第五十話〜珈琲〜
チュンチュン。小鳥の囀りが聞こえてくる。静かな朝の始まりを告げている。
「もう、朝か。さてと、今日は何するかな?」
重い体を起こしたアスカは、軽く伸びをした。ポキポキッ、ポキッ。背骨を鳴らしたアスカは、欠伸をしながら朝食を食べに1階の居間へと向かった。
朝食をとりおえたアスカが着替えをしていると母が呼ぶ声が聞こえた。
「アスカーーー!!お客さんよ!!」
「こんな時間に客人?誰だろう?ハロルドかな?」
すばやく着替えを済ませ、玄関へ向かった。
「どちらさま?」
そう言いながらアスカは目の前のドアを開いた。
「やぁ、アスカ君」
「なんだやっぱりハロルドか」
そこには、ハロルドがいた。
「どうした?なんか用か?」
「いや、なんか具合悪いみたいだから元気かな〜?って思ってさ」
どうやらアスカを心配していてくれたようだ。ハロルドは、意外と気が配られる出来る子だ。
アスカは、ハロルドを連れて町を歩いて周った。
一方で。
「ルークさん。アスカの事なんですけど・・・」
「なんですか?」
「この間の一件で彼の魔力の色も検査してみたんですが、それが・・・」
「?」
ルークは、コーヒーをすすりながら尋ねた。
「一体何が分かったんですか?」
恐る恐るクレアの父は、口を開いてこう言った。
「魔力の色が黒なんです。真っ黒になっていたんです。かつては暖かい紅色のきれいな色をしていたんですが・・・」
「!!」
さすがのルークも驚きを隠せない。これは異常なことだとルークも分かっているからだ。
元来、生まれ持った魔力の色が歳月を重ねるに連れて変色するなど有り得ないからだ。
「そんな事が起こるなんて有り得ない。いや、この時点で認めざるを得ないのですが」
「はい、しかもこの色は・・・」
追い討ちをかけるかのようにクレアの父は言った。
「アスカの型は書物に記されていた魔王アシュドの型と酷似しています」
「はぁ・・・。何がどうなればこんな事態が。頭が痛いです、さすがに」
「これから何が起こるかわかりません。大変申し訳ありませんがアスカからなるべく目を離さぬようにお願いしても・・・」
「はい、わかっています。それが最善の策でしょう」
・・・一体どうなっているんだ・・・
ルークは、そう思いながらコーヒーを飲みなおした。