリアと並んで立つだけで、絵になる様なイケメン具合だ。
アーサーと軽く挨拶を終えて座り直すと、ジュリアの横でミラが、あの。と小さな声をあげた。
そのミラのおどおどと自信なさげな言動と小柄で純朴そうな容姿は、女の臨であっても庇護欲をそそられた。
思わず、ゆっくりで良いと落ち着かせてしまうほどには。
「あの・・・赤鬼の男性は、その後お元気ですか?」
「ユジか、元気過ぎるくらいだな。昨日は相方の爺様と森に悪獣討伐に行ってたし」
あれはちょっと寝込むぐらいが丁度いいよ。
そう臨が笑うと、ミラはふにゃりと微笑みを浮かべた。
何と言う小動物・・・と口から出かけた言葉を飲み込んで臨も笑っておいた。
「ミラが回復魔法をかけたなら平気でしょう? 全く、心配性なんだから」
ジュリアが人目を集める豪華な花束の主役になる花だとすれば、ミラは花束に包まれる事のない野草の類の小さな花だ。
そんな素朴な可愛らしさを持つミラに向け、ジュリアはやれやれとわざとらしく肩をすくめ、アーサーとミラは困ったような顔をした。
「あれ? ノゾムさんじゃないですかぁ!」
珍しい! と声があがって、臨とアーサーが振り返ると、同僚か部下だろう女騎士に先に行ってて。と声をかけるクレアの姿があった。
何時もの鎧は何処かに置いてきたのか、騎士の制服に身を包んでいるが胸元に光るバッヂが近衛隊の小隊長であることを語っていた。
「今日はお休みでしたか」
風見鶏まで行かなくて良かったー。と笑うクレアに、臨は苦笑した。
臨が居ないと傭兵達の集まる確立が下がるのだ。
と、言う事はジムが現れる確立が下がるという事で・・・と、そこまでクレアの言葉を深読みしての苦笑だ。
「まあ、検査と報告で1日潰れる休みだけどな」
「報告って、陛下達とお茶するだけじゃないですか」
立派なお休みですよ、と言うクレアに視線を向けて居た臨はねえ。と背後から声をかけられて少しばかり振り返った。
「ノゾム・・・貴方一体何者?」
眉根を潜めたジュリアに問われて臨は首を傾げる。
一般人だとついさっき言ったばかりだが、何でまた。と、思った所で臨は気が付いた。
宰相や魔研の所長と友人で、親しげに声を掛けてきたのは近衛騎士。
ついでにこの後、皇帝陛下とお茶って、そりゃ一般人の概念から外れて居る。
「嫌ですねぇ、ノゾムさんはノゾムさんですよぅ」
ケラケラ笑うクレアの横槍に、ジュリアと臨は揃って微妙な顔をした。




